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地質調査研究報告 Vol.70 No.5(2019)

表紙

岩手山を望む岩洞湖とジュラ紀付加体砂岩中のジルコン

岩手山を望む岩洞湖とジュラ紀付加体砂岩中のジルコン 岩手県盛岡市東部の外山地域には灌漑と水力発電を目的として造られた岩洞湖があり,その湛水面積は約6km2に及ぶ.写真中央左には雪を被った活火山の岩手山(標高2,038m)が,中央右には前期白亜紀花崗岩からなる姫神山(標高1,124m)が望める.
 湖周辺の基盤は北部北上帯に属するジュラ紀付加体からなる.風景写真の左下にはジュラ紀付加体中の淡緑色砂岩標本(“米内川試料”),中央下には砕屑性ジルコンを含んだ本砂岩の薄片(直交ニコル),右下には放射年代測定のために本砂岩から抽出したジルコンの研磨片の写真をコラージュしてある.ジルコンからは約190Ma(前期ジュラ紀)のU–Pb年代(最若クラスター年代)が得られている(本号の内野(2019)を参照).砂岩標本,ジルコン粒子の長さはそれぞれ約10cm 及び約100μm.

(写真・文:内野隆之)

目次

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タイトル著者PDF
論文
岐阜県恵那市明智町東方及びその周辺地域に産する花崗岩類の全岩主成分・微量成分組成とその帰属 山崎 徹 70_05_01.pdf [9.7MB]
【訂正のお知らせ】p. 346 右段24行目,
(誤)第1表
(正)第10図 に訂正します.
2019年12月13日掲載
岩手県外山地域の北部北上帯に分布するジュラ紀付加体中砂岩の砕屑性ジルコンU–Pb年代 内野隆之 70_05_02.pdf [6.6MB]

要旨集

岐阜県恵那市明智町東方及びその周辺地域に産する花崗岩類の全岩主成分・微量成分組成とその帰属

山崎 徹

 5万分の1地質図幅「明智」地域の岐阜県恵那市東方地域において,東西約4km,南北約3.5kmの花崗岩類の分布を明らかにした.この花崗岩類は,岩体を覆う新第三系明智礫岩層の東が武節花崗岩に,西が苗木型花崗岩に対比される全岩化学組成を示す.武節花崗岩は比較的明瞭な全岩化学組成トレンドと重希土類元素に枯渇した左上がりのコンドライト規格化希土類元素パターンで特徴づけられる.苗木型花崗岩は比較的分散した全岩主成分・微量成分組成と,全体としてフラットに近い希土類元素パターンを示す.武節花崗岩は多くがアルミナ飽和度1.1以上の組成を示し,泥質堆積岩起源マグマからのざくろ石の分別が示唆される.苗木型花崗岩は,母岩の変成泥岩の不均質な同化作用の影響で大きなアルミナ飽和度の幅をもつ.苗木型花崗岩の親マグマは周囲の中部地方領家帯のメタアルミナス花崗岩類と類似した起源物質に由来するものの,地殻のより浅部で発生したために全体としてSiO2に富む性質を獲得した可能性がある.

岩手県外山地域の北部北上帯に分布するジュラ紀付加体中砂岩の砕屑性ジルコンU–Pb年代

内野隆之

 岩手県外山地域に分布する北部北上帯南西縁部のジュラ紀付加体について,砂岩に含まれる砕屑性ジルコンのU–Pb年代を測定した.砂岩試料は,本地域の北部北上帯の付加体において,根田茂帯との境界付近から北東側の層準にかけて4地点より採取され,それぞれ館沢試料,米内川試料,大川試料,向井沢試料と名付けられた.館沢試料及び米内川試料のジルコンは共に約190Maの最若クラスター年代を示し,両砂岩は前期ジュラ紀に堆積した可能性が高い.大川試料のジルコンは約260Maの最若クラスター年代を示し,本砂岩は後期ペルム紀,後期三畳紀,前期ジュラ紀のいずれかに堆積した可能性がある.向井沢試料のジルコンは約170Maの最若クラスター年代を示し,本砂岩は中期ジュラ紀に堆積した可能性が高い.