口永良部島火山山頂部の地盤変動観測情報
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概要
屋久島の西北西13kmにある口永良部島の新岳は、有史以来、爆発的な噴火を繰り返してきました。噴火の多くは水蒸気爆発と呼ばれるタイプで、休止期を経て突然に始まる(ように見える)ため、発生予測が難しいとされています。1990年代半ば以降、群発地震が度々発生するようになり、山体が膨張していることも京都大学防災研究所付属火山活動研究センター(以下SVO)の観測により明らかにされました。前回の噴火は1980年で、既に30年を過ぎていることから、次の噴火が迫っているのではないかと考えられています。このような経緯を踏まえて、地質調査総合センター(以下GSJ)では、2004年からSVOと共同でGPSの連続観測を実施することにしました。観測点は、当初の4カ所から2012年末時点で8カ所になっています。このうち、新岳山頂火口の北西約200mの距離で火口に最も近いSDW点と、同火口の南約500mのFDK点の2点のデータは、携帯電話回線を利用して自動収集しています。そのため、点間の相対的な位置関係が変化しているかどうかが比較的迅速にわかるので、結果を速やかに公開することとしました。火山山頂部で起きている地盤変動現象を観察することで火山への理解を深め、また知識を広めることに役立つことを期待します。なお、当サイト閲覧に当たっては、観測精度をご理解いただくことと共に、迅速な保守が難しい離島火山山頂部故の予期せぬデータ更新停止等の可能性について、あらかじめご了解ください。
観測方法とグラフの見方
観測に用いているGPSは,カーナビゲーションシステムや携帯電話でお馴染みですが、その位置精度は数mです。1cmのオーダーの変動測定の目的のためには、電波の位相を記録するタイプの受信機を使います。これを複数設置し、同時に観測したデータを持ち寄って位相差を衛星数ぶんカウントすることで受信機間の相対位置関係を求めます。位相の測定精度は非常に高く、点間がおおむね水平ならば、±(5mm±距離の100万分の1)程の精度で相対位置を知ることができます。継続的に観測すれば、一方の点に対して他端の変位軌跡が得られます。
データは30秒毎に取得し、携帯電話回線を利用してほぼリアルタイムでつくばのGSJに送られます。1時間収集するたびに1つのファイルにし、1時間毎の位置をデータにします。ところでGPSの基線解析では、点間の相対3成分が得られるのですが、高さ方向は大気中の水蒸気の影響を受けやすく、水平成分ほど高精度になりません。水蒸気は時間的に変化が著しく、空間的にも不均一なため,補正が難しいのですが、簡易の気象補正によって幾分の改善が望めます。本観測では、山麓で気象データを取得し、データがある程度まとまってから一括補正を行っています。このサイトは、自動解析による速報結果を提供するため、気象補正を施しておりません。誤差ご理解した上でグラフをご覧ください。
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