地質調査研究報告 トップへ
地質調査研究報告 Vol.54 No.7/8 (2003)
表紙
愛知県東部に見られる中期中新世岩脈
愛知県東部の鳳来-設楽 (したら) 地域には、中新統設楽層群とその基盤 (領家帯と三波川帯の構成岩類) を貫く中期中新世の岩脈が多数見られる。左の写真は宇連 (うれ) 川上流の鳳来湖に見られる幅約 8 m の安山岩岩脈 (鳳来湖第10岩脈 ; 穴滝岩脈とも呼ばれる) である。この地点での走向は N-S、傾斜はほぼ垂直で、設楽層群上部の珪長質火山岩類 (南設 (なんせつ) 亜層群鳳来湖層) に貫入する。本岩脈を含む多くの岩脈の分布は地元の地質研究者により詳細に調べられ、一大平行岩脈群の存在が明らかにされている (設楽中央岩脈群)。右の写真は湯谷温泉の宇連川に見られる国指定名勝天然記念物「馬の背岩」。鳳来湖層に貫入する幅約 5 mの変質安山岩岩脈で、走向はほぼ N-S、傾斜はほぼ垂直である。馬の背中のように突出していることからこの名称がつけられている。本地域で行われる地質巡検では訪問地の一つになることが多い。
(星 博幸)
目次
タイトル | 著者 | |
---|---|---|
論文 | ||
イライト結晶度測定における標準試料の提唱 : 古地温度指標としての有効性 | 原 英俊・木村克己 (239-250) | 54_07_01.pdf [574 KB] |
Variation of concentrations and physicochemical properties of aeolian dust obtained in east China and Japan from 2001 to 2002 | Yutaka Kanai, Atsuyuki Ohta, Hikari Kamioka, Shigeru Terashima, Noboru Imai, Yukihiro Matsuhisa, Michiyo Kanai, Hiroshi Shimizu, Yoshio Takahashi, Kenji Kai, Boyu Xu, Masahiko Hayashi, and Renjian Zhang (251-267) | 54_07_02.pdf [2,367 KB] |
愛知県設楽町八橋地域に分布する中新統北設亜層群 (設楽層群下部) の地質 | 星 博幸・中村宣仁 (269-278) | 54_07_03.pdf [4,140 KB] |
資料・解説 | ||
Reexamination of radiolarian biochronology of the Shimizu Formation (Northern Chichibu Belt) in the Shimizu-Misato area, western Kii Peninsula, Southwest Japan | Kenji Kashiwagi and Chikao Kurimoto (279-293) | 54_07_04.pdf [767 KB] |
要旨集
イライト結晶度測定における標準試料の提唱 : 古地温度指標としての有効性
原 英俊・木村克己
古地温度指標に対するイライト結晶度測定の標準試料として、JIC (Japanese Illite Crysallinity standard) を提唱する。JIC は 6 つの泥質岩試料から構成され、紀伊半島三波川変成岩類と四万十帯白亜系より採取された。それぞれの泥質岩試料は、長さ 2-3cm 以下の岩石片からなる。地質調査総合センターで測定された 6 つの JIC 試料の IC 値は、それぞれ 0.25、0.28、0.33、0.44、0.48、0.56Δ2゜θ を示す。また当センターで測定された IC 値は、国際試料である C I S (Crystallinity Index Standard) と線型比例の関係にある。そして、epizone がパンペリー石-アクチノ閃石相、anchizone がぶどう石-パンペリー石相の変成温度にそれぞれ相当する。CIS 換算と変成温度との対比により、JIC 試料は有効な古地温度指標であるといえる。そしてこの JIC 試料を測定することで、異なる研究室で測定された IC 値の比較が可能となる。
中国東部および日本国内で 2001 年から 2002 年にかけて採取した風送ダストの大気中濃度と物理化学特性の変動
金井 豊・太田充恒・上岡 晃・寺島 滋・今井 登・松久幸敬・金井三千代・
清水 洋・高橋嘉夫・甲斐憲次・徐 伯瑜・林 政彦・張 仁健
風送ダスト粒子の変動や特徴を明らかにすることを目的として中国との共同研究「風送ダストの大気中への供給量評価と気候への影響に関する研究」が開始された。我々は試料採取装置を中国の北京、青島、合肥、日本の那覇、福岡、名古屋、つくばに設置し2001年2月から2002年5月まで観測を行い試料を採取した。予察的な観測結果では、0.5μm 付近の人為起源物質によるピークと大陸起源のダスト成分と見られる 4-5μm 付近のピークの二山形を示し、イベントの際には後者が増加した。ダスト濃度の季節変動は、春期に多くなっており、青島では冬期にも時々高かった。通常期の日本各地におけるダスト濃度はさほど差はなく、中国との差の方が大きかった。ダストイベントがおきた IOP の時期には粗粒の割合が増え、濃度は北京>青島>合肥、北京>福岡>名古屋>つくば>那覇の順にある傾向が見られた。ダストの主な水溶性化学成分は、細粒では硫酸アンモニウム、粗粒では塩化ナトリウムや硝酸ナトリウムと推定された。不溶性成分の粗粒ではアルミニウム濃度が高く、鉱物質であることを示唆していた。
愛知県設楽町八橋地域に分布する中新統北設亜層群 (設楽層群下部) の地質
星 博幸・中村宣仁
愛知県設楽町八橋地域に分布する下部中新統北設 (ほくせつ) 亜層群 (設楽 (したら) 層群下部) の分布を明らかにするために、5.5 km× 4 km の地域の地質図を作成した。岩相に基づき本地域の砕屑岩は下位から上位に向かって次の4層に区分される : 田口層 (不淘汰角礫岩や礫岩などの粗粒砕屑岩を主とする)、川角 (かわかど) 層 (主に砂岩)、大野層 (主に泥岩)、門谷 (かどや) 層 (珪長質凝灰岩と凝灰質砕屑岩)。北設亜層群は全体的に上方細粒化を示す。田口層の粗粒砕屑岩の多くは河川堆積物や土石流堆積物で、崖錐性堆積物と判断されるものもある。これらの粗粒砕屑岩は基盤の谷地形を埋積するように分布しており、不規則な分布形態を示す。他方、他の地層は層理の発達した海成層からなり、その分布は単純である。北設亜層群は中部中新統南設 (なんせつ) 亜層群 (設楽層群上部) の火山岩類により不整合に覆われる。本地域東部では、中性〜苦鉄質火山岩貫入岩が南北方向の平行岩脈群を形成している。
- お知らせ(出版物)
- 地質図カタログ
- 購入案内
-
地質調査研究報告
- 2024年 (Vol.75)
- 2023年 (Vol.74)
- 2022年 (Vol.73)
- 2021年 (Vol.72)
- 2020年 (Vol.71)
- 2019年 (Vol.70)
- 2018年 (Vol.69)
- 2017年 (Vol.68)
- 2016年 (Vol.67)
- 2015年 (Vol.66)
- 2014年 (Vol.65)
- 2013年 (Vol.64)
- 2012年 (Vol.63)
- 2011年 (Vol.62)
- 2010年 (Vol.61)
- 2009年 (Vol.60)
- 2008年 (Vol.59)
- 2007年 (Vol.58)
- 2006年 (Vol.57)
- 2005年 (Vol.56)
- 2004年 (Vol.55)
- 2003年 (Vol.54)
- 2002年 (Vol.53)
- 2001年 (Vol.52)
- 活断層・古地震研究報告
- GSJ 地質ニュース
- CCOP-GSJ 地下水プロジェクトレポート
- GSJ技術資料集
- ビデオ・パンフレット・ポスター
- その他の出版物