平成28年(2016年)11月22日福島県沖の地震の関連情報



「2016年11月22日福島県沖の地震(M7.4)」周辺の地質構造

2016年11月22日  開設

 2016年11月22日午前5時59分頃、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生し、最大で高さ1.4mの津波が仙台港で観測されました。震源のメカニズムは北西—南東方向に張力軸をもつ正断層型の地震でした。ここでは震源域周辺の地質構造について解説します。

震源付近の海洋地質図

産業技術総合研究所地質調査総合センターから発行されている「塩屋埼沖海底地質図」の一部を切り出した図に、気象庁から公表された11月22日福島県沖の地震の震源位置を赤丸で示しています(図1)。震源付近には断層は明示されていませんが、この海域全体にはNEからNNE方向の正断層が卓越します。

図1 福島県沖の海底地質図と11月22日の地震の震源(赤丸)。図2の反射断面の位置を黒線で示す。図1:福島県沖の海底地質図と11月22日の地震の震源(赤丸)。
図2の反射断面の位置を黒線で示す。

震源付近の反射断面

震源付近を東西に横断するシングルチャンネル反射法地震探査による2本の反射断面を示します(図2)。全体として地層の変形も少なく、なだらかな構造が発達しますが、詳しく観察すると、海底付近まで達する小規模な正断層が複数認められます(矢印で示す)。これらの断層は連続性が良くなく、マップ上に断層トレースを引くのは困難でした。福島沖には、従来からこのような規模の小さい正断層が多数発達することは知られていましたが、震源断層として評価するのかははっきりしませんでした。今回の地震はこのような断層も評価する必要があることを示唆しています。なお、ここに見えている断層が今回の地震に関係しているかどうかは、震源の深さや反射断面の詳しい再解析を行って、検討する必要があります。

図2:震源付近のシングルチャンネル反射断面。位置は図1を参照。図2:震源付近のシングルチャンネル反射断面。位置は図1を参照。

参考:2011年3月11日以後の福島県沖の地震メカニズム解の分布

今回の地震の周辺でどのような地震が発生していたかを示すため、防災科学技術研究所のF-netのメカニズム解を図3にプロットしました。2011年3月11日から2016年11月22日までの深さ25km以浅を表示しています。青系が正断層、赤系が横ずれ、緑系が逆断層型です。今回の地震が起こった場所は、図のオレンジ色の枠で示す、福島県浜通りあたりから沖合まで北西—南東伸長の正断層型地震が起こっていた場所です。なお、海岸線付近で震源が抜けているように見えますが、メカニズム解が決められていない小さい地震は起こっています。

図3:2011年3月11日以後の福島県沖周辺の深さ25km以浅の地震メカニズム解の分布。

図3:2011年3月11日以後の福島県沖周辺の深さ25km以浅の地震メカニズム解の分布。
断層タイプにより色分けしている。
青系が正断層、赤系が横ずれ、緑系が逆断層型である。
データは防災科学技術研究所のF-netカタログ(http://www.fnet.bosai.go.jp/top.php?LANG=ja)による。

活断層・火山研究部門  岡村行信、今西和俊

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター