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地質調査研究報告 Vol.70 No.1/2(2019)
特集:微古生物学リファレンスセンター研究集会・放散虫研究集会合同大会論文集
表紙
様々な微化石~コノドント・有孔虫・珪藻・介形虫・放散虫~
微化石は肉眼では見分けることが難しい顕微鏡サイズの生物の化石である.炭酸カルシウムや珪酸といった鉱物質の骨格や殻が堆積物中に保存され,地層の形成年代や堆積環境を知るための手がかりとなる.本特集号には,様々な地質時代の様々な種類の微化石に関する最新の研究成果が収められている.その中から,コノドント,有孔虫,珪藻,介形虫から各1 種ずつ,放散虫から2 種を選んで表紙に顕微鏡写真を掲載した.
中央:Paragondolella bulgarica Budurov and Stefanov Group(コノドント,中期三畳紀), スケールは200 μm,立体視用ステレオ写真,Muto et al.(本号)より.
左上:Neogloboquadrina acostaensis (Blow)の左巻き型(有孔虫,中新世),スケールは100 μm,鈴木ほか(本号)より.
右上:Denticulopsis simonsenii Yanagisawa et Akiba(珪藻,中新世),スケールは10 μm,鈴木ほか(本号)より.
右:Calocycletta costata (Riedel)(放散虫,中新世),スケールは 100 μm,Kamikuri(本号)より.
下:Bicornucythere bisanensis (Okubo)(介形虫,更新世),スケールは100 μm,Ozawa and Tanaka(本号)より.
左:Trilonche cf. vetusta Hinde(放散虫,デボン紀~石炭紀),スケールは100 μm,内野・栗原(本号)より.
(文:本山 功・板木拓也)
目次
全ページ PDF : 70_01_full.pdf [191MB]
タイトル | 著者 | |
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巻頭言 | ||
微古生物学リファレンスセンター研究集会・放散虫研究集会研究成果特集号 | 本山 功・板木拓也 | 70_01_01.pdf [496KB] |
論文 | ||
Paleoenvironmental analysis from fossil ostracod assemblages of the Middle Pleistocene Naganuma Formation in the Sagami Group, central Japan | Hirokazu Ozawa and Gengo Tanaka | 70_01_02.pdf [2.3MB] |
宮城県仙台市北東部に分布する中新統の統合年代層序 | 鈴木拓馬・林 広樹・柳沢幸夫・藤原 治・檀原 徹 | 70_01_03.pdf [12MB] |
Conodont-based age calibration of the Middle Triassic Anisian radiolarian biozones in pelagic deep-sea bedded chert | Shun Muto, Satoshi Takahashi, Satoshi Yamakita, Katsuhito Soda and Tetsuji Onoue | 70_01_04.pdf [65MB] |
佐渡島,中新統鶴子層から得られた放散虫化石と堆積年代 | 川谷文子・指田勝男・上松佐知子・甲能直樹 | 70_01_05.pdf [1.3MB] |
Summer surface water polycystine radiolarians in the eastern margin of the Japan Sea | Naoto Ishida | 70_01_06.pdf [5.7MB] |
概報 | ||
根田茂帯根田茂コンプレックスの礫岩から見出された中期デボン紀~前期石炭紀放散虫化石 | 内野隆之・栗原敏之 | 70_01_07.pdf [11.5MB] |
高知県馬路地域,四万十帯白亜系付加コンプレックスのチャートから産する放散虫化石 | 原 英俊・原 康祐 | 70_01_08.pdf [4.6MB] |
総説 | ||
日本における過去20年間の新第三系放散虫化石層序学の進展 | 本山 功 | 70_01_09.pdf [1.7MB] |
資料・解説 | ||
Radiolarian assemblages from the lower to middle Miocene at IODP Site U1335 in the eastern equatorial Pacific | Shin-ichi Kamikuri | 70_01_10.pdf [56MB] |
Middle to late Miocene radiolarians from ODP Site 1021 in the eastern North Pacific | Shin-ichi Kamikuri | 70_01_11.pdf [59.5MB] |
