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地質調査研究報告 Vol.59 No.3/4 (2008)
表紙
日立鉱山の大煙突
日立鉱山は阿武隈高原の最南端に位置する日本有数の銅山であり、その電気係は後に日立製作所に発展するなど、近代日本の成立に重要な役割を果した。鉱山から採掘した硫化銅鉱の精錬に伴う亜硫酸ガスは地域住民を困らせたが、その解決策として導入されたのが、高さ156mの巨大煙突による高層への希釈化である。大正3年 (1914) のことである。その詳細は鈴木 (2006) に詳しい。現在では風水害で高さ 1/3 となった煙突の麓で日鉱金属 (株) などの加工部門が忙しい。また直下には常磐高速道路 (赤色陸橋) も開通している。
鈴木尭士 (2006) 角弥太郎の生涯。西富謄写堂、高知、95 p。
(石原舜三)
目次
タイトル | 著者 | |
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論文 | ||
東京低地東縁における2 本のボーリングコア堆積物の堆積相と放射性炭素年代 : MZ コア (葛飾区水元公園)、SZ コア (江戸川区篠崎公園) | 田辺 晋・石原与四郎・中島 礼・木村克己・中山俊雄 (135-149) | 59_03_01.pdf [3.9 MB] |
Chemical compositions of the late Cretaceous granitoids across the central part of the Abukuma Highland, Japan - Revisited | Shunso Ishihara and Bruce W. Chappell (151-170) | 59_03_02.pdf [1.3 MB] |
概報 | ||
愛媛県北部の中新世火山岩頸周辺部における岩石磁気物性の変化 | 森尻理恵・中川 充・牧野雅彦 (171-189) | 59_03_03.pdf [2.6 MB] |
宮崎県西米良村に分布する村所花崗斑岩のフィッション・トラック年代 | 巖谷敏光・内藤一樹 (191-196) | 59_03_04.pdf [2 MB] |
鹿児島県トカラ列島、小臥蛇島火山の概要 | 中野 俊・下司信夫 (197-201) | 59_03_05.pdf [2.4 MB] |
要旨集
東京低地東縁における 2 本のボーリングコア堆積物の堆積相と放射性炭素年代 : MZ コア (葛飾区水元公園)、SZ コア (江戸川区篠崎公園)
田辺 晋・石原与四郎・中島 礼・木村克己・中山俊雄
東京低地の東縁における2本のボーリングコア堆積物 (MZコアとSZコア) の堆積相と放射性炭素年代値を利用し、奥東京湾口における砂嘴堆積物周辺の堆積相の時空間分布を検討した。中・上部更新統の下総層群に不整合に累重する沖積層は、MZコアにおいて、下位より網状河川性堆積物、蛇行河川性堆積物、エスチュアリー性堆積物、砂嘴性堆積物、デルタ性堆積物、そして SZ コアにおいて、デルタ性堆積物から構成されている。MZ コアからは 13150〜3160 cal BP、SZ コアからは 3930〜730 cal BP の放射性炭素年代値が得られた。このうち、MZ コアの砂嘴性堆積物の一部を構成するサンドショール堆積物は、奥東京湾口の砂嘴堆積物から北東方向に伸張する細長い砂体を形成している。この砂体は、約 4500〜3500 年前、砂嘴の内陸側に存在した流路において形成されたと考えられる。
Chemical compositions of the late Cretaceous granitoids across the central part of the Abukuma Highland, Japan - Revisited
Shunso Ishihara and Bruce W. Chappell
Late Cretaceous granitoids of central area in the Abukuma terrain were analyzed by polarized XRF method and compared with the Ryoke granitoids of Chubu district. The Abukuma granitoids are mostly composed of hornblende and/or biotite granodiorite to granite and less in amount of muscovite-biotite granites, and are higher in Na2O and Al2O3, lower in K2O, Rb, Pb and Ba than the Ryoke granitoids on the Harker diagrams. The Abukuma granitoids appear to be generated within the continental crust of inmatured island-arcs, having mafic magmas and heat from the upper mantle.
The Abukuma granitoids are generally reduced type accepting sedimentary carbon from the continental crust, similarly to the Ryoke granitoids, but an intermediate series occurs in the eastern-end zone. Zone II granitoids, which are rich in CaO and poor in K2O and lithophile components such as Rb, Pb, Y, Ce and La, have weak signature of high Sr/Y ratio for adakite. An adakitic magma may have brought up from the subducting slab, but extremely modified within the continental crust.
愛媛県北部の中新世火山岩頸周辺部における岩石磁気物性の変化
森尻理恵・中川 充・牧野雅彦
中新世の瀬戸内火山岩類が岩頸として花崗岩類に貫入した地質構造が明瞭に見られる、松山市中島瀬の鼻で露頭の帯磁率プロファイルを取ったところ、花崗岩と火山岩頸の境界部の数m 程度の狭い範囲で高帯磁率帯が認められた。さらに、松山市に分布する中新世の火山岩頸 11 サイトから 42 個の花崗岩と安山岩の試料を採取し、帯磁率、自然残留磁化、密度を測定した。また、このうちの 15 試料について、熱磁気分析およびヒステリシスパラメーター測定を行った。それらの結果、火山岩頸の境界部分において帯磁率も自然残留磁化も強い傾向が見られた。ヒステリシスパラメーターでは、火山岩頸の中心部に比べて縁辺部のマグネタイトのほうが粒子が小さい傾向にあることが分かった。また、ほとんど自然残留磁化を示さない花崗岩類が、安山岩と接触している部分のみ、自然残留磁化が強く、帯磁率が高かった。これは、安山岩と接触した熱で花崗岩類の黒雲母が変質し、粘土鉱物とマグネタイトが生成された結果であると顕微鏡観察から認められた。
宮崎県西米良村に分布する村所花崗斑岩のフィッション・トラック年代
巖谷敏光・内藤一樹
宮崎県中央部九州山地よりに位置する村所花崗斑岩は、西南日本外帯に属し、カリ長石の斑晶で特徴づけられる花崗斑岩である。これまでこの岩体の生成年代についての報告は得られていなかった。筆者らは、この岩体の新鮮な試料を使ってジルコンによるフィッション・トラック年代値 (14.3 ± 0.5Ma) を求めた。得られた年代値から村所花崗斑岩の活動時期は、西日本外帯の中新世火成岩に属す尾鈴山火山深成複合岩体の活動時期とほぼ同じと考えられる。
鹿児島県トカラ列島、小臥蛇島火山の概要
中野 俊・下司信夫
鹿児島県、トカラ列島の北部に位置する小臥蛇島は直径 0.5 × 1 km、角閃石安山岩-デイサイト質の小さな火山島で、底面の直径 5 × 10 km、比高 800 m 以上の海山の山頂部に当たる。この島の東半分は熱水変質を被っており、2005 年及び 2006 年の現地調査では数ヶ所で噴気・温泉活動を確認した。最近、後期更新世の K-Ar 年代が報告されたが、小臥蛇島は第四紀火山であるだけでなく、噴気活動の存在から現在でも活動的な火山であることが明らかになった。
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