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難透水性材料の高精度測定と評価

室内透水試験の厳密解析理論及び高精度測定技術の確立
Determination of the Hydraulic-Properties of Low-Permeability Geological Materials

深部地質環境研究センター     
地質情報チーム   張  銘 (Ming Zhang)

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   岩石やコンクリート、アスファルトスーパー舗装および各種水理バリアなどの難透水性材料中の流体の流れやすさを正確に評価することは、各種地下開発利用、備蓄、交通、環境保全および廃棄物地層処分など様々な実用分野において非常に重要な研究課題となっている。材料中の流体の流れやすさの指標となる透水係数 (permeability) は、基本的に1856年にフランスの水文科学者であるH.Darcy が提案したダルシー則により求められる。従来では、ある一定断面積を持つ柱状試験体の両端面間に、一定あるいは規則的に変化する水圧差を与え、定常または準定常状態における供試体を透過する水の流量を測定し評価を行ってきた。しかし、試験体の透水性が極めて低い場合では、流量が非常に小さくて、その計測も測定機器の限界や蒸発などの原因によって現実的に不可能であった。
   難透水性材料中の流体の流れやすさを迅速かつ正確に評価するために、当センターでは理論と装置開発の両方を研究課題に取り組み、系統的に研究を行ってきた。その結果、従来の定水位法のほか、定流量法およびパルス法 (図 1) の非定常状態の測定結果から難透水性材料の透水係数のみならず、水を貯める能力を表す貯留係数、水の流れ状態を表す動水勾配および実験装置自身による誤差をも評価できる厳密解析理論の確立に成功した1)〜3)。また、難透水性岩石試験体を、地下探部の存在状態を再現した高い拘束圧 (地圧) と高い間隙水圧 (地下水圧) の条件下で、一台の試験装置を用いて前述の三種類の透水試験を高精度に実施できる汎用室内試験システムの開発にも成功した4)。図 2 に稲田花崗岩で実施した測定例を示す。この図より、花崗岩内部の微小クラックが最も多く潜在するRift面に平行した方向の透水係数は直交した方向に比べはるかに大きいことが分かる。現在はこの新しい試験システムの実用化および試験法の国際的基準化を目指して研究を進めている。

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References

1) M.Zhang, T.Esaki, H.W.Olsen and Y.Mitani: Geotechnical Testing J., 20, 296-303 (1997).
2) M.Zhang, M.Takahashi, R.H.Morin and T.Esaki: Geotechnical Testing J., 21, 52-57 (1998).
3) M.Zhang, M.Takahashi, R.H.Morin and T.Esaki: Geotechnical Testing J., 23, 83-99 (2000).
4) 張  銘, 高橋  学, 江崎哲郎: 特許P2000-9631

   Hydraulically-tight geologic materials are now being scrutinized in increasing detail because of their importance in retarding the transport of hazardous wastes that are disposed or stored underground. To determine low permeabilities both rapidly and reliably in the laboratory, rigorous theoretical analyses of three laboratory techniques: constant-head, constant flow-rate and transient-pulse permeability tests have been derived and/or evaluated. In addition, a new and versatile laboratory system has also been developed. The efficiency and accuracy of these analyses and new laboratory system are demonstrated through a series of experimental results derived from various types of rock.

up: 2004/3/16