2023年2月6日に発生したトルコ南部の地震(Mw 7.8、 Mw 7.5)について
第二報 トルコ南部の地震に伴う地表地震断層(速報)
活断層・火山研究部門 近藤久雄・トルコ鉱物資源開発調査総局 Selim Özalp
トルコ南部の東アナトリア断層系を震源として、2023年2月6日にマグニチュード7.8および7.5(Mw7.8とMw7.5)の地震が発生しました。産総研地質調査総合センターとトルコ鉱物資源開発調査総局との国際共同研究の一環として、トルコ地図総局(HGM)によって地震後に撮影された航空写真をもとに、地震に伴い出現した地表地震断層のマッピングをおこなっています。カフラマンマラシュより北方の地域は積雪量が多く、現地での地表踏査が困難と予想されるため、航空写真による概略的な検討をおこなうことにしました(図1)。航空写真は、トルコ地図総局(HGM)がウェブ上で公開しており、明瞭に地震断層を識別することが可能であるとともに、ブラウザ上で距離を計測することが可能です。地震に伴うずれの量(変位量)は水平成分のみを計測し、写真の縮尺は1/10,000程度、ずれ量の計測誤差は数十cm程度です。なお、記載された内容は速報であり、今後の調査研究の進展により修正・変更することがあります。
地表地震断層は、大局的には既知の活断層(東アナトリア断層系、チャルダク断層等)に沿って出現しており、Mw7.8の地震に伴う地表地震断層の北東端は、チェリクハンの町から東へ約5kmの地点まで確認できます(図1)。南端はハタイからアンタクヤの町付近にかけて延びるとみられますが、液状化に伴う地割れなども多く生じており現在のところ未確認です。Mw7.5の地震に伴う地表地震断層の東端は、チャルダクの町から東へ少なくとも約50kmまで確認されました。震央より西側については、航空写真の撮影が未実施です。
これまでに計測できたなかで最大の変位量は、Mw7.8の地震断層では左横ずれ7.5〜7.7m(図2)、Mw7.5の地震断層では左横ずれ8.7〜9.1mでした(図3)。両者ともに、それぞれの地震断層全体の中央部付近で生じています。これらの変位量は、内陸の地震で生じるずれの量としては最大級の大きさです。今後、引き続き航空写真を用いた分析をおこなうとともに、地表踏査や現地測量によって、さらに詳細な地表地震断層の分布や上下変位成分・水平短縮成分を含む正確な変位量の分布が明らかにされるものと期待されます。
図1 今回の地震の震央と余震分布、活断層との対応。
震央と震源情報はUSGSのウェブサイトによる。
基図はMTA(トルコ鉱物資源調査開発総局)発行の活断層図(Emre et al., 2013)。
図2 Mw7.8の地震に伴う地表地震断層と左横ずれ変位量。
基図は、トルコ地図総局(HGM)が撮影した航空写真。
赤矢印は地表地震断層が通過する位置。
黄色矢印は横ずれ変位量を計測した際の基準となる地物(土地境界、畦、水路)。
写真の位置は図1に示す。
図3 Mw7.5の地震に伴う地表地震断層と左横ずれ変位量。
基図は、トルコ地図総局(HGM)が撮影した航空写真。
赤矢印は地表地震断層が通過する位置。
黄色矢印は横ずれ変位量を計測した際の基準となる地物(土地境界、樹木列、道路)。
写真の位置は図1に示す。
参考情報
- Ambraseys, N.N. (1989) Temporary seismic quiescence: SE Turkey. Geophysical Journal International, 96 (2), p. 311–331.
- Duman, T.Y. and Emre, Ö. (2013) The East Anatolian Fault: geometry, segmentation and jog characteristics. Geological Society of London Special Publication, 372 (1), p. 495–529.
- Emre, Ö., Duman, T.Y., Özalp, S., Elmacı, H., Olgun, Ş. and Şaroğlu, F. (2013) Active Fault Map of Turkey with and Explanatory Text. General Directorate of Mineral Research and Exploration, Special Publication Series-30. Ankara-Turkey.
- HGM web site, https://www.harita.gov.tr (Accessed: February 20, 2023)
- Hubert-Ferrari, A., Lamair, L., Hage, S., Schmidt, S., Çağatay, N. and Avşar, U. (2020) A 3800 yr paleoseismic record (Lake Hazar sediments, eastern Turkey): Implications for the East Anatolian Fault seismic cycle. Earth and Planetary Science Letters, 538, doi.org/10.1016/j.epsl.2020.116152
- USGS web site, https://www.usgs.gov/news/featured-story/m78-and-m75-kahramanmaras-earthquake-sequence-near-nurdagi-turkey-turkiye (2023年2月20日確認)
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