第六報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(津波の浸水状況調査)

活断層・火山研究部門 谷川晃一朗・松本弾・嶋田侑眞

 1月19日~20日に石川県珠洲市の鵜飼漁港周辺、七尾市の能登島において、2024年能登半島地震により発生した津波の浸水状況の調査を行いました。
 珠洲市鵜飼漁港周辺は(図1)、今回の津波で最も広く浸水した地域で、最大で海岸から内陸約500mまで浸水があったことが空中写真判読から推定されています(国土地理院,2024)。現地の水田では、津波により内陸に運ばれたとみられるデブリ(津波による漂流物)が多数確認され(写真1)、調査地点周辺では約200m内陸まで分布が認められました。水田の中には多くの雑草が生えていましたが、そのほとんどが海側(東または東南東)に向かって倒れており、津波の戻り流れの影響によって倒れたものと推定しました。海岸沿いの集落周辺では、樹木や電柱など柱状の構造物に海藻などが残っており、構造物の陸側に引っかかっているものが多いことから、これらも戻り流れによって残されたデブリと考えられます(写真2)。樹木に残ったデブリや建物壁面に残されたウォーターマークから数地点で浸水深を測定した結果、それらの地表からの高さは約50~140cmでした(写真3)。
 七尾市能登島の北~東岸では4か所で津波の浸水状況を調査しました。能登島は珠洲市の飯田湾沿岸に比べ全体として津波の浸水範囲は小さく、いずれも海岸から数十メートル程度と推定されています(国土値地理院,2024)。現地では、海岸に面した水田で同じ方向に倒れた草やデブリなどが観察されました。一方で、浸水範囲が小さく、また海からの距離が近いため、今回の津波によるものか判断できないものもありました。

図1 能登半島北部沿岸海域の構造図(暫定版)。井上・岡村(2010)に加筆

図1 珠洲市の調査範囲(赤枠)と国土地理院(2024)による推定津波浸水域(青線で囲んだ水色の範囲)
(地理院地図に加筆)

写真1 水田上に散乱するデブリ

写真1 水田上に散乱するデブリ

写真2 見附島の対岸で見られた戻り流れによるデブリ

写真2 見附島の対岸で見られた戻り流れによるデブリ

写真3 建物壁面のウォーターマーク

写真3 建物壁面のウォーターマーク

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