口永良部島火山2014年8月
口永良部島火山の噴火に関する情報[2014年8月]
活断層・火山研究部門
更新:2015年6月1日(開設:2014年8月5日)
概要
鹿児島県屋久島町口永良部島の新岳で2014年8月3日に噴火がありました。気象庁等の情報によると、3日12時24分ごろ、新岳山頂火口から噴火し、島の北部を中心に降灰があったことが確認されました。
口永良部島火山では明治以降繰り返し噴火が発生しています。最も新しい噴火は1980年9月28日に新岳山頂の東側から発生した噴火です。
口永良部島火山の活動履歴
口永良部島火山は、鹿児島県の薩南諸島に属する口永良部島を構成する活火山です。口永良部島は北西部の番屋ヶ峰と中央部の新岳・古岳を中心とする山体からなり、北西-南東方向に伸びたひょうたん形の形状をしています。島の長さは約13kmで、最大幅5.8km、面積は約38平方kmです。
島の中央部にある新岳は、標高625mで、山頂に直径約250mの火口があります。新岳では、少なくとも19世紀半ば以降噴火の頻発する活動期とその間の静穏期が数10年間隔で繰り返されています。とくに、1930年代には爆発的噴火が繰り返し発生しました。1933年には、高温の火山岩塊の落下により東麓部の集落で死者8名、負傷者26名、全焼15棟の被害が発生しました。また、直後の降雨により発生した二次的な火山泥流により、西麓にあった向江浜集落が壊滅的な被害を受けました。戦後では1966年(昭和41年)に強い爆発が発生して、火山岩塊・火山礫が広い範囲に降下し負傷者3名が発生しました。その後、1970年代には数回の小規模な爆発噴火がありました。 1980年(昭和55年)に新岳山頂東側の割れ目火口から発生した小規模な水蒸気噴火以降、比較的静穏な状態で推移していましたが、2008年9月ごろから噴気活動が活発化していました。また、地震活動や地殻変動では、しばしば活動の高まりが認められていました。
図1 口永良部島火山の地質図。今回噴火が発生した新岳火口の位置を矢印で示しています。
※口永良部島火山地質図(2007)を使用して作成した地質陰影図。
今回の噴火(2014年8月3日)
2014年8月3日の噴火は、新岳の山頂火口付近から発生しました。気象庁の火山活動解説資料((平成26年8月3日16時30分発表))によると、噴火に伴う微動は6分30秒継続し、噴煙は少なくとも火口上800 m以上にまで上昇しました。この噴火により、島の北側を中心に降灰がありました。
過去の噴火の推移
過去の噴火記録から推測される口永良部島の噴火推移は、おもに以下の二つの推移をたどることが多いと考えられます。
1.比較的短期間で終息する水蒸気噴火(例:1945年11月3日噴火、1980年9月28日噴火)
火口浅部の熱水系の不安定により発生すると考えられます。1回ないし数回の小さな爆発的噴火が比較的短い時間に発生し、終息します。変質岩片からなる噴出物が噴出します。噴出量は比較的少なく数万トン~10万トン程度(注1)です。山頂付近に残る地層から、このような小規模な水蒸気噴火は有史以前にも繰返し発生していたことが推測されます。
2. 数年程度継続するブルカノ式噴火(注2)(例:1931-34年噴火、1966-1976年噴火)
火口底近くまでマグマが上昇して発生します。1931-34年噴火では、約3年間に少なくとも6回の爆発的噴火が発生、1966-76年噴火では約10年間に断続的に10回以上の爆発的噴火が発生しました。 投出岩塊が火口から数kmまで飛散し、火山礫~火山灰が島内および屋久島・種子島まで到達しました。1966年11月噴火では新岳火口から約4km離れた湯向集落でもこぶし大の岩塊が落下した記録が残っています。また、赤熱した投出岩塊も目撃されています。噴火に伴い小規模な火砕流が発生し、新岳の中腹付近まで流下したことが記録されています。噴出量ははっきりしませんが数10万トンから数100万トン程度(注1)と考えられます。新岳および古岳では過去少なくとも1万年間、このような噴火が断続的に発生していたことが地層から推測されます。
このほか、古岳および新岳山頂からの火砕流噴火や溶岩流の流下も、頻度は低いですが過去に発生したことが地層から読み取れます。大規模な火砕噴火は、過去1万年間ではほとんど発生していません。
(注1)桜島の2012年、2013年の年間総噴出量が約650万トン、比較的大規模な爆発の噴出量が10万トン程度と見積もられています。
(注2)固結しつつあるマグマで閉塞されていた火道が、蓄積した火山ガスの圧力によって爆発し、短時間で火山弾や多量の火山灰を噴出する噴火。桜島昭和火口の活動などが典型的。
図2 過去の噴火記録から推測される口永良部島火山の噴火推移ツリー図
(口永良部島火山地質データベースより)
火山噴火予知連絡会資料
- 口永良部島火山噴火に関し、産総研地調から火山噴火予知連絡会に提出した資料を公開しました。
- 口永良部島火山2014年8月3日噴火の火砕流(火砕サージ)の領域 (PDF, 762 KB)
- 口永良部島火山の最近の噴火に関する地質情報 (PDF, 1.1 MB)
- 口永良部島火山2014年8月3日噴出物の構成粒子-追加資料:X線回折分析結果 (PDF, 156 KB)
- 口永良部島2014年8月3日噴火の斜め空中写真観察 (PDF, 1.7 MB)
- Landsat 8 画像解析 (PDF, 1.2 MB)
- 口永良部島火山2014年8月3日噴出物の構成粒子 (PDF, 1.4MB)
- 口永良部島火山の8月3日噴火と山頂部の地盤変動について(PDF, 421 KB)
- 口永良部島火山の新岳火口近傍における噴気・地中温度について(PDF, 525 KB) [2014年12月22日掲載]
- 2014年12月10日の口永良部島ガス観測結果 (12月19日) (PDF, 122 KB) [2014年8月5日掲載]
- 口永良部島火山2014年8月3日噴出物の構成粒子(1.4 MB)
- 口永良部島火山の8月3日噴火と山頂部の地盤変動について(421 KB)
- 口永良部島火山の新岳火口近傍における噴気・地中温度について(525 KB)
[2015年6月1日掲載]
関連情報
産総研・地質調査総合センターでは、現地調査に基づき2007年に出版した「口永良部島火山地質図」で、口永良部島火山の地質及び活動履歴を紹介しています(図1)。また、2009年にはより詳細な情報を「口永良部島火山地質データベース」として発表しています。
また、2004年に設置したGPS観測装置による、口永良部島火山山頂付近の地盤変動解析を公開しています。
- 火山地質図「口永良部島火山地質図」(日本の火山データベース内)
https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/kuchinoerabu/index.html - 「V-03 口永良部島火山地質データベース(2009)」(抜粋)(2.3 MB)
- 口永良部島火山山頂部の地盤変動観測情報
https://www.gsj.jp/hazards/volcano/gpsweb/gdmgrp.html - 火山地質図「口永良部島火山地質図」(地質図Navi)
https://www.gsj.jp/Map/JP/volcano.html - 火山地質図 No.14「口永良部島火山地質図」(地質図カタログ)
https://www.gsj.jp/Map/JP/volcano.html
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