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伊豆大島火山自然電位モニタリング
概要
はじめに
伊豆大島では1986年の噴火以降30年以上経過し、次の噴火へ向けての対応を強化するべき段階にあるといえます。産業技術総合研究所では、火山ガス等の火山性流体の移動を連続的に観測することによって噴火予知技術の高度化を目指す研究に取り組んでおり、その一環として、伊豆大島を対象とした火山活動のシミュレーションを実施し、マグマの上昇とそれに伴う火山性流体の挙動を予測する研究を進めています。本観測は、流体の流動に伴う電気的信号(自然電位)の変化を観測するもので、火山性流体の流動様式を把握するための基本データとなると考えられます。本観測を実施することにより、シミュレーションの精度向上につながり、噴火予知技術の向上に貢献することを期待しています。
自然電位とは
自然電位(SP: Self-potentialともいう)とは岩石の空隙中を流体が流動する際に流体中に電流が流れることによって地表に形成される電場のことです。観測方法は極めて簡単で、地表に設置した電極間をケーブルでつないで電位差を測定することによって得られます。地下の岩石の空隙を地下水や温泉水などが流れるときに、その流れと一緒に電流も流れます。電流の強さは、流れる液体や周りの岩石の状態によって変化し、その強さが異なる境界には電流の過不足を補うように電荷が溜まり、それをソースとして発生した電場を地表で観測したものが自然電位です(図1)。
図1 自然電位発生の仕組み
水蒸気などの気相の流れでは電流が流れません。活動的な火山では、地下から上昇してきた火山ガスが冷却して凝縮した場合には比較的強い電場のソースが発生すると考えられます。その他に、高温の火山ガスやマグマを熱源とした地下水の熱水対流や、地表からしみ込んだ雨水の浸透による地下水の流れなどが自然電位のソースになると考えられています(図2)。これまで、地熱や火山に関連した構造調査,資源探査等の分野で世界的に数多く使われてきました。
図2 火山体内の流体の流動
産業技術総合研究所では、1989年から2000年まで計7回、伊豆大島の山頂カルデラを東西に横切る約8 kmの測線で自然電位分布を測定し、1986年噴火以降の経年的な変化を捉えてきました。それによると、噴火に伴う熱活動によってカルデラ内では自然電位の正異常が観測されていましたが、火山活動の衰退に伴い、その正異常が減少するような経年変化が観測されています(Ishido et al.,1997)。今後、火山活動の変化に伴ってマグマや火山ガスを原因とした熱水活動が再び活発化すれば、自然電位の異常が十分に現れ得ると考えられます。その異常が顕著に発現すると期待される場所に測線を設け自然電位の連続観測を2006年から開始しました。
参考文献
Ishido T, Kikuchi T, Matsushima N, Yano Y, Nakao A, Sugihara M,Tosha T, Takakura S, Ogawa Y (1997) Repeated self-potentialprofiling of Izu-Oshima volcano, Japan. J Geomagn Geoelectr 49:1267–1278.
Onizawa S, Matsushima N, Ishido T, Hase H, Takakura S, Nishi Y (2009) Self-potential distribution on active volcano controlled by three-dimensional resistivity structure in Izu-Oshima, Japan. Geophys J Int 178(2):1164–1181.
Matsushima N, Nishi Y, Onizawa S, Takakura S, Hase H, Ishido T (2017) Self-potential characteristics of the dormant period of Izu-Oshima volcano. Bull Volcanol 79:86.
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