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地質調査研究報告 Vol.65 No.11/12 (2014)

表紙

エアロゾルのサンプリングに活躍するサンプラー

エアロゾルのサンプリングに活躍するサンプラー 地質調査総合センターのある第7事業所の7-8棟屋上に設置されているエアロゾルサンプラーである.2000年から2004年にかけて実施された日中共同研究において,黄砂などのダストイベントを観測するために設置された(詳細は,本誌第54巻p.251-267,p.303-322や第56巻p.259-272,p.273-301などを参照).向かって左側がハイボリュームエアサンプラーで,右側がアンダーセン型ローボリュームエアサンプラーである.風雨にさらされて老朽化が進んでいるが,2011年の福島第1原子力発電所の事故以来,再びエアロゾルの観測に使用されている.後ろに見えるのは,筑波山である.

(写真・文:金井 豊)

目次

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タイトル著者PDF
論文
1946年南海地震前に四国太平洋沿岸部で目撃された井戸水及び海水位の変化 梅田康弘・板場智史 65_11_01.pdf [2.1MB]
GSJ におけるエアロゾル中放射性核種の2013 年観測と再飛散に関する検討 金井 豊 65_11_02.pdf [946KB]

 

要旨集

1946年南海地震前に四国太平洋沿岸部で目撃された井戸水及び海水位の変化

梅田康弘・板場智史

  1946年南海地震直前の地殻の上下変動を知るため,それに関連すると思われる井戸の水位と海水位の変化に関する目撃証言を調べた.証言の収集は,四国太平洋沿岸部において,文献調査と聞き取り調査によって行った.ごく一部の井戸ではあるが,本震の1週間ほど前から井戸の水位が低下,ないしは涸れていた.海水位の変化も数日前から潮が狂うなど海水位の異常が目撃されていた.
 本震の数時間前には,帰港した漁船が接岸できないほど潮位が低下したという証言もある.逆に,そのような海水位低下はなかったという,相反する証言もある.異常な海水位の変化や,相反する証言を説明するため,本震前に津波が発生していた可能性を指摘した.

GSJ におけるエアロゾル中放射性核種の2013 年観測と再飛散に関する検討

金井 豊

 物質循環のトレーサーとしての地球科学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)においてエアロゾル中の放射性核種の観測を2013年も継続して行った.前報告(本誌,vol.63(3/4) p.107-118,及びvol.64(5/6), p.139-150)に引き続き2013 年1月から2013 年12月までの観測データを報告する.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2013年は3月頃に幾分高まったが,4月以降は幾分低下傾向を示した.2012年も同様に4月頃より低下しており,北よりの風から南よりの風に変わり降雨の日が多くなった気象条件の変化が変動因子の一つと考えられた.2012年以降は原発からの影響よりも観測点周辺に沈積した粒子の再飛散と移動による影響因子が相対的に重要と考えられ,Cs-137濃度とCs-137/Pb-210比との関係が再飛散を示唆する有効なパラメータの一つとなる可能性があると考えられた.