地質調査総合センター

2025年3月28日に発生したミャンマー中部の地震(M7.7)に関する情報



2025年3月28日に発生したミャンマー・マンダレーの地震(M7.7)について

2025年4月4日 開設

活断層・火山研究部門

 2025年3月28日(現地時間)にミャンマーのマンダレー付近の深さ10 kmで、マグニチュード7.7の地震が発生しました(米国地質調査所による)。
 この地震の震源は、ミャンマー中央部を南北に貫くサガイン断層であり、長さ400 km以上に及ぶ区間で断層破壊が生じたと考えられています(図1)。この地震によってミャンマーの首都であるネピドーやその北に位置する人口第2の都市マンダレーなどで大きな被害が発生し、4月3日時点で3,000名以上の方が亡くなったことが報道されています。
 サガイン断層は活動性が高く、1930年の5月と12月にはネピドーの南に位置するバゴー(ペグ)付近で、それぞれマグニチュード7.4と7.5の地震が発生し、大きな被害が出たことが記録されています(Tsutsumi and Sato, 2009;Hurukawa and Maung Maung, 2011)(図1)。また、この活断層の北部においても、1931年1月にマグニチュード7.7、1946年9月にマグニチュード7.5と7.8、1956年7月にマグニチュード7.0の地震が発生しています(Hurukawa and Maung Maung, 2011)。
 また、今回の地震では、震源から約1,000 km離れたタイのバンコクで建設中の高層ビルが倒壊するなど「長周期地震動」によると考えられる被害が発生しました。バンコクは深い堆積盆地を埋積する軟弱な地盤の上に位置しており、大地震で発生し伝播した長周期地震動が、バンコク周辺の地下構造で増幅されたものと考えられます(図2)。遠く離れた場所で発生した自然災害によって被害を受けることは、津波や火山噴火で顕著な現象ですが、今後は地震被害についても検討が必要でしょう。

 産総研地質調査総合センターでは、東アジアにおける地震・津波・火山のハザード情報を取りまとめた「東アジア地域地震火山災害情報図」(https://www.gsj.jp/Map/JP/asia-area-geoscience.html)を2016年に刊行しています。この災害情報図では、東アジア地域で過去に発生した地質災害について、発生日、発生場所、被害規模等に関する情報が英語と日本語で取りまとめられています。また、1枚の地図に収めることができない詳細情報を表示するために、「地質ハザード情報システム」(https://geohazards-info.gsj.jp/geological_hazards/index.php:図3)をウェブ上で公開しています。これらには、今回の地震の震源となったサガイン断層(システム上では「サゲイン断層」と表記)や同断層の南部で発生した1930年のバゴー地震の被害に関する情報も収録されています。

本図は、国を超えた自然災害をもたらす地質ハザードについて関連諸国と議論するG-EVERプロジェクト(https://www.gsj.jp/information/international/int-orgni/gever.html)および東・東南アジア地球科学計画調整委員会(CCOP)(https://www.gsj.jp/information/international/int-orgni/ccop-j.html)活動の成果です。

文献

  • Hurukawa, N. and Maung Maung, P. (2011): Two seismic gaps on the Sagaing Fault, Myanmar, derived from relocation of historical earthquakes since 1918. Geophysical Research Letters, Vol. 38, L01310, doi:10.1029/2010GL046099

  • Tsutsumi, H. and Sato, T. (2009): Tectonic Geomorphology of the Southernmost Sagaing Fault and Surface Rupture Associated with the May 1930 Pegu (Bago) Earthquake, Myanmar. Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 99, No. 4, pp. 2155–2168, doi: 10.1785/0120080113

情報

図1 今回の地震の震源となったサガイン断層とその周辺における地震活動。

図1 今回の地震の震源となったサガイン断層とその周辺における地震活動
産総研が公開している「地質ハザード情報システム」(背景地図にはGoogle Mapを使用)から切り取った画像に、米国地質調査所による今回の地震の本震と3月29日までの余震の震央、および国土地理院が行なったInSAR解析結果による破壊域の範囲を加筆した。また、「地質ハザード情報システム」に収録されている過去に発生した被害地震等の情報を重ねた。




図2 ミャンマー及びタイ周辺の地質図

図2 ミャンマー及びタイ周辺の地質図
地質ハザード情報システムの地質図(背景地図にはGoogle Mapを使用)に震央からバンコクまでの距離を加筆した。
バンコク周辺には、第四紀の地層が厚く堆積した低地が広く分布する。




図3 地質ハザード情報システム

図3 地質ハザード情報システム
地震・津波・火山に関するデータを収録している。
地震に関しては、活断層、地震震源域のほか、地震イベント犠牲者数に関するデータが収録されている。
背景地図にはGoogle Mapを表示させている。

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター

災害と緊急調査