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地質調査研究報告 Vol.68 No.1(2017)
表紙
大山火山主峰の弥山溶岩ドーム
大山火山は鳥取県西部にある東西約35km,南北約30kmの大型の第四紀複成火山である. 最高峰の剣ヶ峰(標高1,729m)を含む弥山溶岩ドームはデイサイト質で,その噴出量は国内最大規模を誇っている.山麓に広がる同溶岩ドーム起源の火砕流堆積物からは28.6千年前の放射性炭素年代が新たに得られた.南上空からの斜め写真.2014年10月撮影.
(写真・文:山元孝広)
目次
全ページ PDF : 68_01_full.pdf [24MB]
タイトル | 著者 | |
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論文 | ||
大山火山噴火履歴の再検討 | 山元孝広 | 68_01_01.pdf [8MB] |
短報 | ||
北海道沼田町の幌新太刀別川支流で産出した鯨類化石の珪藻化石年代 | 渡辺真人・田中嘉寛 | 68_01_02.pdf [1.5MB] |
要旨集
大山火山噴火履歴の再検討
山元孝広
大山火山は山陰地方に位置する大型のデイサイト質成層火山である.この火山は約6万年前の大山倉吉降下火砕堆積物(DKP)に代表されるような日本列島沿いに大規模な火砕物を降下させる噴火を更新世に度々起こしたことで知られている.大山火山の既存研究には層序学的な問題や評価手法上の問題が残されているため,本研究では噴火履歴を定量的に見直した.まず,層序学的問題では,最新期の噴火を弥山溶岩ドームの形成とするものと三鈷峰溶岩ドームの形成とする異なる文献が存在した.新たに実施した放射性炭素年代測定の結果は,弥山噴火が28.6千年前,三鈷峰噴火が20.8千年前となり,後者が最新期の噴出物であることが確実になった.次の問題は,須藤ほか(2007)のデータベースに記載された大山火山起源降下火砕堆積物の体積評価手法である.この手法では既存文献の堆積物等層厚線を図学的に書き直すことで体積を求めているが,実際には分布する遠方の火砕物を無視しており,計測された体積は相当な過小評価になっている.そのため,降下火砕堆積物の体積はLegros(2000)や他の手法を用いて再計測し直している.今回の計測値を用いて作成した積算マグマ噴出量階段図では,10万年前頃からマグマ噴出率が大きくなる傾向が認められ,その中でDKPが発生したように見ることが出来る.
北海道沼田町の幌新太刀別川支流で産出した鯨類化石の珪藻化石年代
渡辺真人・田中嘉寛
北海道沼田町からは大型水生脊椎動物化石を多産し,それらの化石の時代論が細かく議論されている.その多くは鮮新世の幌加尾白利加層上部に由来する化石であり,同層の下部から産出した化石記録の報告は少ない.幌加尾白利加層下部の砂質泥岩中には炭酸塩ノジュールが多数含まれ,産出地点から見てそれらの炭酸塩団塊の一つとみなし得る鯨類化石(NFL 2083)を含む転石中の珪藻化石を分析した.その結果,NFL 2083は,Neodenticula kamtschaticaを産出せずNitzshia pliocenaを産出しThalassionema schraderiをわずかに産出することから,Rouxia californica帯(NPD 7A)の下部に位置づけられ,その年代は7.7–6.8 Ma(中新世後期)に相当する.これによって本試料の時代が明らかになるとともに,その層序学的位置づけについて次のような問題があることがわかった.NPD 7Aは幌加尾白利加層の下位の増毛層に相当することが知られているが,NFL 2083 の産地には下部幌加尾白利加層の下部が分布している.この不一致に対しては2つの可能性が考えられる.1.NFL2083を含むノジュールは,もともと増毛層中で生成し,幌加尾白利加層中に二次的にもたらされた.2.調査地域付近で幌加尾白利加層最下部とされてきた地層は,年代的には本試料産出地点の西方に分布する増毛層に相当する.
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