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霧島山新燃岳2017年噴火
産総研・地質調査総合センターによる調査結果
活断層・火山研究部門
更新:2017年11月16日
開設:2017年10月13日
産総研・地質調査総合センター (GSJ) は霧島山新燃岳2017年10月11日からの噴火に対応し、現地調査チームを派遣しました。
10月12日から、現地での火山ガス観測や噴出物調査 (構成粒子の観察、噴出物分布調査等) と、茨城県つくば市にある研究所での分析作業 (検鏡・化学分析・岩石学的解析) を実施しています。
調査結果は随時公表していきます。調査にあたり、現地各自治体、気象庁にご協力いただいております。
新燃岳の噴煙。2017年10月12日10時37分頃撮影
目次
- 現地調査報告
- 産総研の地質情報
- 地質情報データベース
- 霧島火山の地質・噴火史を紹介する小冊子(GSJ研究資料集 no. 578)
- 動画と写真で見る霧島山新燃岳2011年噴火活動(GSJ研究資料集 no. 581)
- 霧島火山地質図
霧島山火山の地質,生い立ち,最近の噴火概要の紹介,および地質図の電子データ(jpeg, WMS, WMTS, Shapefile) がご利用できます. - その他の地質情報
- 霧島火山の活動記録
現地調査報告
東大・防災科研・産総研共同でのガス・火山灰観測システムの設置
内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)により,東京大学理学部・防災科学技術研究所・産業技術総合研究所の3者共同で,霧島火山を対象とした観測を開始し,その概要が内閣府より11月10日にプレス発表されました.
火山噴火予知連絡会(拡大幹事会:2017年10月19日鹿児島市)提出資料より抜粋
2017年10月11~16日の霧島山新燃岳噴出物構成粒子の特徴 [予知連資料]
2017年10月11~16日の霧島山新燃岳噴出物には、マグマ物質と考えられるガラス光沢のある暗色粒子(G)が含まれています。その割合は時間とともに増加しており、マグマの供給が続いていることを示唆します。
2017年10月12日霧島新燃岳火山ガス観測報告 [予知連資料]
10月12日セスナ機を用いた火山ガス組成およびSO2放出率の観測を実施した結果、火山ガス組成:CO2/SO2=1.6、 SO2/H2S=2.7、H2/SO2=0.01 (モル比)SO2 放出率:1-2 万t/日 程度を得ました。
火山ガス組成は、比較的高い圧力で放出された高温火山ガスを起源とするガスが400-500℃ 程度に冷却された際に生ずる組成と考えて矛盾はありませんが、その他の可能性を排除するだけの根拠はありません。SO2 放出率は、噴火中の比較的短時間の値としても非常に大きく、火山ガスを供給した大量の起源物質が噴火に関与していたことを示します。
2017年10月14~16日にかけての降灰量(速報) [予知連資料]
採集 (写真) した火山灰を元に、14日の噴火は、18万t、15~16日の噴火は1.4 万t と見積もりました。両噴火とも降雨中の調査であったため、流出の影響などのため求めた降灰量は最低値と考えられます。
写真 火山灰の採集。(10月16日:えびの高原霧島温泉)
なお、地震研・防災科研・熊本大が報告した13日までの降灰量とあわせると、11~16 日にかけて、およそ数十万t の噴出物が放出されたと考えられます。
10月14日と15~16日それぞれの降灰域。
2017年10月12日~14日 (上空観察及び噴出物調査) 第二報
新燃岳の噴煙。(2017年10月12日11時39分頃)
新燃岳火口から上がる火山灰混じりの噴煙。(2017年10月12日10時49分頃)
新燃岳火口から上がる火山灰混じりの噴煙。灰色噴煙の手前に水たまりがある。
(2017年10月12日10時50分頃)
再開した噴火(宮崎県小林市より)。前日で噴火が収まったように思えたが、14日午前8時23分から噴火が再開し、
噴煙高度は2300mに達し、11日から始まった一連の噴火の中で最も高く上がった。(2017年10月14日10時35分)
