衛星センサーが捉えた月面画像 -Terra ASTER 月・深宇宙校正に成功
1999年に打ち上げられたTerra衛星は現在まで順調に運行を続けておりますが、Terra衛星の各センサの性能評価・放射量補正係数の精度向上等を目的として、第2回目の深宇宙校正・月校正が日本時間の2017/8/6 08:15:45~2017/8/6 08:51:39に実施されました。
本オペレーションでは従来は地球を見ているTerra搭載の各センサに対して、衛星全体をピッチ方向(進行方向)に回転させることで、深宇宙・月観測を実現しました(※詳細1参照)。
搭載センサの一つ、日米で協力して運用されている「ASTER」には産業技術総合研究所の研究メンバー(地質調査総合センター、人工知能研究センター及び計量標準総合センター)も参加し、取得されたデータを現在解析中です。ここでは撮像されたばかりの月画像をご紹介します。
※詳細1
■ 月・深宇宙校正(Lunar Deep Space Calibration)とは?
ASTERは宇宙から地球の地表を観測するセンサですが、宇宙線が飛び交うなど環境の厳しい宇宙空間ではセンサを運用していくうちに感度の劣化が起こります。また感度の劣化を考慮に入れないままでは観測データの品質に思わぬ変化が生じてしまうことが知られています。
そこでASTERサイエンスチームでは、ASTERに搭載されている光源の計測や、観測と同時刻に地上で地表の計測を、定期的に行うなどして、センサが捉えたデータと地上の実際のデータとの差異等を計算して補正値を出し、ユーザが使うプロダクトでは補正された実際の地表により近いデータとして提供しています。
この作業を「校正」と呼びます。
他方で、月には大気がなく地表の経年変化もほとんどなく明るさが安定しており、宇宙に浮かぶ上質な校正ターゲットとして、NASAやJAXAをはじめとする世界中の宇宙機関において利用され始めています。また、JAXAが打ち上げた月探査機かぐや「SELENE」http://www.selene.jaxa.jp/により、月表面の詳細なスペクトルデータが得られています。 よって、ASTERで月を観測することにより、校正のためのより正確な情報を広い範囲で取得することが可能となります。
ただし、いつもは地球を向いているASTERで月を観測するには、ASTERを搭載しているNASAのTerra衛星を、ぐるりと一回転させて月に向けることが必要となります。その運用にはリスクも伴うため、頻繁には行うことができません。第1回目は2003年に行われ、今回は第2回目となります。
一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構からも、今回の月・深宇宙校正についてのご紹介を行っております。
Terra ASTER 月・深宇宙校正に成功