地質調査の世界

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地質調査の世界

野外調査 −Field Survey−

地質図を作成するには、多くの調査・研究の過程が必要です。特に、野外での現地調査 (地質調査) が不可欠です。しかし、地質調査といっても、なじみのない方がほとんどでしょう。こちらには野外調査の簡単な解説を置きました。その専門的な世界を触れてみてください。

専門用具

図:地質調査の世界

地質調査にはしばしば専門の用具が使われます。用具や装備は調査の目的により変化し、また個人差もありますが、ここでは、比較的一般的なものを紹介します。

石はどこに

図:地質調査の世界

日本では一般に地表は土や植生、またはコンクリートなどの人工物に覆われており、基盤となる石や地層はその下に隠れています。そんな中で、石や地層が現れているところを露頭といいます。

野外調査 −露頭の謎解き−

図:地質調査の世界

実際の石や地層の産状や、調査風景を紹介します。さまざまな 露頭 からいろいろな情報を引き出し、データを蓄積し、地域の地質を解明していきます。

この動植物に注意 (おまけ)

図:地質調査の世界

地質調査でときに遭遇する危険動植物を紹介します。これらの知識は、アウトドア・レジャーなどでも参考になることもあるでしょう。

実際の調査・研究のスタイルは、研究者によって異なっているのが普通です。また、装備や手段は時代によっても変わってきます。

地質図を描く

   地質図では表土や植生がない状態の、地層や岩石の分布を表します。しかし、実際には土や草木に覆われて、全面的には石や地層を観察できません。では、限られた情報からどのように地質図をつくるのでしょうか。

   地層には広い範囲に連続するものがたくさんあります。それらは、隣り合うルートで同じ地層が確認されれば、その間にも連続して分布していると推定します。なるべく多くのルートを調査し、連続する地層を追跡します。

Gongenyama1 Gongenyama2 Gongenyama3

   こうして野外調査を続け、データを増やしていくと、最初は点にすぎなかった露頭の情報も、調査が進めば線状につながってきます。地質図の作成では、このように情報を点から線、線から面へと広げていきます。


1) 点から線へ -ルートマップ-
Shiibamura1

    それぞれの露頭での観察結果は、フィールドノートと地図に記載されます。通常、野外調査では、できあがりの地図の縮尺よりも精度のよい地図を使って歩きます。時には地図に出ていない道を書き加える必要もありますし、位置を正確に知るためにはその方が都合がよいからです。これをルートマップと呼んでいます。

    ただし、精度のよい地図は枚数も必要になってしまうので、野外から戻ったときに完成時の縮尺により近い地図にデータを書き写します。このとき、統一した色をつけたり、サンプルポイントを書き込んだりして全体の地質の様子を把握するのに利用します。

2) 線から面へ -地質図の作成-
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   地質調査中は、調査の済んだ地点から次第にルートマップに書き込まれていきます。しかし、植生や土壌がある限り、地層の露出には限界があり、 地域を全面的に調べ尽くすのは困難です。また、そこで、どうしても調査できない場所は、最後にはさまざまな状況証拠から推量して地質図を完成させます。

   例えば、深い海で堆積した地層は、通常広い分布を示します。隣り合うふたつの谷でそのような地層が確認されれば、その間の尾根にもその地層が 分布していると考えるのです。反対に続くはずの地層が隣り合うルートに現れないときには、断層などの何らかの原因が考えられます。このようにして、地層の 境界 (界線) をルートマップ上に書き入れていきます。

Shiibamura3

    更には過去の研究報告がある場合はそれを参考にして、継承するところ、直すところを考えながら、ようやくひとつの区割りの地質図が完成します。

   こうした一連の過程の中で、過去の研究とは異なる事実を見いだしたり、新しい発見があったりします。それらは地質図とは別に、地質図の作成と並行して学会や専門誌に研究報告として公表され、社会の知的財産として蓄えられていきます。


室内分析

室内分析では野外から持ち帰ったサンプルに含まれる多くの情報を解明します。分析結果をもとに、新たな野外調査の計画を立てることもあります。

薄片観察

薄片観察

岩石を顕微鏡で観察するために、「薄片」と呼ばれるプレパラートを作成します。

化学分析

化学分析

岩石や鉱物の詳しい性質を調べるために、薬品や装置を使って分析します。

大型化石の鑑定

大型化石の鑑定

地層には肉眼でそれと分かる化石が含まれていることがあります。化石の種類から、地層ができた当時の年代や環境が分かります。

微化石の鑑定

微化石の鑑定

地層には肉眼では見えないほど小さな化石が含まれていることがあります。このような化石を「微化石」と呼んでいます。

放射年代分析

放射年代分析

岩石の正確な年代を知るための分析です。




* 本ページを作成するにあたり、基図として国土地理院発行の数値地図50mメッシュ (標高)、2万5千分1地形図「上椎葉」及び5万分1地形図「椎葉村」を使用しました。