Late Miocene polycystine radiolarians of the Japan Sea (IODP Exp. 346 Site U1425) | Kenji M. Matsuzaki and Takuya Itaki | 70_01_12.pdf [11.7MB] |
半永久的な保存や展示のための柱状堆積物試料の樹脂包埋法 | 久保田好美・田尻理恵 | 70_01_13.pdf [2.6MB] |
A report of Permian, Triassic, and Jurassic radiolarian occurrences from the Ashio terrane in the Hachioji Hills, eastern Gunma Prefecture, central Japan | Tsuyoshi Ito | 70_01_14.pdf [20MB] |
特別寄稿 | ||
20世紀後半における日本の中・古生代放散虫研究の進展 | 八尾 昭 | 70_01_15.pdf [590KB] |
放散虫化石の研究を始めた頃 | 水谷伸治郎 | 70_01_16.pdf [442KB] |
大阪微化石研究会と放散虫研究集会 | 竹村厚司 | 70_01_17.pdf [701KB] |
要旨集
相模層群長沼層(中部更新統)産の介形虫化石群に基づく古環境解析
小沢広和・田中源吾
本研究は,神奈川県に分布する相模層群長沼層産の海生介形虫化石群に基づき,海洋酸素同位体ステージ15(MIS 15)の約60万年前の古環境(水深,水温)を現生アナログ法(MAT)を用いて推定した.その結果,長沼層の古環境は,現在の瀬戸内海などの西南日本沿岸の水深25~41 mの海域に,最も類似することが明らかになった.これらの西南日本沿岸域の水温値 (夏:16~28℃,冬:6~11℃)を,現在の相模湾の水温データと比較したところ,夏の水温は水深30 m以浅では少なくとも2℃ほど高いが,40 m付近では現在とほぼ同じか2℃ほど低く,冬の水温は40 m以浅で少なくとも2℃ほど低いことが明らかになった.本研究は約60万年前(MIS 15)の日本列島沿岸浅海域における古水温の変動を,定量的に推定した初の研究例である.
宮城県仙台市北東部に分布する中新統の統合年代層序
鈴木拓馬・林 広樹・柳沢幸夫・藤原 治・檀原 徹
宮城県仙台市北東部には海成中部~上部中新統志田層群が広く分布し,下位より,入菅谷層,番ヶ森山層,青麻層,七北田層に区分される.このうち青麻層は海流堆積物を主体とし,軟体動物や海生哺乳類等の化石を多産することから,東北日本の古環境・古地理の変遷や古生物地理などの研究上重要である.本研究では,青麻層の模式地を含む仙台平野中部で浮遊性有孔虫及び珪藻化石層序を再検討し,あわせて凝灰岩のフィッション・トラック(FT)年代測定を行った.入菅谷層からはNPD5B帯に相当する珪藻化石が,青麻層からはN.16帯~N.17A亜帯最下部に対比される浮遊性有孔虫化石及びNPD5D帯に対比される珪藻化石が,七北田層からはNPD6A帯及びNPD6B帯に相当する珪藻化石が産出した.また,青麻層最上部の凝灰岩からは9.3±0.4 Ma,七北田層下部の凝灰岩からは7.6±0.7 MaのFT年代が得られた.これらの結果は相互に矛盾せず,また,周辺地域の中新統層序とも整合する.
コノドント生層序による中部三畳系アニシアン遠洋深海層状チャートにおける放散虫化石帯年代の再検討
武藤 俊・高橋 聡・山北 聡・曽田勝仁・尾上哲治
超海洋パンサラッサの遠洋域深海で堆積した層状チャートは,放散虫化石層序により年代が決められてきた.一方で, 三畳系の放散虫化石帯は国際基準の地質年代との厳密な対比には用いられない場合が多い.本研究は,放散虫化石帯が確立され,中部三畳系アニシアン階に対比されていた大分県津久見地域の網代島セクションと愛知県犬山地域の栗栖セクションの珪質粘土岩・層状チャートにおいてコノドント化石層序を検討した.結果,オレネキアン階の上部のNovispathodus brevissimus-Icriospathodus collinsoni帯とTriassospathodus homeri 帯,アニシアン階の下部のChiosella timorensis帯,アニシアン階の中部のParagondolella bulgarica帯,アニシアン階の上部のParagondolella excelsa 帯,アニシアン階の最上部からラディニアン階の最下部のParagondolella trammeri 帯が認識された.上記のコノドント化石層序との比較により,Sugiyama (1997, Bull. Mizunami Foss. Mus., vol. 24, p. 79–193)による放散虫化石帯の年代を再検討した.従来オレネキアン階に対比されていたTR1化石帯はオレネキアン階の上部からアニシアン階の中部に対比された. TR2A化石帯,TR2B化石帯,及びTR2C化石帯の下部はアニシアン階の中部に対比され,TR2C化石帯の上部とTR3A化石帯の下部はアニシアン階の上部に対比された.TR3A化石帯の上部とTR3B化石帯の下部はアニシアン階の最上部に対比される可能性が高いが,ラディニアン階の最下部に対比される可能性も否めない.
