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地質調査研究報告 Vol.69 No.5(2018)
表紙
屋久島トロッコ登山道からみた安房川
屋久島は正長石の巨晶を含む中新世花崗岩が島の中央部を占め,周辺部に古第三紀付加帯の四万十帯が取り囲む.降雨量が多いこともあり,河川網が非常に発達している.ただし,急峻な地形と4,000 mmを超える年間降水量のために表層風化部が選択的に流出し,土壌層が薄く発達が貧弱である.河床は砂というよりは時に数メートルもの大きさの巨礫で埋められている(写真).細粒砂を化学分析して作成する地球化学図の研究にとって手強い地域であるが,屋久島の地球化学図は固有の生態系保護のための重要な基礎データとなるであろう.
(写真・文:太田充恒)
目次
全ページ PDF : 69_05_full.pdf [5MB]
タイトル | 著者 | |
---|---|---|
概報 | ||
Geochemical mapping of remote islands around Kyushu, Japan | Atsuyuki Ohta | 69_05_01.pdf [3.8MB] |
要旨集
九州離島域の地球化学図作成
太田充恒
本論文では,西南日本離島域を対象とした高密度地球化学図についての報告を行う.九州地方の陸海域地球化学図や現在作成中の広域Sr同位体図における研究調査を補完し強化する事を目的として,193試料の河川堆積物および3試料の火山灰降下堆積物を主に九州周辺の離島から採取し,53元素の分析を行った.堆積物試料中の元素広域分布と地質との関係を地理情報解析ソフトウェアを用いて詳細に調べた.非アルカリ苦鉄質火山岩や火砕岩由来の河川堆積物や火山灰降下堆積物はマグネシウム,カルシウム,スカンジウム,チタン,バナジウム,鉄,コバルト,ストロンチウムに富んでいた.アルカリ苦鉄質火山岩はさらに河川堆積物中のクロム,ニッケル,ニオブ,ランタン,セリウム,プラセオジム,ネオジム,タンタル濃度も増加させた.花崗岩由来の河川堆積物は,ベリリウム,ナトリウム,カリウム,カルシウム,ストロンチウム,イットリウム,スズ,ランタノイド元素,トリウム,ウランに富んでいた.付加帯・非付加帯堆積岩は河川堆積物中のニオブやタンタル濃度を増加させたが,ナトリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム濃度を低下させた.これらの地球化学的な特徴は,砕屑物中の母岩から供給された主要造岩鉱物(例えば石英,斜長石,カリ長石,苦鉄質鉱物)や副成分鉱物(例えば,アパタイトやモナザイト)の相対的な存在量によって説明が可能である.また,亜鉛・鉛鉱床が対馬の河川堆積物中の亜鉛,カドミウム,鉛濃度を高め,アンチモン鉱床が天草下島の河川堆積物中のアンチモン濃度を高めたことが確認された.
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