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地質調査研究報告 Vol.52 No.4/5 (2001)
表紙
有珠火山2000年噴火による西山麓隆起中心付近の正断層群で著しく変形した国道230号線 : 西南北海道の有珠火山は西山麓で2000年3月31日13時7分にマグマ水蒸気爆発による噴火を開始した。西山麓周辺では3月31日から4月の期間に30以上の噴火口が形成された。高粘性のデイサイトマグマが西山麓の地下に貫入したため、隆起中心は最大約60m隆起し、小規模な潜在溶岩ドームが形成された。隆起中心付近では、4月から7月の間に西北西-東南東方向に伸びる地溝状の多数の正断層群が発達した (本号羽坂ほか論文参照)。そのため、虻田町市街地と洞爺湖温泉街を結んでいた国道230号線は写真のように著しく変形した道路の表面は、噴火口からの噴出物や泥流堆積物によって覆われている。写真は地溝状正断層群の中央付近から北側の南落ち正断層群を見た状況である。写真右上部の白煙は西山麓の火口群の中で最も活発な N-B 火口からの噴煙である。
(2000年11月12日撮影、宝田晋治)
目次
タイトル | 著者 | |
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口絵 | ||
有珠火山2000年噴火の空撮写真 〜4月1日に次々と形成された火口群〜 |
東宮昭彦 ( I - II ) | 52_04_g1.pdf [978 KB] |
有珠火山2000年噴火で生じた火口群周辺の状況 | 宝田晋治・宮城磯治・東宮昭彦 ( III - VI ) | 52_04_g2.pdf [2,415 KB] |
論文 | ||
まえがき | 有珠火山噴火対応本部 (133-134) | 52_04_01.pdf [163 KB] |
地質調査所による有珠火山2000年噴火の観測研究 | 磯部一洋・太田英順・宇都浩三・伊藤順一・篠原宏志・斉藤元治 (135-141) | 52_04_02.pdf [1,141 KB] |
有珠火山周辺における地下水観測 | 佐藤 努・松本則夫・高橋 誠・太田英順・松島喜雄・秋田藤夫・柴田智郎・鈴木敦生 (143-148) | 52_04_03.pdf [1,465 KB] |
有珠火山地域における高分解能空中磁気探査(序報) | 大熊茂雄・中塚 正・森尻理恵・牧野雅彦・内田利弘・小川康雄・高倉伸一・松島喜雄 (149-154) | 52_04_04.pdf [2,514 KB] |
有珠火山2000年噴火の山体変動 -北東山麓割れ目群の変位およびセオドライトによる北麓、西麓の観測結果- |
羽坂俊一・西村裕一・宝田晋治・高橋裕平・中川 充・斎藤英二・渡辺和明・風早康平・川辺禎久・山元孝広・廣瀬 亘・吉本充宏 (155-166) | 52_04_05.pdf [8,957 KB] |
有珠火山2000年噴火の降灰と火口近傍の状況 | 宝田晋治・吉本充宏・北川淳一・平賀正人・山元孝広・川辺禎久・高田 亮・中野 俊・星住英夫・宮城磯治・西村裕一・三浦大助・廣瀬 亘・石丸 聡・垣原康之・遠藤祐司・八幡正弘・野呂田 晋・新井田清信・石塚吉浩・工藤 崇・相沢幸治・本間宏樹・江草匡倫・石井英一・高橋 良 (167-179) | 52_04_06.pdf [17,464 KB] |
有珠火山2000年噴火の噴煙観測装置 | 宝田晋治・西 祐司・高田 亮・松島喜雄・風早康平 (181-187) | 52_04_07.pdf [7,743 KB] |
ASTERによる有珠火山2000年噴火に伴う降灰域の観測 | 浦井 稔・川辺禎久・伊藤順一・高田 亮・加藤雅胤 (189-197) | 52_04_08.pdf [2,197 KB] |