佐渡島,中新統鶴子層から得られた放散虫化石と堆積年代
川谷文子・指田勝男・上松佐知子・甲能直樹
新潟県佐渡島に分布する鶴子層は,主に下部の玄武岩と上部の泥岩からなる中期中新世の地層である.鶴子層は,堆積した当時に大規模な日本海の拡大がおきたことから佐渡島の地史や日本海の発達史を解明する手掛かりを持つと考えられる.本研究では,鶴子層の詳細な年代を検討するため,佐渡島南部に分布する露頭より泥岩試料と炭酸塩ノジュール試料を採取し,放散虫化石の抽出を行った.鶴子層の分布する3地点の試料より得られた放散虫化石に基づいて生層序学的検討を行った.その結果,鶴子層の年代は,地点1はEucyrtidium inflatumが産出することからE. inflatum Zone に相当する15.3–11.7 Maであると考えられる.地点2からは, E. inflatum, Lychnocanoma magnacornuta及びLychnocanoma kamtschaticaが産出した.これら3種の産出により,地点2の鶴子層はE. inflatum Zone(15.3–11.7 Ma)からL. magnacornuta Zone(11.7–9.1 Ma)に相当すると考えられる.L. kamtschaticaはこれまで北太平洋高緯度地域からしか報告がなかったが,今回この種の生息域が日本海に及んでいたことが初めて示された. 地点3の年代は,Cyrtocapsella tetraperaと Cyrtocapsella japonicaが比較的多く産出している点から,E. inflatum Zone のSubzone aかそれよりも古いと考えられる.
日本海東縁における夏季表層水の放散虫(ポリキスティナ)群集
石田直人
2014年8月の後半,日本海東縁に位置する山形県酒田市沖の表層水から放散虫(ポリキスティナ)群集を採取した.この群集は Spongosphaera streptacanthaが大多数を占め,少数のPseudocubus obeliscusとTetrapyle octacanthaを伴う.S. streptacanthaにはmain spineやspongiose layerに種内変異が認められ,これは殻成長の過程を反映したものと考えられる.main spineとspongiose layerの形態計測の結果は,この群集のS. streptacanthaの全てが成長途中の未成熟個体であることを示している.対馬暖流の強い影響下にあり,年最高水温に達していた採取地点の表層水では,S. streptacanthaが優占的に生育していたことが明らかとなった.
根田茂帯根田茂コンプレックスの礫岩から見出された中期デボン紀~前期石炭紀放散虫化石
内野隆之・栗原敏之
東北日本,北上山地に分布する根田茂帯根田茂コンプレックス綱取ユニットの礫岩の泥質基質あるいは泥岩偽礫から中期デボン紀最後期~前期石炭紀のどこかの年代を示す放散虫化石を発見した.過去の研究によって示された根田茂コンプレックスの前期石炭紀という付加年代は,海洋プレート層序の概念に則って解釈されたものであったが,本化石はその付加年代を補強し得るデータである.また,本化石は根田茂帯の陸源性砕屑岩からは2例目の報告であり,石炭紀付加体の分布は日本列島では根田茂帯のみであることからも,前期石炭紀の島弧海溝系のテクトニクスを考える上で重要な基礎データである.
高知県馬路地域,四万十帯白亜系付加コンプレックスのチャートから産する放散虫化石
原 英俊・原 康祐
四国東部の馬路地域には,四万十帯白亜系付加コンプレックスの谷山ユニット・日和佐ユニット・牟岐ユニットが分布する.谷山ユニットと牟岐ユニットは,砂岩,チャート及び玄武岩を含む混在岩(メランジュ)を特徴とする.これらのユニットのチャートから,放散虫化石を見出した.チャートの放散虫化石年代は,谷山ユニットではバレミアン期末~アプチアン期前半であるのに対し,牟岐ユニットではサントニアン期後半~カンパニアン期前半と異なる2つの年代が得られた.これらの年代は,四国東部の谷山ユニット及び牟岐ユニット相当層から,これまでに報告されているチャート年代の範囲に収まる.両ユニットに含まれるチャート年代の違いは,谷山ユニットと牟岐ユニットにて沈み込む海洋プレートが,古いイザナギプレートから海嶺を伴う若い海洋プレートへと変化したことを支持する.
