北海道厚真町における支笏降下火砕堆積物の特性
2018年9月7日
平成30年北海道胆振東部地震では、厚真町を中心に斜面崩壊が多発している。主な崩壊源となっているのは、地表付近に分布する支笏第1降下火砕堆積物(以下、Spfa-1)であるので、その粒度特性と粒子密度について紹介する。
Spfa-1は、約4万年前に起きた支笏カルデラ形成噴火で噴出したもので、支笏火砕流に先行して発生した大規模なプリニー式噴火の産物である。厚真町周辺では4 m前後の厚さで堆積している(図1)。
図1 Spfa-1の等層厚線(ピンク部は支笏火砕流堆積物)
等層厚線は山縣(2000)を修正。基図は地理院地図から出力。
Spfa-1は未固結の軽石(径2 cm以下)と粗粒の火山灰からなり、細粒の火山灰を全く含んでいない。すなわち、極めて淘汰の良い(粒径の揃った)堆積物である(図2)。平均粒径は-1.22φ(2.33 mm)から-0.77φ(1.71mm)で下位から上位に向かって粒径がやや大きくなる。
注:φスケールは(1/2 mm)nのn乗で示され、例えば-3.0φが8 mm、0φが1 mm、+3.0φが0.125 mmとなる。
Spfa-1の主体を占める軽石の特徴は、その乾燥密度が約0.5 g/cm3と非常に小さいことで(図3)、この値は国内に分布する軽石でも最も軽い値となっている(多くの軽石は1.0 g/cm3前後)。従って、Spfa-1の密度は、これの上に重なった土壌層(概ね1.5〜2.0 g/ cm3)よりも小さく、つまり軽いものの上に重いものが重なった不安定な構造であったとみられる。
参考文献
山縣耕太郎, 2000. 支笏火山40ka噴火の規模に関する検討. 上越教育大学研究紀要, 445-460.
更新履歴
- 2018年9月10日
- 8行目:0φが0 mm→0φが1 mmに修正。
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