第13回
概要
海洋をめぐる情勢がここ1-2年に大きく変化し、海洋における地質・資源に対する社会的関心は大きいものとなっています。平成19年3月に海洋基本法が成立、7月に施行され、20年3月にはそれに基づく海洋に関する政策推進のための海洋基本計画が制定されました。また、金属資源・エネルギー資源の枯渇への危機感や高騰により、海域資源開発への活発な動きもあります。さらに、平成19年3月の能登半島地震、7月の新潟中越沖地震と相次いで沿岸海域の地震による多大な被害が生じ、沿岸海域を中心とした海域地質情報の整備の必要性も再認識されています。産業技術総合研究所では、海域や沿岸域の地質や環境に関連した課題について様々な研究を行っています。これまでの調査研究についての紹介を含め、今後の海洋・沿岸域の地質の研究の展開を考えるために企画したシンポジウムです。
開催概要
タイトル | 地質調査総合センター第13回シンポジウム 海域・沿岸域の資源・環境・防災 -持続的発展に向けた海洋地質研究- |
日時 | 平成21年2月26日 (木) 13:00-17:45 |
会場 | 秋葉原ダイビル コンベンションホール →<アクセス> (東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル 2F) |
主催 | 独立行政法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター |
参加費 | 無料 |
事前参加登録 | 終了しました |
CPD 希望の方のご登録 | 終了しました |
プログラム
12:30 |
開場 開場後はポスター発表をご覧いただけます。 |
13:00-13:05 |
開会の挨拶 加藤碩一 (地質調査総合センター代表) |
13:00-13:15 |
シンポジウムの主旨 西村 昭 (地質情報研究部門) |
13:15-13:50 |
我が国の大陸棚周辺海域における資源探査の現状と今後の方向性について 神田慶太 (石油天然ガス・金属鉱物資源機構) |
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC) では、経済産業省からの受託等を受けて、大陸棚周辺及びその延長部分における、石油・天然ガス及び海底鉱 物資源等の資源調査を実施している。本講演では、国が保有し、当機構が運用している三次元物理探査船「資源」、及び当機構が保有する深海底鉱物資源探査専 用船「第2白嶺丸」を用いた資源探査状況について概説するとともに、最近の資源に対する内外の情勢等を踏まえた、今後の資源開発の方向性について、国及び JOGMEC が実施する施策・事業を基に解説する。 | |
13:50-14:10 |
海底熱水鉱床 : その実体と商業化への課題 飯笹幸吉 (地質情報研究部門) |
日本の排他的経済水域には、熱水活動に伴う10を越える大小の海底熱水硫化物鉱床が知られている。これまでの調査では、硫化物鉱床の海底での平面的な分布 はよく知られているものの海底下の存在状況はほとんど明らかにされていない。世界第6位の広大な排他的経済水域を持つ日本の海底に存在する硫化物鉱床の実体を明らかにすることは、潜在資源量の目録を整えることに貢献すると共に、自前資源としていつでも開発できる準備が整うことにつながる。 | |
14:10-14:30 |
海洋石油天然ガス資源開発と最近の探査技術 棚橋 学 (地圏資源環境研究部門) |
石油天然ガス資源開発活動は、現在は主に海洋で行われており、開発の対象となる海域の水深はどんどん深くなり、また海底下の深度も大きくなってる。それに 加えて、メタンハイドレートのような新しい資源や複雑な地質の地域が探査開発の対象になってきた。このような石油天然ガス資源の特徴とその開発のための最近の探査技術について紹介する。 | |
14:30〜15:10 | 休憩 & ポスター発表 |
15:10-15:35 |
海洋環境の変遷の解明と将来予測 : 地球温暖化と海洋酸性化 鈴木 淳 (地質情報研究部門) |
人類活動により放出された二酸化炭素は、地球温暖化を引き起こすとともに、海洋に溶け込んで、海水を酸性化させる。この海洋酸性化現象は、サンゴなどの海 洋生物の石灰化を阻害して、海洋生態系に大きな影響を与える可能性が指摘されている。過去から現在への海洋環境の変遷の解明と将来予測に向けて、産総研・地質情報研究部門における地球規模環境問題への取り組みを紹介する。 | |
15:35-16:00 |
アジアの沿岸環境と産総研の取り組み 齋藤 文紀 (地質情報研究部門) |
2007年に発表された IPCC 第四次評価報告書では、地球環境変動に対して大きな影響を受ける代表的な脆弱な地域として「アジアのメガデルタ (大規模三角州)」が取り上げられた。低平で広大なデルタは、世界の半分の人口を有するアジアにおいて、特に居住や生産の場として重要だが、近年の人間活動によって大きく変化してきており、多くの問題が顕在化してきている。産総研では1990年代からこれらの地域において基礎的な研究を現地機関と共同で推進してきており、その活動や成果の概要と現在の取り組みについて紹介する。 | |
16:00〜16:20 | 休憩 & ポスター発表 |
16:20-17:00 |
日本の海洋地質研究の現状と課題 徳山英一 (東京大学海洋研究所) |
海洋ではプレートテクトニクスの諸現象が現在進行中である。進行中の地学現象を理解するためには海洋現場観測による科学的知見の取得が不可欠である。この 知見こそ、海洋の開発及び利用、海洋環境の保全を実現化するための基盤情報であると言って過言でない。しかし、わが国では探査技術の開発で世界のフロントランナーとは言い難く、さらに探査を担う中核組織が存在するとは言えない。産業技術総合研究所が2つの役割を担うことを期待する。 | |
17:00-17:25 |
産総研の海洋地質情報と海域活断層評価 ―今までの知見と今後の課題― 岡村行信 (活断層研究センター) |
2007年に発生した能登半島地震と中越沖地震は、産総研が過去に取得した海洋地質情報が海域活断層の推定に有効であることを示すと同時に、評価に用いる ためには限界があることも示した。その教訓は、「今までの情報を最大限に生かしつつ、さらに質の高いデータ取得が必要」である。そのような現状を整理し、産総研が進めようとしている沿岸域の活断層及び地震防災に関する研究を紹介する。 | |
17:25-17:45 |
総合討論 司会 湯浅真人 (地質情報研究部門) 佃 栄吉 (研究コーディネータ) |
17:45 |
閉会 |
ポスター発表
日本周辺海域のメタンハイドレート原始資源量試算の歴史と現状 佐藤 幹夫 (地圏資源環境研究部門)・藤井 哲哉・佐伯 龍男 (石油天然ガス・金属鉱物資源機構)・長久保 定雄 (石油天然ガス・金属鉱物資源機構 / 日本海洋掘削) |
日本海東縁南部上越沖海底メタンハイドレート分布域の海底地質構造 佐藤 幹夫 (地圏資源環境研究部門)・町山 栄章 (海洋研究開発機構)・弘松 峰男 (千葉大学)・上嶋 正人 (地質情報研究部門)・松本 良 (東京大学) |
上越沖メタンハイドレート海底表層賦存域における DAI-PACK (小型サイドスキャンソナーとサブボトムプロファイラ) 調査 上嶋正人・西村清和・岸本清行 (地質情報研究部門)・佐藤幹夫 (地圏資源環境研究部門) |
Potential methane production in sediments from the Cascadia Margin、 IODP.Expedition 311 吉岡秀佳 (地圏資源環境研究部門)・ 東 陽介・中村孝道・丸山明彦 (生物機能工学研究部門)・坂田 将 (地圏資源環境研究部門) |
東部南海トラフ海底堆積物中の古細菌起源脂質とメタン生成活性の分布 坂田 将 (地圏資源環境研究部門)・大庭雅寛 (東北大学)・吉岡秀佳 (地圏資源環境研究部門)・Barry A. Cragg・John R. Parkes (カーディフ大学)・藤井哲哉 (石油天然ガス・金属鉱物資源機構) |
高解像 AUV データによる前弧海盆泥火山の発達史の復元 森田澄人 (地質調査情報センター)・芦寿一郎 (東京大学)・月岡 哲・澤 隆雄 (海洋研究開発機構) |
メタンハイドレート分布域における含メタン地層水のマイグレーションと冷湧水について 森田澄人 (地質調査情報センター)・倉本真一・眞砂英樹・町山栄章・徐 垣 (海洋研究開発機構)・Nathan Bangs (テキサス大学)・Char-shine Liu・SaulwoodLin (台湾大学) |
酸化還元電位電極による海底熱水ならびに冷湧水由来の還元的流体の挙動に関する基礎研究とその海底探査活動への貢献実績 中村光一 (地質情報研究部門) |
海底堆積物の熱物性 後藤秀作・松林 修 (地圏資源環境研究部門) |
