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伊豆大島火山自然電位モニタリング

電位分布

測定方法

 伊豆大島火山の全体的な自然電位分布を把握するために、定点観測とは別に電位分布のマッピング調査を行っています。計測機器は2つの電極、ケーブル、電位差計からなります(写真1)。測定手順としては、まず基準点にて一つの電極を深さ15 cmほどの穴に設置し、ボビンに巻いたケーブルの一端を接続します。次に、ケーブルを伸ばしながら100 m毎にもう一つの電極を地表に置き、基準点の電極との電位差を電位差計で測定します。ケーブルは2 kmあり、これを全て伸ばしたらいったんケーブルを巻き取り、基準点の電極を移動して、次の区間の測定になります。こうすることによって面的な電位分布を得ます。

写真1 マッピング調査の道具

写真1 マッピング調査の道具

  
電位分布

 マッピング調査は2006年および2018年に行っています。2006年には606ヶ所にて、2018年には155ヶ所にて測定を行っています。いずれも、電位分布は赤丸の地点を基準として、そこからの差を表しています(図7、8)。観測されている場所を見る限り、2006年と2018年では大差なく安定 した電位分を示していると考えられます。
 電位分布をみると、山頂カルデラ北方で電位が相対的に低くなっていることがわかります。基準点が異なるので絶対値の比較はできませんが、定点観測点での経年変化の平均的な値は、この電位分布を反映していることがわかります。例えば観測点3、4、6番(図3参照)の電位は、他の点に比べ相対的に低くなっています。山頂カルデラ北方の相対的に電位が低くなっている場所を除いて、電位分布は概ね標高を反映したものとなっています。これは、雨水の浸透が定常的な電位分布を引き起こしていることによります(Onizawa et al., 2009)。三原山北方の電位が相対的に低くなっている原因ははっきりしませんが、溶岩流の分布域(川辺, 1998)と対応しており、地下の流動に係る水理定数や媒質の比抵抗値を反映していることによると考えられます。現在は平時の電位分布を示していますが、火山活動が活発化すると、地下のマグマからの脱ガス量が増えます。そのような火山性流体が上昇してくることによって 自然電位分布が変化します。あわせて定点観測点の値も変動することが期待されますが、詳細は数値シミュレーションの項で検討する予定です。

図7 自然電位分布(2006年)、暖色系ほど高電位、寒色系ほど低電位であることを示す。

図7 自然電位分布(2006年)
暖色系ほど高電位、寒色系ほど低電位であることを示す。

図8 自然電位分布(2018年)、寒色系ほど低電位であることを示す。

図8 自然電位分布(2018年)
暖色系ほど高電位、寒色系ほど低電位であることを示す。

参考文献

川辺禎久 (1998) 伊豆大島火山地質図, 工業技術院 地質調査所.
Onizawa S, Matsushima N, Ishido T, Hase H, Takakura S, Nishi Y (2009) Self-potential distribution on active volcano controlled by three-dimensional resistivity structure in Izu-Oshima, Japan. Geophys J Int 178(2):1164–1181.