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地質調査研究報告 Vol.67 No.4 (2016)

表紙

香川県観音寺市に分布する和泉層群滝久保層の凝灰質泥岩

香川県観音寺市に分布する和泉層群滝久保層の凝灰質泥岩 上部白亜系の海成層である和泉層群は,西南日本の中央構造線の北側に細長く分布し,領家変成岩や深成岩を不整合に覆う浅海成の北縁相と深海成の主部相とに区分される.香川県観音寺市周辺地域に分布する主部相の滝久保層の堆積年代を推定するために,放散虫化石分 析を実施した.写真の露頭は,讃岐山脈雲辺寺山北麓の滝久保層の凝灰質泥岩である.写真中央に見られる上方細粒化と侵食性底面を示す凝灰岩薄層の上位から,放散虫化石が産出した試料(ID60:GSJ R109145)を採取した.この凝灰岩の直下(5cmスケールのすぐ上)にはイノセラムス化石の断面が見えており,本露頭は大型化石と微化石の両方を産出する.本露頭を含む複数の地点から産出した放散虫化石は,観音寺地域における滝久保層の堆積年代が後期白亜紀の後期カンパニアン期の前期であることを示している.

(写真・文:野田 篤)

目次

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タイトル著者PDF
論文
北海道然別地域産の蛍光を呈するオパール標本の化学組成の検討 金井 豊・立花好子・青木正博・岡崎智鶴子・乙幡康之・三田直樹・松枝大治 67_04_01.pdf [1.8MB]
乾式磁力選鉱および分級による粘土質風化花崗岩からの脱鉄の検討 綱澤有輝・須藤定久・高木哲一 67_04_02.pdf [1MB]
概報
四国東部観音寺地域の和泉層群から産出した後期白亜紀放散虫化石群集 野田 篤・栗原敏之 67_04_03.pdf [4.2MB]

 

要旨集

北海道然別地域産の蛍光を呈するオパール標本の化学組成の検討

金井 豊・立花好子・青木正博・岡崎智鶴子・乙幡康之・三田直樹・松枝大治

 北海道の然別しかりべつ地域に産する蛍光を呈する2つのオパール標本について,色調の異なる層状部分の化学分析を行った.化学元素と蛍光色の間に明確な関係は見い出せなかったが,化学組成についての特徴を明らかにすることができた.すなわち,不純物としてLi,Be,Ga,As,Rb,Csなどが数100 ppm,Sbが数1,000 ppmの濃度で存在していた.また,一つの試料中の異なる蛍光色を呈する部位にもかかわらず,Na,K,Li,Rb,Csのアルカリ元素やCa,Sr,Baのアルカリ土類元素は,あまり大きな濃度変動を示さなかった.蛍光現象の解明のためには,研究対象を有機化合物などに拡大した研究が必要である.

乾式磁力選鉱および分級による粘土質風化花崗岩からの脱鉄の検討

綱澤有輝・須藤定久・高木哲一

 「青サバ」と呼ばれる未利用の低品位粘土質花崗岩は鉄分を含む有色鉱物を有するものの,蛙目がいろめ粘土の代替原料として期待されている.これまでの予察的な研究により,青サバに含まれる10%程度のカオリン質粘土は水簸すいひによって回収可能であることが判明している.そこで,本研究では,90%を占める青サバを水簸した後の残渣を対象とし,有色鉱物に粒度特性があることに着目し,ふるい分けによる分級およびレアアースロールセパレータによる磁力選鉱で,残渣からの脱鉄を試みた.残渣の比較的大きな粒群には,有色鉱物が含有していないことが判明し,分級によって有色鉱物を適切に除去された.また,磁力選鉱では,粒度に依らず,鉄分を含む有色鉱物を良好に除去・回収された.したがって,乾式条件下では,分級および磁力選鉱を用いて適切かつ簡便に鉄分を含む有色鉱物を残渣から除去・回収できることが明らかになった.

四国東部観音寺地域の和泉層群から産出した後期白亜紀放散虫化石群集

野田 篤・栗原敏之

 四国東部の観音寺かんおんじ地域に分布する和泉層群から採取した泥岩について放散虫化石分析を行った.全19試料を処理したうち,14試料から放散虫化石を得た.
 多くの試料がDictyomitra koslovaeAmphipyndax tylotusを含むと同時に,Clathrocyclas tintinnaeformisMyllocercion acinetonClathrocyclas gravisを含まないことから,山﨑(1987)のAmphipyndax tylotus群集帯(AT群集帯),Hollis and Kimura(2001)のAmphipyndax tylotus間隔帯(At 間隔帯)及びHashimoto et al.(2015)のArchaeodictyomitra lamellicostata帯(Al帯)に対応する.このことから,本地域における和泉層群の堆積年代は後期白亜紀の後期カンパニアン期の前期と推定される.