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「日本の地球化学図」が環境賞を受賞
-元素の分布から何がわかるか ?-
地質調査総合センター作成の「日本の地球化学図 元素の分布から何がわかるか ?」が、平成17年度の環境賞 (主催 : (財) 日立環境財団・(株) 日刊工業新聞 後援 : 環境省) の優良賞を受賞しました。 地球化学図とは、いろいろな元素が、どの程度の濃度で我々の回りに分布しているかを示したもので、その元素の存在が、自然に拠るものなのか、産業活動や 人間生活といった人為的な汚染によるものかを評価するための基礎になるものです。古くは、金属資源の鉱床探査に利用され、近年では、産業廃棄物による土壌・地下水汚染といった環境汚染の評価に使われています。 地質調査総合センターでは、平成11年度より「全国をカバーする地球化学図」プロジェクトに取り組み、10km四方あたり1試料の密度で、日本全国から合計3,024個の河川堆積物試料を採取して、53元素について化学分析を行い、その成果をとりまとめて平成16年度に「日本の地球化学図 元素の分布から何がわかるか ?」を完成させました。 今回、ヒ素、水銀、カドミウム、鉛といった有害元素を含む53元素について、日本全国における濃度分布を明らかにし、環境汚染を評価する際の基準となる自然の元素レベル (バックグラウンド) を示したことが高く評価され、「環境評価の基礎となる地球化学図の作成を行なった」との理由により、環境賞を受賞するに至りました。 |
図1 日本全国のクロムの濃度分布 図2 日本全国のヒ素の濃度分布 |
元素分布の特徴的な例として、クロムとヒ素の図を図1・図2に示します。クロムは、四国・近畿を東西に横断して東海・関東に至る中央構造線や、北海道の中央部を南北に縦断する構造線に沿って顕著な高濃度地域が見られます。これはクロムやニッケルを高濃度に含有する超塩基性岩がこれらの構造線に沿って分布するからです。また、ヒ素は、各地に存在する鉱床に密接に関連しており、大規模な鉱山のあった地域で明らかな高濃度を示しています。 これら各元素について得られたデータの平均値は、日本全国における元素濃度の自然レベルでの平均値 (バックグラウンド濃度) と考えることができ、産業活動等による人為的な汚染を判断する基準となります。 地質調査総合センターでは、本プロジェクトに続き、平成16年度より「日本沿岸地球化学図」作成プロジェクトを開始しており、沿岸海域も含めた広範囲の地球化学図を作成し、より広範な環境汚染評価を可能にすること及び、沿岸海域の物質循環解明の基礎資料とすることを目指しています。また、全国カバーとは 別に、5万分の1スケール程度の地域における、詳細な「精密地球化学図」の作成プロジェクトも開始しており、現在、「東京湾岸精密地球化学図」の作成に取り組んでいます。 「日本の地球化学図」は、産業技術総合研究所の研究情報公開データベースにおいて、「有害元素を含む全国元素分布 (地球化学図) データベース」として公開するとともに、印刷した冊子「日本の地球化学図 元素の分布から何がわかるか ?」は販売もしております。 データベースは http://riodb02.ibase.aist.go.jp/geochemmap/index.htm を 冊子の販売は http://www.gsj.jp/Map/JP/kounyu.htm をご参照ください。 |
環境賞 : わが国の環境保全活動の発展を図るために、当時の環境庁の後援を得て、昭和49年に、現在の (財) 日立環境財団と (株) 日刊工業新聞社との共催で設けられました。表彰は、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な研究・開発・調査で画期的な成果を 上げるか、その成果が期待される個人や企業・団体に与えられます。
up: 2005/5/26