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地質調査研究報告 Vol.75 No.2(2024)
表紙
南部北上帯下部石炭系,尻高沢層の珪長質凝灰岩と鬼丸層のサンゴ化石
南部北上帯の下部石炭系は,下部~中部では苦鉄質及び珪長質火砕岩を伴う砂岩・泥岩を主体とし,上部ではサンゴ化石を含む石灰岩を主体とする.前者は岩相や層厚の地域差が大きいが,後者は全域でほぼ類似した岩相を示す.右上写真は,下部石炭系下部の尻高沢層の珪長質凝灰岩(層厚約5 m)で砂質泥岩の上に累重する(場所は岩手県住田町世田米柏里).この凝灰岩中のジルコンから約340 Ma(ビゼーアン期前期)の年代が得られた(本号参照).左下写真は,下部石炭系上部の鬼丸層の石灰岩に特徴的なビゼーアン期後期の貴州サンゴ(Kueichouphyllum sp.)の化石である(場所は岩手県陸前高田市矢作町雪沢).レンズキャップの直径は4 cm.
(写真・文:内野隆之・川村寿郎)
目次
全ページ PDF : 75_02_full.pdf [16MB]
タイトル | 著者 | |
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概報 | ||
Zircon U–Pb age constraints on the history of Carboniferous volcanism in the South Kitakami Belt, Northeast Japan | KAWAMURA Toshio and UCHINO Takayuki | 75_02_01.pdf [13MB] |
研究者連携システム “Ask AnyOne” その設計・実装・将来展望 | 城 真範・宮川歩夢・藤田 司・大知正直・岩崎雄一・保高徹生 | 75_02_02.pdf[811KB] |
要旨集
ジルコンU–Pb 年代測定による南部北上帯の石炭紀火山活動期の制約
川村寿郎・内野隆之
南部北上帯の石炭系は多量の火山砕屑岩を含み,特にそれが多い下部では当時の激しい火山活動を物語っている.今回,石炭系の下部及び上部に挟在する珪長質凝灰岩について,ジルコンU–Pb 年代測定を行った.下部に関しては尻高沢層中部の粗粒凝灰岩を,上部に関しては木戸口層中部の紫色砂質凝灰岩を対象とした.測定の結果,前者からは339.5 ± 2.61 Ma(ビゼーアン期中期),後者からは313.6 ± 2.3 Ma(モスコビアン期前期)の年代が得られた.前者の年代は,尻高沢層が,これまでの化石産出と岩相層序対比で想定された年代(トルネーシアン期後期)よりも若くなることを示す.一方,後者の年代は,当該火山活動が石炭紀後期まで継続したことを確実にする.南部北上帯内における少量の石炭紀後期花崗岩類や最下部ペルム系の安山岩質凝灰岩の存在を考慮に入れると,同帯の火成活動は石炭紀前期で最も激しく,やや沈静化していくもののペルム紀前期まで長期にわたって継続したことが示唆される.
研究者連携システム “Ask AnyOne” その設計・実装・将来展望
城 真範・宮川歩夢・藤田 司・大知正直・岩崎雄一・保高徹生
本研究では,研究組織内での多様な専門性を持つ研究者間のコラボレーションを促進するための新しいシステム「Ask AnyOne」を提案する.このシステムは,研究者が自分の専門外の分野に関する質問を容易に行い,関連する専門家から迅速な回答を得ることを目的とし,新しい分野の研究に取り掛かる研究者の負担を最小限に抑え ることを目指すものである.本研究では,研究組織内で多様な専門性を持つ研究者間のコラボレーションの重要性と時間的・心理的コストを意識し,現存するシステムの問題点を改善する必要性に着目した.そこで,既存のシステムの問題点を分析し,質問と回答を通したコラボレーションに必要なシステムを設計した.その後,シス テムの小規模な組織での運用テストを通じて,その効果と有用性を検証した.特に,質問と回答の傾向を分析し,システムの有効性と今後の展望について考察した.このシステムは,研究者間のコミュニケーションと協力を容易にすることで,研究の質と効率を向上させる可能性を有している.
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