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霧島山新燃岳2008年噴火情報 トップへ
8月22日噴出火山灰粒子の観察結果
概要
新燃岳2008年 8月22日火山灰は、主に既存の山体を構成する岩片からなる。これらの岩片はさまざまな程度に熱水変質を受けており、火山灰の細粒部には熱水変質鉱物が特徴的に含まれる。なお、新鮮なガラス質岩片がごく少量伴なわれる。
試料
試料は、噴火翌日の 8月23日に新燃岳火口の北東約 8km地点で採取された。試料は粒径 1mm以下の砂〜シルトサイズの火山灰で、湿潤状態では全体に暗灰色、乾燥状態では赤みに乏しい淡黄灰色を呈する。
構成粒子
実体顕微鏡等による観察では、噴出物の大部分はさまざまな程度に熱水変質を受けた火山岩片及び結晶片から構成される。岩片は結晶化した溶岩の破片、黒色で発泡したスコリア片などからなる。岩片はさまざまな程度に変質を蒙っている。強く変質した岩片は白色あるいは赤褐色を呈する。白色岩片には黄鉄鉱結晶が含まれる。また火山灰細粒部には黄鉄鉱の遊離した結晶が大量に含まれる。これらの熱水変質岩片の存在は、火山体内部の熱水変質を被っていた部分が噴火活動により放出されたものと考えられる。
試料粒子には黒色のガラス質火山岩片が少量 (全体の 1%以下) 含まれる。これらのガラス質火山岩片は鋭利な破断面で囲まれており、熱水変質を受けた兆候は認められない。なおこれらのガラス片は結晶量・気泡量などからさらに幾つかのグループに分けられる。現在のところこれらのガラス片が本質物質であるかどうかは明らかではない。
水洗した火山灰粒子の実体鏡写真。 写真横幅は約 4.5mm。 |
細粒の黄鉄鉱粒子。水洗した資料。 写真横幅は約 1.2mm。 |
ガラス質粒子の実体鏡写真。 粒径は約 0.2mm。 |
薄片写真。写真横幅は約 1.2mm。 |
ガラス質粒子のSEM像。 |
XRD 解析結果
XRD による細粒物の鉱物組成解析の結果は、石英、クリストバライト、トリディマイト、オパールなどの SiO2 鉱物種が主体で、カオリナイト、石膏類、ナトリウム明礬石などの硫酸塩鉱物が伴われることを示している。また、水道水乾固物にはハライト(塩化ナトリウム)のピークが確認されたが、これは火山灰の水溶性成分に含まれていた Na の反応生成物の可能性が高い。硫酸塩鉱物種が認められること、非晶質石英類が確認されたことから、硫酸酸性状態の熱水変質を被っていた部分が噴火活動により放出されたものと考えられる。
細粒成分のXRD解析結果。
分析試料は同一試料を前処理と分離条件により、下記 3種に区分し測定した。f1 : 採取試料を水道水中に懸濁後 10分間放置後し、水溶液部を分離して蒸発乾固したもの。f2 : 前述懸濁作業によりコロイド状態で底部に沈殿したもの。f3 : 採取試料を乾燥後、改めて蒸留水中に散乱させ、水中混濁物を一括して試料としたもの。
この解析に使用した火山灰試料は、気象庁福岡管区気象台が採取したものを提供していただいた。
本件担当
地質情報研究部門 火山活動研究グループ 星住・下司
長期変動研究グループ 伊藤・宮城