夷守台(宮崎県小林市)のキャンプから見る火山灰を降らす噴煙。
(2017年10月14日11時55分頃)
夷守台(宮崎県小林市)のキャンプ場に着いて1時間あまりの間にレンタカーに積もった火山灰。
天候が悪化し、次第に泥雨が降るようになった。耳を澄ますと火口方向からゴロゴロと鳴動が聞こえ、
空振によりキャンプ場施設の管理棟のシャッターがかたかた音を立てる。噴火開始時はもっと激しかったそうだ。
(2017年10月14日11時55分頃)
鹿児島空港から見た噴煙。気象庁発表によると、朝からの噴火は14時20分に停止したが、
15時05分から再開した。(2017年10月14日15時12分頃)
2017年10月12日~13日 (セスナ機によるガス観測)
Multi-GAS(噴煙観測装置)による火山ガス組成観測などを実施しました。
2017年10月12日~13日 (上空観察及び噴出物調査) 速報
降灰構成物の調査を実施中です。
夷守台(宮崎県小林市)のキャンプ場の車に積もった火山灰。
(2017年10月12日15時06分頃)
皇子原公園(宮崎県高原町)における降灰調査。定面積で火山灰を採取。
(2017年10月12日16時58分頃)
夷守台(宮崎県小林市)東方の葉っぱに積もった火山灰。
(2017年10月12日17時16分頃)
霧島中学校(鹿児島県霧島市)付近よりみた新燃岳の噴煙。
(2017年10月12日13時47分頃)
夷守台(宮崎県小林市)東方より見た霧島連山。左端に新燃岳の噴煙。
(2017年10月12日18時16分頃)
セスナ機より見た新燃岳火口。白色噴煙のみでこの日はほとんど火山灰放出がなかった。 (2017年10月13日11時00分〜11時12分) |
鹿児島空港より新燃岳の白色噴煙を望む。新燃岳は霧島連山のほぼ中央に位置する。 この日はほとんど火山灰の放出がなかった。(2017年10月13日8時55分頃) |
観察結果 (速報)
2017 年10 月11 日の霧島山新燃岳噴出物構成粒子の特徴(速報)
2017 年10 月11 日に霧島山新燃岳から噴出した火山灰を観察しました。観察した試料は、10 月11 日18 時頃に高原町役場屋上で採取されたものです。産総研において水洗し、ふるい分け後、63~125μm、125~250μm の粒子を観察しました。
2017年10月11日火山灰(左図:直径63~125μm、右図:直径125~250μm)の写真。 (赤丸)ガラス光沢のある暗色粒子、(青丸)半透明の淡色粒子、(白丸)表面に黄鉄鉱が付着する白色粒子。 |
火山噴火予知連絡会資料
産総研から火山噴火予知連絡会(拡大幹事会:2017年10月19日 鹿児島市)に提出した資料を公開しました。
- 霧島火山2017年10月噴火の降灰量(PDF, 842KB)
- 霧島火山2017年10月噴火の火山灰粒子(PDF, 5.6MB)
- 霧島火山2017年10月噴火の火山灰構成鉱物(PDF, 1.5MB)
- 霧島火山2017年10月噴火の火山ガス観測:10月15日資料の再掲(PDF, 307KB)
- 霧島火山の2011年火口内溶岩の冷却の見積もり(PDF, 374KB)
産総研から火山噴火予知連絡会に提出した資料を公開しました。
更新履歴
- 2017年11月16日:「現地調査報告 GSJ地質ニュース」を掲載。
- 2017年11月14日:「現地調査報告 IEVG ニュースレター」「現地調査報告 東大・防災科研・産総研共同でのガス・火山灰観測システムの設置」を掲載。
- 2017年10月25日:「現地調査報告 火山噴火予知連絡会(拡大幹事会:2017年10月19日鹿児島市)提出資料より抜粋」を掲載。
- 2017年10月25日:「産総研の地質情報」にリンクを追加。「火山噴火予知連絡会資料」に資料を追加。
- 2017年10月18日:「産総研の地質情報」にリンクを追加。
- 2017年10月17日:「火山噴火予知連絡会資料」を掲載。
- 2017年10月16日:「現地調査報告 2017年10月12日~14日 (上空観察及び噴出物調査) 第二報」を掲載。
- 2017年10月16日:「現地調査報告 2017年10月12日~13日 (上空観察及び噴出物調査) 速報」の写真のキャプションを追記。