有珠火山2000年噴火の噴煙高度変化速報 (4月6日-13日) | 高田 亮・宝田晋治・山元孝広・松島喜雄・西 祐司・廣瀬 亘・垣原康之・田島 淳・遠藤祐司・野呂田 晋・北海道大学理学部 (199-206) | 52_04_09.pdf [3,200 KB] |
有珠火山2000年噴火に伴う山体変動観測結果 (速報) | 斎藤英二・西村裕一・渡辺和明・宝田晋治・宇都浩三・風早康平・高橋裕平・羽坂俊一 (207-214) | 52_04_10.pdf [3,588 KB] |
有珠火山2000年3月31日噴火とその本質物 | 東宮昭彦・宮城磯治・星住英夫・山元孝広・川辺禎久・佐藤久夫 (215-229) | 52_04_11.pdf [3,510 KB] |
有珠火山2000年噴火でのマグマ水蒸気爆発と火砕流到達域予測 | 山元孝広 (231-239) | 52_04_12.pdf [3,250 KB] |
有珠火山の山体崩壊による洞爺湖の津波シミュレーション | 佐竹健治 (241-244) | 52_04_13.pdf [1,393 KB] |
要旨集
地質調査所による有珠火山2000年噴火の観測研究
磯部一洋・太田英順・宇都浩三・伊藤順一・篠原宏志・斉藤元治
有珠火山2000年噴火は、2000年3月31日に北西山麓におけるマグマ水蒸気爆発によって開始された。多数の小火口が形成された後、その山麓に潜在溶岩ドームが成長した。本噴火の発生により1万6千人以上が避難し、このうち8千人あまりの住民は1ヶ月以上にも及ぶ避難を強いられた。政府は火山活動の総合的緊急監視観測体制の整備計画を実施した。地質調査所では、1) 地殻変動・噴煙の監視、2) 火山活動の地質学的観測・噴出物の岩石学的観察、3) 空中磁気探査を分担・実施した。本稿は当所による有珠火山2000年噴火の観測研究の概要報告である。
有珠火山周辺における地下水観測
佐藤 努・松本則夫・高橋 誠・太田英順・松島喜雄・秋田藤夫・柴田智郎・鈴木敦生
有珠火山2000年噴火に伴って著しい水位変動が観測された観測井 (DT1とDT2) において、水位、水温、電気伝導率の観測を開始した。特に DT1 では、噴火の1日前の3月30日に毎分400リットルを越える地下水の自噴が起きている。噴火後、DT1 と DT2 の水位は徐々に低下した。DT1 の水位は10月の時点でもまだ低下しているが、DT2 では7月に元のレベルに落ち着いた。水温と電気伝導率には顕著な変化は観測されていない。
有珠火山地域における高分解能空中磁気探査 (序報)
大熊茂雄・中塚 正・森尻理恵・牧野雅彦・内田利弘・小川康雄・高倉伸一・松島喜雄
有珠火山地域において、2000年有珠火山噴火に関連して当該地域の地下構造を調査する目的で、ヘリコプターを用いた高分解能空中磁気探査を実施した。探査飛行は、対地150m一定高度で、200m間隔の南北方向の主測線と1000m間隔の東西方向の交差測線で行った。観測データを処理し、平滑化した観測面上での地磁気異常分布を求めた後、各種フィルター図を作成した。本論では、調査の詳細と地磁気異常分布の特徴について報告する。
有珠火山2000年噴火の山体変動
-北東山麓割れ目群の変位およびセオドライトによる北麓、西麓の観測結果-
羽坂俊一・西村裕一・宝田晋治・高橋裕平・中川 充・斎藤英二・
渡辺和明・風早康平・川辺禎久・山元孝広・廣瀬 亘・吉本充宏
