活断層・古地震研究報告  第3号 トップへ

17世紀に北海道東部で発生した異常な津波の波源モデル

佐竹健治・七山  太・山木  滋

17世紀に発生した異常な津波について、数値シミュレーションを行い、北海道東部の沿岸湿原における津波堆積物の分布と比較した。断層の幅によってアルマゲドン地 震、複数セグメントのプレート間地震、津波地震を想定した。断層の長さについては、単独セグメント、複数セグメントを考慮したほか、断層の走向やすべり量も変化させた。その結果、複数セグメントのプレート間地震が、17世紀の津波を最もよく説明できた。2003年9月26日の十勝沖地震についても暫定的な数値シミュレーションをおこなった (付記)。


北海道浜中町霧多布湿原における津波堆積物の分布

1952年十勝沖地震の際の津波浸水域、3つのモデル (アルマゲドン地震、プレート間地震、津波地震) から計算した津波浸水範囲。17世紀の津波堆積物 (Ts3) の分布を一番よく再現するのは、プレート間地震の連動によるものであった (佐竹ほか、315 - 362ページ)。


第1図

第1図. 断層モデルによる地殻変動。(a) アルマゲドン地震 (0-85) の平面図、(b) プレート間地震 (17-51) の平面図、(c) 津波地震 (0-17) の平面図。(d) 断面図。断面の位置を平面図 (a-c) に青線で示す。平面図のコンター間隔は0.2m毎で、実線は隆起を、破線は沈降を示す。

Fig. 1. Crustal deformation pattern of various fault models. (a) Map view of Armageddon (0-85) model, (b) Map view of Interplate earthquake (17-51), (c) Map view of Tsunami earthquake (0-17). (d) Cross section along blue lines shown in (a)-(c). Counter interval is 0.2 m, solid curves indicate uplift while dashed one subsidence.


第2図

第2図. 5地域7測線における津波堆積物 (Ts3, Ts4) の海岸からの到達距離とシミュレーションによる浸水距離の比較。上図は断層の幅による影響、下図は断層の長さとすべり量の影響。

Fig. 2. Maximum inundation distance from coast line of tsunami deposits (Ts3 and Ts4) and simulation. Top: Effect of fault width (Armageddon, interplate and tsunami earthquakes). Bottom: Effects of fault length (300 km vs. 200 km on the Nemuro side) and slip amount (D 5m vs 7m).