東京南方海域の海底熱水鉱床 飯笹幸吉 (地質情報研究部門) |
大陸棚画定申請の提出 : 概要と今後の展望 岸本清行・湯浅真人・西村 昭 (地質情報研究部門)・大陸棚調査プロジェクト |
海洋性島弧火山における地殻内長距離マグマ移動の検証 -八丈島、伊豆大島での海底、陸上調査結果- 石塚 治・川邊禎久・中野 俊・下司信夫・辻野 匠・荒井晃作・伊藤順一 (地質情報研究部門)坂本泉 (東海大学)・荻津 達 (明治大学)馬場久紀・稲田瑛子 (東海大学) |
沖縄周辺海域の海洋地質学的研究 荒井晃作 (地質情報研究部門) |
琉球海溝表層堆積物に分布する磁性粒子の特徴 川村紀子・小田啓邦・山崎俊嗣 (地質情報研究部門) |
洪水時に河川から排出された土砂の海域での輸送・堆積機構 池原 研・片山 肇 (地質情報研究部門)・嵯峨山積・菅 和哉 (北海道立地質研究所)・入野智久 (北海道大学)・大村亜希子 (東京大学) |
相模湾初島沖海底堆積物に記録された大正型関東地震 池原 研 (地質情報研究部門)・町山栄章 (海洋研究開発機構)・芦寿一郎 (東京大学)・白井正明 (東京大学)・徐 垣 (海洋研究開発機構) |
能登半島北部沿岸海域における活断層の分布と発生頻度 井上卓彦・村上文敏 (地質情報研究部門)・岡村行信 (活断層研究センター)・池原 研 (地質情報研究部門) |
ショートマルチチャンネル音波探査装置の開発と沿岸調査への適用 村上文敏 (地質情報研究部門)・古谷昌明 (総合地質調査 (株) ) |
中越沖地震震源域の活構造調査 岡村行信 (活断層研究センター) |
海域・沿岸域の資源・環境・防災調査への電気・電磁探査法適用に向けた数値計算手法の開発 上田 匠・光畑 裕司・内田 利弘 (地圏資源環境研究部門) |
北西太平洋での溶解実験装置を用いた炭酸塩沈降粒子の溶解過程に関する研究 田中裕一郎・西村 昭 (地質情報研究部門)・福原達雄・井岡 昇 ( (株) 環境総合テクノス) |
衛星リモートセンシングで観測された日本近海の海底火山における変色海水 浦井 稔 (地質情報研究部門) |
X線CTによる深海サンゴ礁コアサンプルの内部構造解析 -IODP第307次航海の成果- 田中 明子 (地質情報研究部門)・中野 司 (地質調査情報センター)・池原 研 (地質情報研究部門) |
衛星データで見る黄河デルタの経年変化 田中 明子 (地質情報研究部門) |
メコン河デルタ海浜の中長期変動 田村 亨 (地質情報研究部門) |
荒川低地の沖積層基盤地形 小松原純子・木村克己 (地質情報研究部門) |
大口径検土杖の設計・開発と湿原調査への応用 吉川秀樹 (研究環境整備部門)・七山 太 (地質情報研究部門)・古川竜太 (地質情報研究部門) |
沿岸域のGPS-VRS-RTK測量による短時間・高精度位置測定事例の紹介 渡辺 和明 (地質調査情報センター)・七山 太 (地質情報研究部門) |
瀬戸内海における超長期的生態系モニタリングに関する研究 -漁業者・海運業者・市民団体のアンケート調査から- 湯浅一郎 (地質情報研究部門)・今井美峰 (日本ミクニヤ (株) ) |
瀬戸内海における水温数十年変動の季節性 馬込伸哉・高橋 暁 (地質情報研究部門) |
沿岸生態系を支える藻場の計測 谷本照己・高杉由夫・橋本英資 (地質情報研究部門)・樫本康之 (四国電力)・山本房市 ( (株) 四電技術コンサルタント) |
豊後水道の船舶避難想定海域における津波の影響評価 山崎宗広・三好順也 (地質情報研究部門)・近藤英昭 (瀬戸内海海上安全協会)・上嶋英機 (広島工業大学 / 産総研客員研究員) |
備讃瀬戸海域における栄養塩動態解明に向けた空間情報解析 三好順也・高橋暁 (地質情報研究部門)・三島康史 (バイオマス研究センター)・湯浅一郎 (地質情報研究部門)・吉川省子 (近畿中国四国農業研究センター) |
温暖化に伴う内水域環境の変化監視情報システム構築に資する研究 -海洋調査技術の内水域への展開- 長尾正之・鈴木 淳 (地質情報研究部門) |
瀬戸内海における海砂採取の影響 高橋 暁・湯浅一郎 (地質情報研究部門)・村上和男 (武蔵工業大学)・星加 章 (産学官連携センター) |
日本全国沿岸海域の地球化学図と元素分布の特徴について 今井 登・寺島 滋・御子柴真澄・太田充恒・岡井貴司・立花好子・池原 研・片山 肇・野田 篤 (地質情報研究部門) |