有珠火山2000年噴火では、山麓に多くの割れ目群が形成された。3月30日からは有珠火山北東麓の温泉地区でも多くの雁行状割れ目が見つかった。3月31日、4月1日、4月2日に割れ目群の水平変位、開口幅、落差を計測した。その結果、3月31日13時7分の噴火開始後、変位速度が大きく減少したことが明らかになった。有珠火山北麓12ヶ所の目標点を定めて、4月5日からセオドライト観測を行った。その結果、4月6日までは北麓全体で北側へせり出すような水平変動が観察できた。4月10日ごろには、北麓の変動域が北西麓の洞爺湖温泉周辺に限られるようになり、4月25日頃には洞爺湖温泉周辺の水平変動はほぼ停止した。洞爺湖温泉西の洞爺湖温泉中学校は4月5日〜25日の間に約1.6m北側へせり出した。西麓8ヶ所の目標点を定めて、4月13日から地溝状の正断層群が発達した隆起中心域とその周辺のセオドライト観測を行った。その結果、隆起中心から西南西500mの地点では6月下旬に隆起がほぼ停止し、隆起中心付近では7月下旬に隆起がほぼ停止したことが明らかになった。隆起中心近くの目標点は、4月中旬で90cm/日〜30cm/日の速度で隆起したが、次第に隆起速度が減少し、7月下旬にはほぼ隆起が停止した。4月13日〜7月下旬の期間に隆起中心付近の目標点は約10m隆起し、有珠火山南西の観測点から見て約1m〜3.5m西に移動した。
有珠火山2000年噴火の降灰と火口近傍の状況
宝田晋治・吉本充宏・北川淳一・平賀正人・山元孝広・川辺禎久・
高田 亮・中野 俊・星住英夫・宮城磯治・西村裕一・三浦大助・
廣瀬 亘・石丸 聡・垣原康之・遠藤祐司・八幡正弘・野呂田 晋・
新井田清信・石塚吉浩・工藤 崇・相沢幸治・本間宏樹・江草匡倫・
石井英一・高橋 良
有珠火山2000年噴火で初期に発生した4つの噴火の降灰分布図を作成した。また、面積試料を採取し、等重量線図を作成した上で降灰量を算出した。一連の噴火の中最大規模であった3月31日13時7分〜16時頃の噴火による降灰分布は、N65°E〜N30°Eの方向が主軸であり、火口から50km以上遠方まで追跡できた。降灰量 124,000トンとなった。4月1日12時〜4月2日12時の間の噴火による降灰分布は、N145°Eの方向が主軸であり、火口から25km以上遠方まで追跡できた。降灰量は 21,000トンとなった。4月2日14時〜14時10分の小噴火による降灰は、N110°Eの方向主軸であった。降灰量は450トンとなった。4月4日16時〜18時の降灰は主軸がN10°W〜N8°Eの方向であり、火口から30km以上遠方まで追跡できた。降灰量は49,000トンとった。また、西山西麓の噴出口近くで3月31日の噴出物の記載を行った。西山西麓の N-B 火口と金比羅山北西麓の K-B 火口の水蒸気爆発の状況、周囲の堆積物の状況を記した。さらに、洞爺湖温泉街などで堆積物の記載を行った。
有珠火山2000年噴火の噴煙観測装置
宝田晋治・西 祐司・高田 亮・松島喜雄・風早康平
有珠火山2000年噴火の噴煙観測を行うため、長期間野外で映像記録を行うことができる噴煙観測装置を構築した。噴煙観測装置は2つのシステムからなる。1つは、遠隔操作により首振りやズーム可能な高性能カメラと、リアルタイムの噴煙映像を遠隔地のパソコン上で見ることができる画像サーバーからなるシステムである。もう1つは、日中5分おきに自動的に噴煙の静止画像を撮影し、一定時間ごとにインターネット用WWWサーバーに転送するシステムである。2000年6月4日から、この噴煙画像観測装置を洞爺湖北西のサイロ展望台に設置し、半年以上に渡って噴煙静止画像の撮影を行った。すべての静止画像は、地質調査所のウェブサイト上で公開されている。これらの画像から、噴煙の長期的な状態変化を知ることができる。
ASTERによる有珠火山2000年噴火に伴う降灰域の観測
浦井 稔・川辺禎久・伊藤順一・高田 亮・加藤雅胤
有珠火山2000年噴火に伴う降灰域は、地上調査では完全に追跡できない地域の降灰域も含めて、ASTERによって取得された画像に黒い帯として鮮明に捉えられた。ASTERのバンド3の反射率が0.6以下の地域は8g/m²以上の降灰域とほぼ一致した。現地で採取した火山灰資料について、可視〜短波長赤外域における水分を制御した反射スペクトル測定を実施した。その結果、火山灰の反射スペクトル測定を基に構築された火山灰反射モデルを用いて反射率の低下から雪原に堆積した火山灰量を推定できる可能性を示した。
