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伊豆大島火山自然電位モニタリング

付録1

比抵抗3次元インバージョンの詳細

 AMT法電磁探査は2006年~2009年にかけて24測点で行っています(高倉他, 2001)。さらに2021年に8測点を追加しました。 いずれもリモートリファレンス処理とエディットを行っています。合計32測点のデータについて各測点ごとに16周波数(10400-0.35 Hz)を選び出し、インピーダンス4成分とティッパー2成分を合わせたMT応答関数の6成分(複素数なので実部と虚部に分けると12成分)を入力データとして、3次元比抵抗インバージョン解析(Siripunvaraporn and Egbert, 2009)を行いました。最終的な入力データのサイズは、32×16×12(測点の数×周波数の数×応答関数の数)となります。
 解析領域は南北および東西方向ともに400 km、鉛直方向200.5 km(海水面より上の陸地1500 mを含む)としました。そして南北および東西方向が70個,鉛直方向が68個となるようにグリッドを分割しています。中心座標を北緯34度44分10秒度,東経139度24分0秒として中心から離れるにしたがって大きくなるように設定し、最小グリッドの水平サイズは200 m×200 mで、最大グリッドの水平サイズは中心から最も遠方で100 km×100 kmです。また,鉛直方向のグリッドサイズは,海水準下1kmまでは100 mとし、そこからは深度が増すにつれて大きくなるようし最大で100 kmです。それぞれのグリッドに対して、空気と陸地、海水と陸地の境界の位置(すなわちグリッドで表現される地表面)を設定しました(図a1)。地表面を計算するにあたって、日本国内の陸地のグリッドについては、国土地理院の基盤地図情報数値標高モデルを使用しています。また海の下に位置するグリッドについてはThe General Bathymetric Chart of the Oceans (https://www.gebc.net/)の30秒角のデータを使用しました。

図a1 左図:解析表示範囲(6 km×6 km)のグリッド分割。2006~2009年の測点を赤印、2021年の測点を青印で示す。 右図:分割されたグリッドで近似された地表面

図a1 左図:解析表示範囲(6 km×6 km)のグリッド分割
2006~2009年の測点を赤印、2021年の測点を青印で示す。 右図:分割されたグリッドで近似された地表面

 インバージョンでは海水、空気をそれぞれ0.25 Ω•m、108 Ω•mで一定とし、陸地のブロックについて初期値を100 Ω•mとしてイタレーションを行い、最もRMS値の小さな比抵抗構造モデルを求めています。その際、インピーダンスとティッパーのエラーフロアをそれぞれ5、10 %としました。本ページで示す比抵抗構造モデルはRMS値が3.1の場合です。観測値と最適モデルのフィッティングとして、比抵抗構造モデルのレスポンスから計算した見かけ比抵抗と位相を、2021年の観測値の探査曲線に赤丸で加えたました(図a2)。インピーダンスの対角成分(ZxxとZyy)から得られる見かけ比抵抗と位相およびティッパー(TxとTy)についてはフィッティングにばらつきがあるものの、インピーダンスの非対角成分(ZxyとZyx)から得られる見かけ比抵抗と位相については、比較的良い一致を示していることが確認できます。

図a2 観測点202における探査曲線。上段が見掛比抵抗、下段が位相で、黒丸が観測値、赤丸が計算値を示す。

図a2 観測点202における探査曲線
上段が見掛比抵抗、下段が位相で、黒丸が観測値、赤丸が計算値を示す。

参考文献

Siripunvaraporn W, Egbert G (2009) WSINV3DMT: Vertical Magnetic Field Transfer Function Inversion and Parallel Implementation, Phys. Earth Planet. Inter. 173:317–329.
高倉伸一・松島喜雄・西祐司・鬼澤真也・長谷英彰 (1995)AMT 法から推定された伊豆大島火山の比抵抗構造の特徴. CA研究会.