日本における過去20 年間の新第三系放散虫化石層序学の進展
本山 功
本山(1999a,b)によるレビュー以降の本邦新第三系放散虫化石層序学における進展について考証を試みた.過去20年間を振り返ると,主要な進歩として,第一に,深海掘削コアに基づいて中部中新統にまで遡って古地磁気層序との直接対比がなされ,それによって化石帯と生層序イベントの数値年代が精度良く求められたことが挙げられる.第二に,北西太平洋,カリフォルニア沿岸海域,日本海などの異なる海域の地域的な放散虫化石層序の研究が進んだこと,そして,第三に,改訂された放散虫化石帯が陸上の新第三系セクションの対比に適用されるようになったことが挙げられる.これらの進歩とともに,分類学的研究により学名の整理や新種の記載がなされ,低次から高次分類群におよぶ分類体系の見直しも進められてきた.また,最近とくに日本周辺海域において第四紀放散虫化石帯の研究が活発化している点が注目される.
東赤道太平洋における統合国際深海掘削計画(IODP)U1335 地点の下部及び中部中新統から産出した放散虫群集
上栗伸一
東赤道太平洋における統合国際深海掘削計画(IODP)U1335地点の下部及び中部中新統から,78種のSpumellaria亜目及び105種のNassellaria亜目を含む合計183種の放散虫化石が産出した.その写真を18枚のプレートに示した.これらの分類群にはActinommidae科,Collosphaeridae科,Hexalonchidae科,Litheliidae科,Pyloniidae科,Spongodiscidae科及びStylodictyidae科を含む70の未同定種が含まれており,この中のいくつかは新種である可能性がある.
北東太平洋における国際深海掘削計画(ODP)1021 地点の中部及び上部中新統から産出した放散虫化石
上栗伸一
北東太平洋における国際深海掘削計画(ODP)1021地点の中部及び上部中新統から,合計149種の放散虫化石が産出した.その写真を24枚のプレートに示した.これらの分類群にはActinommoidea科,Eurcyrtidioidea科,Hexastylioidea科,Litheliidae科,Lychnocanoidea科及びSpongodiscidae科を含む40の未同定種が含まれている.本論文においてLychnocanoma californicaを新種として記載した.
IODP Exp. 346 Site U1425 から産出した日本海の後期中新世放散虫
松崎賢史・板木拓也
本研究では,日本海で実施された国際深海掘削計画(IODP)Expedition 346の掘削サイトU1425で頻繁に産出した上部中新統の放散虫化石84種/種群について報告している.これらの顕微鏡写真を9図版に図示した.
半永久的な保存や展示のための柱状堆積物試料の樹脂包埋法
久保田好美・田尻理恵
近年,研究のためのアーカイブ,あるいは教育・普及用の展示物としての保存を目的とし,長尺のサンプリングツール(アルミ型枠)を用いて柱状堆積物試料を板状に長く採取する試みがなされている.一方,海底堆積物や湖底堆積物の柱状試料(コア試料)を半永久的に保存する方法として樹脂包埋法がある.本論は,半割されたコア試料からアルミ型枠を用いて採取した長尺試料(ロングスラブ)の樹脂包埋法について報告する.統合深海掘削計画で採取された日本海の堆積物試料を用い,アセトンでの試料の脱水,さらにエポキシ樹脂の置換を行い,熱重合させ試料を硬化させた.今回用いた堆積物試料は,1 mm厚のアルミ型枠で容易に採取できるほどの柔らかさであったが,堆積物を構成する粒子が小さくよく締まっていた.その結果,樹脂は完全には浸透せず,内部は未固結のままであった.内部の不均一性が影響を与えうるような研究に活用するためにはさらなる手法の改善が必要であるが,展示用としては十分な品質であった.