有珠火山2000年噴火の噴煙高度変化速報 (4月6日-13日)
高田 亮・宝田晋治・山元孝広・松島喜雄・西 祐司・廣瀬 亘・
垣原康之・田島 淳・遠藤祐司・野呂田 晋・北海道大学理学部
有珠火山2000年噴火で活動した西山西麓麓の火口群と金比羅山西麓の火口群の噴煙の様子について、火口群から7-8 km離れたサイロ展望台から遠望観測を行った。本論では、このうち4月6日-13日の噴煙高度の時間変化を報告する。4月の噴煙の進化を記載すると次の4ステージに分けられる。(ステージ1) 3月31日の噴火。(ステージ2) 4月1日から4月7日まで。火山灰を遠方まで降下させる黒色火山灰プリューム噴火で特徴づけられる。この期間では、噴火の間隔や規模に関する規則性はない。各火山灰プリュームの高度は、4月7日まで約3000mから1000mに減少していった。(ステージ3) 4月8日から4月10日まで。金比羅山火口群での500m程度の高さの泥水ジェットの出現が特徴である。泥水ジェットは、15-40分間隔に間欠的に上昇し、停止高度で水蒸気と泥水に分離した。泥水ジェットの活動にはパルス状のリズムがあり他の水蒸気プリュームのリズムとの顕著な相補性がみられる。(ステージ4) 4月11日以降。両火口群とも水蒸気プリュームが卓越する。4月11日は、金比羅山火口群では、水蒸気プリュームのみが、ステージ3と同規模の時間間隔でパルス状に上昇した。4月12日以降、時間とともに水蒸気プリュームはより連続性が高くなった。この期間の初期では、水蒸気プリュームのリズムの相補性もみられたが、時間が経つにつれ、連続性が高くほとんど変動が見られなくなる。噴煙の高度変化の相補性は、熱水の余剰圧などを媒介とした力学的相互作用が火口間に働いていることを暗示する。
有珠火山2000年噴火に伴う山体変動観測結果 (速報)
斎藤英二・西村裕一・渡辺和明・宝田晋治・宇都浩三・風早康平・
高橋裕平・羽坂俊一
2000年3月31日に噴火を開始した有珠火山の火山活動推移予測のため、地殻変動の著しい西側山麓において、4月12日から自動光波測距システムを用いた斜距離変化に基づく地殻変動観測を開始した。測定開始初期の斜距離短縮速度は最大で約6cm/日であったが、周辺部から活動中心域に向かって狭まりつつ顕著に減衰し、7月末までにはほぼ停止した。その後、多くの測線で微小な伸張傾向に転じている。7月末までの変化は、概ね指数関数的である。今後の詳細な解析等に資するため、9月末までの日平均データを公表する。
有珠火山2000年3月31日噴火とその本質物
東宮昭彦・宮城磯治・星住英夫・山元孝広・川辺禎久・佐藤久夫
有珠火山2000年噴火では山麓でマグマ水蒸気爆発/水蒸気爆発が繰り返し起こった。その中で、特に3月31日に起こった最初の爆発が最大かつ最も重要なイベントであった。そこで、このときの噴出物に特に着目して岩石学的・地球化学的分析を行なった。そして、雑多な構成物からなるマグマ水蒸気爆発の噴出物の中から「本質物質」を見つけだすとともに、噴火のメカニズムに関する考察を行なった。まず、3月31日の噴出物の中には最大粒径2cm程度の軽石 (Us-2000pm) が含まれていた。この軽石は、非常に新鮮であること、磁鉄鉱斑晶の化学組成が以前噴出した軽石のものとは異なること等から判断して、今回活動したマグマに由来する本質物質である。次に、3月31日火山灰の中には、多数の微結晶と球状気泡で特徴付けられる新鮮な火山ガラス (Us-2000g) がおよそ半分含まれていた。その岩石学的特徴が Us-2000pm と一致することから、この火山ガラスも本質物質である。