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地質調査研究報告 Vol.71 No.6(2020)

表紙

富士火山,宝永火口

富士火山,宝永火口 富士火山は,日本の最高峰であると伴に,最大級の活火山でもある.南東山腹にあるこの火口は,1707年の宝永噴火で形成されたもので,この噴火を最後に富士火山は静穏を保っている.火口壁には,積み重なった火山噴出物と岩脈が露出している.火山噴出物はアグルチネート(溶結した降下火砕物)を主体とし,薄い溶岩流や降下スコリアを挟んでいる.その層序の詳細は,本号の山元ほか論文を参照のこと.

(写真・文:山元孝広)

目次

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タイトル著者PDF
論文
関東山地東縁部,白亜系高岡層の石灰質砂岩から得られた砕屑性ジルコンU–Pb年代原 英俊 71_06_01.pdf [6MB]
新期富士火山降下火砕物の再記載と噴出量の見積もり山元孝広・中野 俊・石塚吉浩・高田 亮 71_06_02.pdf [24MB]
概報
九十九里平野における沖積層の粒度組成小松原純子 71_06_03.pdf [1MB]

要旨集

関東山地東縁部,白亜系高岡層の石灰質砂岩から得られた砕屑性ジルコンU–Pb年代

原 英俊

 関東山地東縁部に分布する下部白亜系高岡層の石灰質砂岩より,砕屑性ジルコンのU–Pb年代測定を行った.U–Pb年代の最若粒子年代及び最若ピーク年代は,109.7 ± 0.8 Ma及び110.0 ± 1.0 Maが得られた.これらはともにアルビアン期前半を示し,高岡層がアルビアン期前半以降に堆積したことを示唆する.また高岡層の石灰質砂岩は,ペルム紀~三畳紀(276 ~ 240 Ma)のジルコンを多く含むことを特徴とする.砕屑性ジルコン年代及び砂岩の岩相より,高岡層の後背地には,ペルム紀~三畳紀の花崗岩類と秩父帯付加コンプレックスが分布していたと考えられる.堆積年代より高岡層は,(山中さんちゅう)白亜系の(三山さんやま)層に対比される.しかし両層は,ジルコンのピーク年代スペクトルの特徴に違いが認められ,異なる後背地によって特徴づけられる.

新期富士火山降下火砕物の再記載と噴出量の見積もり

山元孝広・中野 俊・石塚吉浩・高田 亮

 1,500 cal BC以降の新期富士降下火砕物の再記載を行い,各堆積物の層厚分布から最小マグマ体積を見積もった.また,代表的露頭から採取した噴出物の全岩化学組成分析を行い,その特徴から降下火砕物の対比を行っている.その露頭は,東山麓を中心にした太郎坊(御殿場口),大日堂(東富士演習場),上高塚(東富士演習場),須走口五合目,幻の滝下,須走口馬返,すぎな沢(須走),大御神(新東名高速工事現場),滝沢(北富士演習場)である.1,500 cal BCから300 cal BCにはS-10 ~ S-22降下火砕物が山頂・山腹から噴出したが,このうちS-10,大沢,大室山,S-13,S-18,S-22 降下火砕物の規模が大きく,見積もられた最小体積は岩石換算体積で各々1×10-1km3前後である.300 cal BC頃は山腹割れ目噴火が卓越し,宝永噴火を除いて規模が小さく,鍵層として広範囲に分布する降下火砕物は堆積していない.そのため,山元ほか(2011)が東山腹のものに須走口馬返降下火砕物群と定義したように,北東山腹のものには吉田口降下火砕物群,南東山腹のものには御殿場口降下火砕物群として,地域毎に下位から順に数字を付け新称した.

九十九里平野における沖積層の粒度組成

小松原純子

 九十九里平野で2015年度に行われたボーリング調査で得られた4本のコアについて,沖積層の粒度分析を行い,堆積環境との対応を検討した.陸棚おぼれ谷堆積物は細粒の泥層からなる.下部外浜堆積物へ上方粗粒化する.下部外浜堆積物の上部は淘汰の良い極細粒砂~細粒砂からなる.上部外浜堆積物では中粒砂以上の割合が増加する.前浜~後浜および砂丘堆積物は極細粒砂から細粒砂を主体とする.淘汰の良い砂質堆積物が卓越するの は周辺の更新統が再堆積したからと考えられる.