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2004年 GSJ トピックス 一覧へ
海底を音波で測る、撮る、探る。
深海底構造・微地形探査パッケージ (DAI-PACK) の開発
海洋資源環境研究部門
岸本清行、西村清和、上嶋正人
Kiyoyuki KISIMOTO, Kiyokazu NISHIMURA
and Masato JOSHIMA .....Geological Survey of Japan, AIST
地質調査の必要性は陸上だけには限りません。旧地質調査所 (現産総研地質調査総合センター) に海洋地質の研究部門が発足してから30年以上が経過し、その間一貫して、海域、陸水・汽水域での地質調査の主要な遠隔調査技術のツールは音波 (低周波〜高周波) でした。水中は光や電波を通しにくい一方で、音波はよく伝わるという性質があるため、海洋調査における音波利用技術の発達は必然であったといえます。
当所では海底および海底下の地質構造の探査精度を向上させるために、海底に近づいて測定するという発想のもとに技術開発と実験を続けてきました。海洋地質の構造探査では測定器機を調査船の船尾から海中に曳航しながら連続的に測定するため、曳航する器機の海中での深さによって、浅海曳航または海面曳航方式 (通常行われる方式) と海底面近くまで器機を降ろして調査する深海曳航方式に大別されます。深海曳航方式は長いケーブルやワイヤーを使って複雑な海底地形面上を慎重に機器の操作をしながら調査をしなければならないので、浅海方式と比べて調査効率が格段に悪くなり、また、測定器機の海底近傍での正確な測位 (座標の決定の手間と、測定後のデータ処理の時間がかかるという欠点もあります。しかし、それらの不都合があってもなお深海曳航にこだわるのは、うまくデータが取得できた時の情報の価値が高いからです。その価値とは、「海底面を写真で見るように観察すること (面的調査)」、「海底下の地質構造をできるだけ詳細に測定すること (地下構造探査)」です。
センサの複合化によってデータの信頼性を向上させる。
私たちは、各種のビークル (深海潜水船、水中無人探査機、深海曳航体など) に便乗搭載させてもらうことによって海底近傍での地質調査 (マッピング) を行うことができるパッケージ化された装置 (深海底構造・微地形探査パッケージ、DAI-PACK: Deep sea Acoustic Imaging Package と名付けました) を開発しました。これまでに多くの実海域実験を行い非常に良好な結果を得ることができました。
深海底構造・微地形探査パッケージ (DAI-PACK) の概念図
深海底構造・微地形探査パッケージ (DAI-PACK) の構成
ハイパードルフィン (ROV) に取り付けた DAI-PACK の耐圧容器
DAI-PACK (デイパック) には、海底面を音響画像として平面的にマッピングできる高周波 (330kHz) のサイドスキャンソナーと、海底下の地層断面を連続的に探査するサブボトムプロファイラ (10kHz) が組み込まれており、それぞれ独立に設定されたパラメタ-に従ってオフラインで観測を行うことができます。
小笠原海域の海底カルデラ内でのサイドスキャンによるマッピング例、
枠線の間隔は50m。
汽水域でのサブボトムプロファイラーによる海底下の地層断面の例。
またこの装置を「しんかい6500」などの潜水船で用いる時は、制御装置を船内に設置することで、オンラインで観測を行うこともできます。搭載機器の詳細 仕様を下に示します。今後、この装置を精密地質調査が必要なあらゆる現場で用いてその成果を役立てていきたいと考えています。
深海サブボトムプロファイラの仕様概要
測深レンジ | 5、 10、 20、 40、 80、 150m |
地層探査分解能 | 約6cm |
最大探査深度 | 海底下40m (底質に依存) |
測深精度 | 0.5%以上 |
浅海部のリミット | 最浅2.5m (底質に依存) |
送信レート | 最大10Hz (水深と動作モードに依存) |
データの保存 | デジタル ODECフォーマット、SEG-Yフォーマット |
周波数 | 10kHz |
送信出力レベル | 300W (パルス) |
電源 | 12V DC、 消費電力8W |
深海デジタルサイドスキャンソーナーの仕様概要
トランスジューサ | 2 x 330kHz ビーム幅 1.8度 (水平) x 60度 (垂直) |
探査レンジ | 15m、30m、60m、90m、120m |
通信インターフェース | RS232Cシリアル |
ソフトウエア | 表示・記録用 OS: Windows 95、 98、 me、 XP |
電源 | 12V DC、消費電力6W |
曳航速度 | 2-3kt |