群馬県東部八王子丘陵の足尾テレーンから産出したペルム紀,三畳紀及びジュラ紀放散虫の報告
伊藤 剛
群馬県東部の八王子丘陵にはジュラ紀付加体足尾テレーンが露出する.この足尾テレーンは,チャートと泥質混在岩を主体とし,珪質泥岩,泥岩,砂岩を伴う.ペルム紀前期(シスウラリアン世サクマーリアン期),後期三畳紀(カーニアン期~ノーリアン期)及びジュラ紀の放散虫化石がチャートから産出し,中期ジュラ紀(バッジョシアン期~バトニアン期)放散虫が珪質泥岩から産出した.
20世紀後半における日本の中・古生代放散虫研究の進展
八尾 昭
日本の中・古生代放散虫化石の研究は,20世紀後半に急速に進展した.筆者の研究の経過に基づけば,その進展過程は,(1)1968年以前:中・古生代放散虫化石に生層序学的有効性が認められていなかった時期,(2) 1969年–1978年:非石灰岩相“古生界”から中生代型放散虫化石が発見されだした時期,(3)1979年–1988年:中・古 生代放散虫生層序学が急速に進展し,それに基づく検討によって“中・古生界”の堆積岩コンプレックスとしての実態が解明された時期,(4)1989年以降:放散虫化石の群集解析に基づく古環境復元へのアプローチが始まった時期,の4時期に区分される.放散虫化石研究の急速な進展の背景には,(1)放散虫化石の特性(種の多様性と変異性の高さ,産出個体数の多さ,比較的安定な殻成分,層序学的に連続した産出など),(2)研究手法の近代化(フッ化水素酸(HF)法,走査型電子顕微鏡(SEM),コンピュータの普及),(3)研究体制の組織化(科学研究費補助金総合研究(A),国際協力研究事業,国際共同研究など),及び,(4)情報交換の組織化と国際化(放散虫研究集会,国際研究集会など)という要素があった.
放散虫化石の研究を始めた頃
水谷伸治郎
国際会議IGCP115(研究課題:“太平洋地域における珪質堆積物”)の会合はカリフォルニアのMenlo Parkに在る米国地質調査所Menlo Park 支所で開かれた.1976年6月4日,参加者の一人,テキサス大学ダラス分校(University of Texas at Dallas: UTD)のPessagno教授は,中生代珪質堆積岩から分離した一匹の放散虫化石の実に見事な写真を,発表し,映写していた.私の放散虫生層序学的研究は,その写真を見た時から始まった.私は,カナダからハーヴァード大学,そして,テキサス大学オースチン校(University of Texas at Austin)へと移動するが,その間に,必ずUTDへ行くから,化石の分離の方法,その調べ方などを教えて欲しい,とPessagno教授に頼んだ.1977年2月16日,私は,オ−スチンからダラス空港へ飛んだ.Pessagno教授は,日本語の分かる人を迎えに出してくれた.彼は,空港から,Pessagno教授の研究室がある教育・研究棟へ,私を連れて行ってくれた.そして,Pessagno教授は,岩石試料の扱い方や化石分離の方法,さらに,走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)を用いた化石個体の観察法などを教えてくれた.私は,北米の遊学から帰国して,すぐ,名古屋大学で,1978年秋,比較的値段の安いSEM(JSM-T20)を購入するための研究費を獲得するために努力した.最初のジュラ紀放散虫化石は,当時,卒業論文の研究をしていた4年生の学生,酒井正男君によって発見された.彼の研究は,卒論として,名古屋大学理学部図書室に(Sakai,1979;として)保存されている.その後,美濃地域には,広くジュラ紀層が分布していることが明らかになり,その結果は,日本学士院に報告され,印刷された(Mizutani et al., 1981).本報告,すなわち,“放散虫生層序学研究についての個人的回想”は,北米のPseeagno学派に関係をもった私の体験をまとめたものである.
大阪微化石研究会と放散虫研究集会
竹村厚司
NOMは大阪微化石研究会機関紙(News of Osaka Micropaleontologists)の略語であるが,一部で大阪微化石研究会そのものの呼び名としても用いられてきた.日本の放散虫研究集会は2017年までに13回を数えるが,最近ではこの集会がNOMと呼ばれることもある.これは各回の放散虫研究集会論文集がNOM特別号として刊行されてきた経緯による.本論では,大阪微化石研究会について,その概要や刊行物について説明し,日本の放散虫研究集会やInterRad(国際放散虫研究集会)についても簡単に紹介した.
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