火山研究情報 トップへ
火山ガス災害 (2010年6月20日) が発生した
酸ヶ湯温泉付近の地質について
平成22年 6月 22日 開設
研究情報
地質図
産総研地質調査総合センターでは、今回の火山ガス災害が発生した地域を含む 5万分の1 地質図幅「八甲田山」 を2004年に発行しています (宝田・村岡、2004)。
宝田・村岡 (2004) 5万分の1 地質図幅「八甲田山」の事故現場付近 (赤い丸の内部)。 赤点の模様の部分は、随所で熱水や火山ガスの噴出が見られる熱水変質帯を示す。 基図となっている地形図は国土地理院発行5万分の1地形図「八甲田山」。 |
凡例 |
八甲田火山は、約100万年前〜30万年前に活動した南八甲田火山群と、約40万年前以降現在まで活動を続ける北八甲田火山群からなっています。各火山群は複数の小規模な成層火山体でできています。これらのうち、酸ヶ湯に近い北八甲田火山群の大岳火山の活動が最も新期まで継続しており (工藤ほ か、2004)、6000年前〜1500年前の間に5回の噴火を起こしています (Hk-1〜Hk-5、工藤ほか、2003)。
今回火山ガス災害を起こした酸ヶ湯温泉付近は、随所で熱水や火山ガスの噴出が見られます。このため、この付近では、十和田火山噴出物 (Th, Tk) に覆われる大岳火山の溶岩流 (Ho1〜Ho3) は著しい熱水変質を受けています。酸ヶ湯温泉近くの地獄沼は、西暦1200〜1600年代に3回の小規模な水蒸気爆発 (Hk-J1〜J3、工藤ほか、2000) を起こした火口です。
活火山は、今回の事故のような災害をもたらす負の面があり、十分な注意が必要ですが、温泉や美しい景観をもたらしてくれる良い面があり、私たちは火山のことをよく知って、うまくつきあっていくことが重要です。
地質情報研究部門 宝田晋治・工藤 崇
文献
- 工藤 崇・奥野 充・大場 司・北出優樹・中村俊夫 (2000) 北八甲田火山群, 地獄沼起源の噴火堆積物 -噴火様式・規模・年代-. 火山, 45, 315-322.
- 工藤 崇・奥野 充・中村俊夫 (2003) 北八甲田火山群における最近6000年間の噴火活動史. 地質学雑誌, 109, 151-165.
- 工藤 崇・宝田晋治・佐々木実 (2004) 東北日本, 北八甲田火山群の地質と火山発達史. 地質学雑誌, 110, 271-289.
- 宝田晋治・村岡祥文 (2004) 八甲田山地域の地質. 地域地質研究報告 (5万分の1地質図幅), 産総研地質調査総合センター, 86p.