火山研究情報 トップへ
浅間山火山の噴火情報 トップへ
浅間山火山2004年の噴火情報 トップへ
浅間火山の概略 トップへ

火山活動史

黒斑期 (10-2.1万年前)

黒斑期の活動は主に安山岩質マグマの活動で特徴付けられる。約10万年前以降、浅間・烏帽子火山群の東よりの地点に、大型の安山岩質成層火山である黒斑火山が成長を開始した。黒斑火山の活動は噴火様式・噴出物の化学組成に基づき、さらに牙 (ぎっぱ)・剣ヶ峰・三ッ尾根・仙人の4つの活動期に細分される。牙・剣ヶ峰期 (10-8万年) には火砕岩と溶岩の噴出により成層火山体が成長した。石尊山溶岩ドームもこの時期に形成されたと考えられる。三ッ尾根期・仙人期 (7-2.3万年前) にはより大規模なプリニー式噴火が発生するようになり、山麓から関東地方にかけて分布する板鼻褐色テフラ群をもたらした。

約2.3万年前、大規模なプリニー式噴火に伴い、黒斑火山は大規模に崩壊し、南北両山麓は広く岩屑流堆積物に覆われた。この山体崩壊堆積物は、南西麓の佐久平方向では塚原岩屑流堆積物、南東麓の軽井沢方向では塩沢岩屑流堆積物、北麓の吾妻川方向では応桑岩屑流堆積物とそれぞれ呼ばれている。さらに吾妻川を流下し、関東平野に達した泥流堆積物は前橋泥流と呼ばれる。
山体崩壊後、さらに2回のプリニー式噴火が知られている。約2.1万年前に黒斑期の火山活動は終了した。

仏岩期 (2.0-1.1万年前)

仏岩期は主にデイサイト質のマグマの活動によって特徴付けられる。約2万年前には軽井沢付近で噴火が発生し、軽石質火砕流 (雲場火砕流) の噴出ののちに溶岩ドーム (離山溶岩ドーム) が形成された。その後、約2万年前に大規模なプリニー式噴火が黒斑火山の東麓で発生し、白糸降下軽石 (As-Sr) を噴出した後、小浅間溶岩ドームが形成された。続いて約1.7万年前から安山岩〜流紋岩質成層火山 (仏岩火山) の主要部が成長を開始した。成層火山の成長は第一大窪沢降下軽石、第一大桑沢火砕流の噴出で開始し、数回の噴火により成層火山体が構築された。
約1.3万年前にはこれまで知られている浅間火山最大の噴火が発生し、大量の降下軽石と火砕流の噴出が起こった。この噴火は、まず 板鼻黄色軽石 (As-YP) の噴出で始まり、ついで軽石質火砕流が流下した。さらに 草津軽石 (または嬬恋軽石) (As-K) が噴出した。その後再び軽石質火砕流が噴出した。
一連の噴火によって噴出した一連の軽石質火砕流堆積物は、小諸第一火砕流堆積物 と呼ばれ、浅間火山の南北両山麓に広く分布している。
仏岩火山の最終期の活動は、1.1万年前のプリニー式噴火が知られており、この噴火に伴って総社降下軽石と 小諸第二火砕流堆積物 が噴出した。火砕流は主に南山麓の小諸から御代田方向に流下・堆積した。

前掛期 (約8500年前から現在)

前掛火山の活動は、仏岩火山の活動の終了後約1500年の休止期をおいて開始した。8500年前から7500年前まで比較的頻繁に安山岩質降下軽石を噴出する活動が継続した。再び1500年ほどの休止期をおいて6000年前から3000年前まで、比較的規模の大きな降下軽石を噴出する活動が6回発生した。2500年前ごろから現在にかけては大規模な噴火活動が4世紀半ば、1108年、1783年の噴火の3回発生し、それぞれ 浅間C浅間B浅間A テフラを噴出した。浅間Cテフラをもたらした4世紀半ばの噴火では、火砕流の噴出に続いて丸山溶岩・下舞台溶岩が流下したと考えられている。浅間Bテフラをもたらした 1108年天仁噴火、浅間Aテフラをもたらした 1783年天明噴火 についてはそれぞれ別ページにて詳述する。1783年噴火以降、前掛山山頂火口からは頻繁にブルカノ式噴火が繰り返されている。


浅間火山の主要テフラ

参考文献

Aramaki (1962)、荒牧 (1969)、荒牧 (1993)、高橋正樹ほか (2003)