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地質調査研究報告 Vol.68 No.6(2017)

表紙

珪藻化石 Thalassiosira yabei (Kanaya) Akiba & Yanagisawa
(直径28 µm.焦点を上方・下方に合わせた光学顕微鏡写真,試料TBII68 = Sado258, NPD5C帯, 質場川Ⅱセクション)

珪藻化石Thalassiosira yabei (Kanaya) Akiba & Yanagisawa 新潟県佐渡島に分布する中新統中山層の珪藻質泥岩から産出した珪藻化石Thalassiosira yabei (Kanaya) Akiba & Yanagisawaの標本の写真である.本種は珪藻化石層序研究の先駆者の一人である金谷太郎博士によって,1959年にCoscinodiscus yabei Kanayaとして記載された.本種の特徴は,珪藻殻の表面に顕著なうねりがあり,片方が凸,反対側が凹となっていることである.その後,本種は1986年にThalassiosira属に移され,後期中新世の珪藻化石帯Thalassisira yabei帯(NPD5C)の承名種として,珪藻化石層序において重要な役割を果たしてきた.

(写真・文:柳沢幸夫,渡辺真人)

目次

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タイトル著者PDF
論文
大佐渡地域南部に分布する新第三系堆積岩類の層序の改訂 柳沢幸夫・渡辺真人 68_06_01.pdf [2.3MB]
大佐渡地域南部に分布する新第三系の海生珪藻化石層序 柳沢幸夫・渡辺真人 68_06_02.pdf [10MB]

要旨集

大佐渡地域南部に分布する新第三系堆積岩類の層序の改訂

柳沢幸夫・渡辺真人

 新潟県佐渡島の大佐渡地域南部に分布する新第三系~ 第四系堆積岩類は,これまで下戸層,鶴子層,中山層,河内層,貝立層及び質場層に区分されてきたが,この研究では,珪藻化石年代層序の詳しい研究成果に基づいて,矛盾や問題のあった新第三系堆積岩類の層序区分を改訂し,新たな層序学的枠組みを提案した.従来の下戸層は分割して下部を下戸層(再定義)とし,従来の下戸層上部を「羽二生川層」として独立した地層とした.また,硬質泥岩からなる鶴子層を廃止し,硬質泥岩層を珪藻質泥岩からなる中山層に含め,中山層を再定義した.さらに,従来の中山層上部に認められる海緑石層より上位の無層理塊状泥岩を従来の中山層から分離し,新たに独立した地層として「野坂層」を設定した.この結果,大佐渡地域に分布する新第三系~第四系堆積岩類の層序は,下位より下戸層,羽二生川層,中山層,野坂層,河内層,貝立層及び質場層となった.

大佐渡地域南部に分布する新第三系の海生珪藻化石層序

柳沢幸夫・渡辺真人

 新潟県佐渡島の大佐渡地域南部に分布する新第三系堆積岩類の珪藻化石層序を確立した.この地域の新第三系及び更新統の堆積岩類は下位より,下戸層・羽二生川層・中山層・野坂層・河内層・貝立層及び質場層からなる.このうち,本研究では中山層と野坂層の珪藻化石を検討した.中山層は下部が硬質泥岩,上部が珪藻質泥岩からなり,珪藻化石帯の NPD5B帯から NPD6A帯に対比され,年代は12.3–6.5 Maと推定される.野坂層は海緑石層を介して中山層を整合に覆い,塊状泥岩からなる.本層は珪藻化石帯の NPD7Ba亜帯から NPD7Bb亜帯に対比され,堆積年代は6.5–4.2 Maと算定される.広く分布するArcid-Potamid 貝類群集の年代から,下戸層の年代は17.0–16.7 Ma の年代区間の中にあると推定される.下戸層及び中山層の年代から,羽二生川層の堆積年代は16.7–12.3 Maと推定され,羽二生川層の海緑石層は最大400万年以上もの時間を代表し,この期間で堆積が停滞していたことを示す.