現地調査報告その2「厚真町における表層崩壊」

2018年9月13日  更新
2018年9月11日  開設

活断層・火山研究部門:及川輝樹
茨城大学理学部:小荒井  衛

 厚真町桜ヶ丘付近の表層崩壊(図1)についての観察結果を速報する。
 多数の被害者がでた吉野地域に隣接する桜ヶ丘地域で発生した崩壊は、表層の土層中の降下テフラをすべり面としてシート状に崩壊した結果であることを確認した(写真1-4)。すべり面となったテフラ(軽石)は、地表からの深度、層厚、火山ガラスの屈折率などの特徴から約9000年前に噴出した樽前d降下火砕物であると考えられる。

写真1 桜ヶ丘付近の崩壊地全景写真1 桜ヶ丘付近の崩壊地全景

写真2 崩壊土塊写真2 崩壊土塊
崩壊土塊はシート状に滑り落ちたため樹木は立ったまま移動している。

写真3 崩壊地のすべり面に露出する軽石(樽前d)写真3 崩壊地のすべり面に露出する軽石(樽前d)

写真4 崩壊土塊の断面写真4 崩壊土塊の断面
道路に乗り上げた崩壊土塊の断面。崩壊土塊の断面から表層付近のテフラ層が乱されずに移動していることがわかる。下底の厚い軽石層は樽前d降下火砕物と考えられる。

図1 観察地点図1 観察地点
背景図は20万分の1日本シームレス地質図を使用。

更新履歴

  • 2018年9月13日:
    すべり面上の軽石の火山ガラスの屈折率を測定したところ、その軽石が樽前d降下火砕物であることが明らかになったため修正を行った。

【修正】

  • 修正(文章中):
    ・・・すべり面となったテフラは、地表からの深度、層厚や色調などの特徴とあわせて、中川ほか(2018)で報告されている周辺のテフラ層序を参考にすると、恵庭a降下軽石である可能性が高い。>・・・すべり面となったテフラ(軽石)は、地表からの深度、層厚、火山ガラスの屈折率などの特徴から約9000年前に噴出した樽前d降下火砕物であると考えられる。
  • 写真3
    修正(キャプション):崩壊地のすべり面に露出する軽石(恵庭a)>崩壊地のすべり面に露出する軽石(樽前d)
  • 写真4
    修正(写真中):降下軽石層(恵庭a ?)>軽石層(樽前d)
    修正(キャプション):・・・下底の厚い軽石層は恵庭a降下軽石と考えられる軽石層。>・・・下底の厚い軽石層は樽前d降下火砕物と考えられる。

【削除】

  • 文献
    中川ほか(2018)南西北海道,石狩低地帯におけるテフラ層序学.南西北海道,石狩低地帯におけるテフラ層序学.地質学雑誌,124,473-489.

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター