令和6年(2024年)8月8日に発生した日向灘の地震の関連情報



令和6年(2024年)8月8日に発生した日向灘の地震の関連情報

2024年8月19日 更新
2024年8月13日 開設

 令和6年8月8日16時42分に、日向灘を震源とするマグニチュード(M)7.1(気象庁暫定値)の地震が発生しました。震源の深さは約30kmでした。この地震により、宮崎県日南市で震度6弱の揺れを観測し、宮崎港では0.5mの津波も観測されました。この地震の発震機構は北西―南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生したと考えられます。
 この地震を受け、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域で大規模地震が発生する可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。この評価には、産総研のひずみ計データも活用されています。

第三報 2024年8月8日の日向灘の地震(M7.1)前後の産総研の水位・ひずみ変化:8月15日16時点での取得データの報告 [2024年8月19日]

第二報 2024年8月8日の日向灘の地震と1662年日向灘地震の推定断層モデルとの関係 [2024年8月13日]

第一報 [2024年8月13日]

2024年8月8日の日向灘の地震(M7.1)前後の産総研の水位・ひずみ変化

活断層・火山研究部門 北川有一

 産総研は南海トラフ巨大地震の発生予測を目指して、2006年度から紀伊半島~四国~九州周辺に観測点を順次整備している(図1)(小泉,2013北川ほか,2024)。これらの観測点では、1観測点ごとに深度の異なる3つの井戸(30m、200m、600mが標準)を設置して地下水や地殻変動の観測を行っており、南海トラフで異常な地殻変動が起きていないかどうかを監視している。
 ここでは、2024年8月8日に日向灘で発生した地震(M7.1)に関して、8月9日に開催された地震調査委員会に提出した資料をもとに、愛知県、三重県、和歌山県、高知県、香川県、愛媛県、大分県における計14地点の観測点で8月9日12時時点で取得された地下水位とひずみ変化について報告する(図2~図15)。観測データの主な特徴は以下の通りであり、プレート境界のすべりを示唆する異常な地殻変動は観測されていない。

須崎大谷SSK(高知県須崎市):図11
  • 地震後のひずみに変化が見られ、継続中である。
  • ひずみ変化の伸び縮みパターンは、過去に観測された地震後の変化と同様である。
  • 地震後のひずみ変化は、プレート境界のゆっくりすべりなどに伴う広域の地殻変動ではなく、観測点周辺での環境変化(地下水流動や応力場の変化等)の可能性が高いと考えている。
土佐清水松尾TSS(高知県土佐清水市):図12
  • 地震時のひずみにステップ状の小さい変化が認められる。
  • 地震後のひずみに変化が見られ、継続中である。
  • ひずみ変化の伸び縮みパターンは、過去に観測された地震後の変化と同様である。
  • 地震後に孔2(土佐清水松尾2)の水位が低下しているが、過去に観測された地震後の変化と同様である。
  • 地震後の水位・ひずみ変化は、プレート境界のゆっくりすべりなどに伴う広域の地殻変動ではなく、観測点周辺での環境変化(地下水流動や応力場の変化等)の可能性が高いと考えている。
佐伯蒲江SIK(大分県佐伯市):図15
  • ひずみについては、地震時のステップに加えて、地震後には、地震時のステップと同じ方向に変化が生じている可能性がある。
  • この観測点は2024年2月から観測を開始したばかりであり、ひずみトレンドの評価を行うことがまだ難しい状況である。
上記以外の観測点

地震時のステップが見られる観測点はあるが、地震後のひずみのトレンドに変化は見られない。

図1 産総研の観測点配置図。気象庁一元化震源カタログによる2024年日向灘の地震の震央を黄色の星で示す。

図1 産総研の観測点配置図。気象庁一元化震源カタログによる2024年日向灘の地震の震央を黄色の星で示す。

図2 豊橋多米観測点(TYE)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。
黒色の線は測定値を、緑色の線はBAYTAP(Tamura et al., 1991)により地球潮汐成分・気圧応答成分を除去し、さらに8月8日の地震前までの線形トレンドを除去した後の時系列を示す。降水量は棒グラフで示す.縦の点線は8月8日の日向灘の地震の発生時を示す。
N356Eなどは、ひずみセンサーの計測方位を示す。

図2 豊橋多米観測点(TYE)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。
黒色の線は測定値を、緑色の線はBAYTAP(Tamura et al., 1991)により地球潮汐成分・気圧応答成分を除去し、さらに8月8日の地震前までの線形トレンドを除去した後の時系列を示す。降水量は棒グラフで示す。縦の点線は8月8日の日向灘の地震の発生時を示す。
N356Eなどは、ひずみセンサーの計測方位を示す。

図3 豊田神殿観測点(TYS)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。 図の見方は図2と同じ。

図3 豊田神殿観測点(TYS)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。 図の見方は図2と同じ。

図4 西尾善明観測点(NSZ)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図4 西尾善明観測点(NSZ)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図5 津安濃観測点(ANO)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図5 津安濃観測点(ANO)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図6 熊野磯崎観測点(ICU)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図6 熊野磯崎観測点(ICU)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図7 串本津荷観測点(KST)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図7 串本津荷観測点(KST)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図8 田辺本宮観測点(HGM)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図8 田辺本宮観測点(HGM)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図9 室戸岬観測点(MUR)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図9 室戸岬観測点(MUR)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図10 新居浜黒島観測点(NHK)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図10 新居浜黒島観測点(NHK)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図11 須崎大谷観測点(SSK)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図11 須崎大谷観測点(SSK)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図12 土佐清水松尾観測点(TSS)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図12 土佐清水松尾観測点(TSS)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図13 西予宇和観測点(UWA)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図13 西予宇和観測点(UWA)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図14 綾川千疋観測点(AYS)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図14 綾川千疋観測点(AYS)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図15 佐伯蒲江観測点(SIK)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

図15 佐伯蒲江観測点(SIK)の地下水位・ひずみ変化(2024/8/7 00:00~2024/8/9 12:00)。図の見方は図2と同じ。

文献

  • 北川有一・落 唯史・松本則夫(2024)大分県における新たな地下水・ひずみ観測点(佐伯蒲江観測点)の完成報告-南海トラフ地震モニタリングのための地下水等総合観測施設設備工事-, IEVGニュースレター, 11(1), 2-4.
  • 小泉尚嗣(2013)地下水観測による地震予知研究-地下水位変化から地殻変動を推定することによる地震予測―, シンセシオロジー, 6(1), 24-33.
  • Tamura, Y. , Sato, T., Ooe, M. and Ishiguro, M. (1991) A procedure for tidal analysis with a Bayesian information criterion, Geophysical Journal International, 10 4, 507-516.

更新履歴

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター