地質調査研究報告 トップへ

地質調査研究報告 Vol.63 No.11/12 (2012)

表紙

道路工事で現れた新期大島層群テフラ

道路工事で現れた新期大島層群テフラ伊豆大島南東部の道路新設工事に伴い出現した新期大島層群テフラ露頭。ここでは新期大島層群のN3期以降の降下テフラがすべて露出していた。この後、法面緑化され露頭は現在ない。ほぼ中央の厚く黒い降下スコリアがY4(AD1421年?)の降下スコリア。(2009年撮影)

(写真・文:川辺禎久)

目次

全ページ PDF : 63_11_full.pdf [10.2MB]

タイトル著者PDF
論文
新たに得られた伊豆大島火山新期大島層群噴火堆積物の放射性炭素年代 川辺禎久 63_11_01.pdf [1.7MB]
日本列島における年代未詳岩石のK-Ar年代測定
―地質図幅作成地域の火山岩・深成岩 (平成23年度版)―
松本哲一・中村仁美・廣田明成・星住英夫・高橋   浩・中野   俊・中野聰志 63_11_02.pdf [2.8MB]
徳島県北川地域の四万十帯付加コンプレックスから産出した白亜紀放散虫化石 原   英俊・原   康祐・栗原敏之 63_11_03.pdf [4.4MB]

 

要旨集

新たに得られた伊豆大島火山新期大島層群噴火堆積物の放射性炭素年代

川辺禎久

伊豆大島火山新期大島層群のいくつかの部層について、加速器質量分析法による14C年代測定を行った。山頂カルデラを形成したと形成したと考えられているS2期年代は1780±50 yBPの年代値を示し、これまで考えられていたより200年から300年古い年代値を示した。N4期も同様に200年から100年ほど古い値を示す。それより新しいN1期、Y6期、Y5期、Y4期、Y2期は、これまでの推定年代、歴史噴火記録と整合的な値が得られた。S2期、N4期の年代がより古くなったために、S期からN期にかけてのテフラ噴出量から見たマグマ噴出率は、これまでの推定より小さくなった。それでもY期噴出率の約2倍の噴出率である。

日本列島における年代未詳岩石のK-Ar年代測定
―地質図幅作成地域の火山岩・深成岩 (平成23年度版)―

松本哲一・中村仁美・廣田明成・星住英夫・高橋   浩・中野   俊・中野聰志

産業技術総合研究所の陸域地質図プロジェクトで作成される地質図幅の正確さを向上するため、平成20~23年度内に10個の火成岩試料についてK-Ar年代測定を実施した。これらの年代測定試料のうち、5個の火山岩試料については、結晶片を可能な限り除去した石基濃集フラクションを年代測定に用いた。一方、5個の深成岩試料については、黒雲母及び普通角閃石を分離・精製したフラクションを用いた。K-Ar年代が得られた試料ごとに、岩石名と簡単な記載、産地、試料提供者、周辺の地質状況、K-Ar年代、分析データ、測定結果の地質学的意義を記述した。

徳島県北川地域の四万十帯付加コンプレックスから産出した白亜紀放散虫化石

原   英俊・原   康祐・栗原敏之

徳島県北川地域、四万十帯付加コンプレックスの泥質岩から産出した白亜紀放散虫化石を報告する。オソ谷ユニットの赤色泥岩及び灰色泥岩からは、それぞれアルビアン期後期~セノマニアン期及びセノマニアン期後期を示す放散虫化石群集が得られた。谷山ユニットの黒色泥岩からは、チューロニアン期を示す放散虫化石群集が得られた。今回のデータ及び既存データから、オソ谷ユニットはチューロニアン期~コニアシアン期前期の付加年代を、谷山ユニットはチューロニアン期~サントニアン期の付加年代を示すことが明らかとなった。北川地域から新たに産出した放散虫化石は、四国東部の白亜紀四万十帯付加コンプレックスの年代層序を構築するために重要である。