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地質調査研究報告 Vol.66 No.5/6 (2015)
表紙
北方から望む口永良部島火山山頂部とGPS観測点の位置
口永良部島は鹿児島県の屋久島の西北西約12kmに位置する火山島である.最近の活動中心の新岳が2014年8月3日,34年ぶりに噴火した. 1999年以後に火山性地震,山体変形,磁気異常,火山ガス増加等の火山活動の高まりを示す様々な現象が現れたため,2004年から火口近傍を含む複数箇所でGPS による地盤変動観測を続けてきた.水蒸気噴火を繰り返してきた山体の噴火直前までの貴重なデータが得られた.
詳細は研究論文(本号)を参照されたい.
(2010年2月撮影の斜め空中写真:松島喜雄・文:斎藤英二)
目次
全ページ PDF : 66_05_full.pdf [4.3MB]
タイトル | 著者 | |
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論文 | ||
GPS連続観測による口永良部島火山の2014年噴火10年前からの地盤変動 | 斎藤英二・井口正人・松島喜雄 | 66_05_01.pdf [3.1MB] |
地質調査総合センターにおけるエアロゾル中の天然及び人工放射性核種の長期観測(2011年-2014年) | 金井 豊 | 66_05_02.pdf [1MB] |
要旨集
GPS連続観測による口永良部島火山の2014年噴火10年前からの地盤変動
斎藤英二・井口正人・松島喜雄
2014年8月3日に噴火した口永良部島(くちのえらぶじま)火山の山頂部において,GPS連続観測を噴火直前までの約10年継続して行った.最も近接した観測点は火口までの距離が約230mであるものの,噴火前1ヶ月間の短期間に前兆を示す変位は捉えられなかった.しかし長期的にみると,全期間で4回,山頂域の膨張を示唆する変位を観測している.それぞれのイベントは数 cmの変位に数ヶ月かかる緩慢なものであるが,その変位は累積していった.初期のイベントは明瞭な地震の増加を伴ったが,後期になると地震活動の高まりはほとんど見られなくなった.イベントの間隔は次第に長くなるとともに,2009年頃から長期的トレンドに加えて微少な変動が混在するようになり,この頃から変動のパターンが変化した.詳細な解析により,山頂部の変動は下部地盤の西変位の上に火口浅部の放射状の変動が重なることによって現れていることが明らかになった.2013年からは火口浅部の変動は,膨張からほとんど停止ないし収縮傾向に転じている.さらに山頂部の2観測点に共通の変動が観測されるようになったことから,山頂部のやや深い場所に別の変動源が現れた可能性がある.
地質調査総合センターにおけるエアロゾル中の天然及び人工放射性核種の長期観測(2011年-2014年)
金井 豊
物質循環に関する地球化学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,地質調査総合センターにおいてエアロゾル中の放射性核種の観測を2011年から2015年1月まで継続して行ってきた.前報告に引き続き2014年1月から2015 年1月までの観測データを報告すると同時に,これまでの長期にわたる観測結果を総括した.更に,2013年の途中から1年半以上にわたるエアロゾルの重量測定結果も報告した.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2011年10 月には4月時点より3桁ほど低下して10-4Bq/m3前後を推移し,2012年,2013年,2014年の春季に段階的に低下傾向を示し,2015年1月のCs-137濃度は10-5Bq/m3前後となった.このような春季における濃度低下は,気象条件の変化が変動因子の一つと考えられた. Pb-210とBe-7は,お互いに相関を有しながら夏季と冬季に低濃度となる傾向が見られた.また,微量のCe-141, Ce-144,Sb-125 等も2011 年における一部試料で検出された.
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