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深部流体の起源  -謎に満ちた固体地球の水循環の解明に向けて-

深部地質環境研究センター     
深部流体チーム長   風早  康平

   日本列島には、非火山性の温泉が多数存在している。その多くは、熱源が不明であり、温泉水の起源もよくわかっていない。火山から遠く離れて存在する これらの温泉は、沸騰して湧出しているものもある。また、塩分濃度が海水の2倍以上もあるものもある。この両方の特徴を有する温泉水が有馬型温泉水と呼ばれるもので、有馬温泉をはじめとして、南は和歌山まで近畿地方に広く分布している。

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    Fig. 1 Hydrogen and Oxygen isotope ratios of non-volcanogenic hot spring waters. Circle size indicates Cl concentration.

   図に示すように、この有馬型温泉水はマグマ起源ガスと同位体組成が酷似していることで知られており、地下に存在するマグマを起源としている可能性が指摘されていた。しかしながら、最近の火山学の示すところによれば、この地域にマグマが存在している可能性はほとんどない。我々はこの温泉水のもとになる水を有馬型深部上昇水と呼んでいる。有馬型深部上昇水の混入を示唆する温泉水は、最近では、近畿地方にとどまらず、中部・東海/関東地方の一部にも確認され いる。日本列島では、マグマは、沈み込んだ海洋プレ-トが地下100kmにおいて脱水し、その水によってマントルが部分融解して生じる。地下100kmより浅いところで脱水した場合は、マグマは発生せず、脱水により生成した水は、数10kmの地下から熱水としてそのまま上昇してくるのではないかと考えられる。

   固体地球の水循環は、まだまだ、不明な点が多い。海洋地殻とともに沈み込んだ変質玄武岩に含まれる水のうち一部のみが、火山ガスや火山性温泉として地表に戻り、大部分の水は行方不明である。行方不明の水の内そのまま沈み込み帯からマントルに供給されるものはさらに少ないと考えられている。

up: 2004/3/16