平成10年度活断層調査 トップへ

活断層のセグメンテーションの研究

粟田泰夫 (1999)

位置図

   本研究では、平成8年度から、1891年濃尾地震の際に出現した濃尾地震断層系をモデルとして、活断層を活動セグメント (一度に活動する単位区間) に区分する研究を行っています。濃尾地震では、北西側から、温見ぬくみ、根尾谷、梅原の3つの主な地震断層が出現しました (第9図)。平成10年度には、このうち最も南東側の梅原断層のトレンチ調査を高富町梅原の上洞地区で行いました。その結果、梅原断層は、約11,000年前 (未暦年補正の14C年代) 以降、濃尾地震の時にだけ、ただ1回活動したことが確認されました。この調査結果から、梅原断層と約2,700年の平均活動間隔をもつ根尾谷断層 (平成9年度に調査) とは、別の活動セグメントをなすと考えられます (第1表)。
   この成果を含めて日本の地震断層のセグメント区分を試みた結果、それらの多くは複数の活動セグメントに区分され、各セグメントの最頻変位量と長さとの比は、1 : 10,000程度であることが明らかになりました (粟田、1999)。
   このほか、根尾谷断層の東側に分布する 長滝断層 (第9図) の詳細地形地質調査を行った結果、この断層は濃尾地震の際に活動した可能性が高いことが明らかになりました。この時の長滝断層の左横ずれ変位量は2〜3mと推定されます。


第9図

濃尾地震断層系及び周辺の活断層とトレンチ地点位置図

第9図  濃尾地震断層系及び周辺の活断層とトレンチ地点位置図。
97年根尾谷断層門脇トレンチ地点、A : 1998年梅原断層上


第1表

活動セグメント 長さ 変位量
最大値
最頻値 再来間隔 長期的な
平均変位速度
温見セグメント 16km 3.5m     活動度B級
根尾谷セグメント 31km 7.4m 4-6m 2.7ky ≧2m/ky
梅原セグメント 26km 5.3m ≧2m 1114Cky  

第1表  1891年濃尾地震断層系の主要セグメント区分