3月31日のマグマ水蒸気噴火は、(1) およそ半分に達する多量のマグマ物質が噴出物中に含まれていたこと、(2) 真っ黒な噴煙が継続的に高空まで噴き上がっていたこと、(3) マグマが地下水に接触するよりも深いところで既に破砕が始まっていたと考えられること、などから、水蒸気プリニー式噴火であった可能性がある。2000年噴出物とこれまでの噴出物とを比較することにより、2000年に活動したマグマの位置付けについても考察した。斜長石斑晶の zoning profile、酸素同位体比などから判断して、2000年マグマも1663年以来一連のマグマによってもたらされたと考えられる。
有珠火山2000年噴火でのマグマ水蒸気爆発と火砕流到達域予測
山元孝広
有珠火山2000年噴火は、3月31日に北西山麓で起きたマグマ水蒸気爆発で始まった。この最初の噴火では高度が3200mに達する暗灰色の噴煙が上昇し、デイサイト軽石を含んだ約10万トンの火砕物が放出されている。一般にマグマ水蒸気爆発は破砕されたマグマと地下水とのダイナミックな混合により発生する現象で、その混合物が噴煙として浮力を得て安定に上昇するためには、水/マグマ混合質量比が0.2以下でなければならない。3月31日噴火はガス成分に富むマグマ頭部からもたらされたもので、減圧によるマグマの発泡破砕が混合比0.2以下の効果的なマグマ-水接触反応を起こした可能性が大きい。4月1日以降は次第に噴火が穏やかになるとともに、デイサイトマグマの貫入による北西山麓の隆起が顕著になってきた。4月上旬では噴煙高度が1000m以下の黒色のプリューム状の噴煙やコックステイルジェットの活動を火口位置を移動させながら間欠的に繰り返していた。また、この時期の噴出物には本質物がほとんど含まれていない。地下浅所に貫入してきたマグマの表面は安定化しており、効果的なマグマと水との混合が起きにくくなっていた。湿った火砕物が弾道放出され るコックステイルジェット噴火は、マグマ水蒸気爆発なら水/マグマの混合比が0.4よりも大きい領域、水蒸気爆発なら水/母岩の混合比が小さい領域での噴火に相当する。今回の噴火が始まると北西山麓に新たに形成された火口群でのマグマ水蒸気爆発に伴う火砕流の発生が懸念され、その到達範囲予測図をエネルギーコーンモデルを用いて作成した。マグマ水蒸気爆発では水/マグマ混合質量比が0.2〜0.4の領域では、混合物の温度が低く不安定な噴煙がつくられやすい。モデルでは火砕流の動摩擦係数を小規模火砕流の平均値である0.25に固定している。一方、噴煙柱崩壊高度については地下水と反応したマグマの質量の関数として別に求めた。3月31日噴火の噴出量では、もしこの噴煙が崩壊したとすると火口から1〜2km流走する火砕流を生じた可能性があった。
有珠火山の山体崩壊による洞爺湖の津波シミュレーション
佐竹健治
有珠火山の山体崩壊によって洞爺湖で発生する津波のシミュレーションを行った。崩壊した山体の流入開始後5分以内で津波第1波は対岸に達する。金比羅山 (体積0.025km³) が崩壊し、その全体積が2分間で洞爺湖に流入したとき、津波の高さは月浦付近で最大15m、北西岸や南東岸の壮瞥付近で10m以上、北岸の洞爺町や東岸の仲洞爺で5m程度となる。継続時間が5分間だと月浦で5m、他の湖岸で2m程度と小さくなる。四十三山 (体積0.013km³) の崩壊の場合、継続時間が2分間だと、月浦・壮瞥温泉・壮瞥滝付近で10m近く、洞爺町や仲洞爺では2-3mとなる。継続時間が5分間の場合は、月浦では5m程度だが、他の湖岸では1-2m程度と小さくなる。北外輪山の崩壊など、さらに大きな体積が洞爺湖に流入すると、湖面水位が恒久的に上昇し、それによる被害が大きくなるであろう。
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