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地質調査研究報告 Vol.65 No.3/4 (2014)
表紙
フランス地質・鉱山研究所(Bureau de Recherches Geologiques et Minieres, BRGM)
BRGMはパリ市内から130㎞ほど南下したオルレアンにメインキャンパスを有する.
BRGMは数ある世界の地質調査所の中で,OneGeologyの運用を技術支援していることで特に知られているが,フランス国内においては地質のデータのみならず,様々な地理空間データの配信機能も担っている.これらの配信システムはオルレアンのキャンパス内で運用している.
産総研地質調査総合センターは本年6月にBRGMとの個別MOUを締結し,地震,地質情報,沿岸域,気候変動,地熱,CCS,土壌汚染,地下水といった研究分野での協力を強化する予定である.
(写真:内田利弘,文:岩男弘毅)
目次
全ページ PDF : 65_03_full.pdf [7MB]
タイトル | 著者 | |
---|---|---|
論文 | ||
Variation of mineralogical compositions in sequential extraction procedure adapted to geochemical reference materials (sediment series) | Atsuyuki Ohta and Ran Kubota and Takashi Okai | 65_03_01.pdf [2.3MB] |
概報 | ||
筑波花崗岩と旧筑波町に残る石造物の帯磁率 | 長 秋雄 | 65_03_02.pdf [0.9MB] |
沖積層の基底にみられる起伏地形:その成因の予察的解釈 | 田辺 晋・石原 武志・小松原 琢 | 65_03_03.pdf [1.5MB] |
フランス地質・鉱山研究所と地質調査総合センターのオープンデータ政策への対応の比較 | 岩男 弘毅・吉川 敏之 | 65_03_04.pdf [0.7MB] |
要旨集
地球化学標準物質(堆積物シリーズ)に逐次溶解法を適用した際に生じる鉱物組成変動
太田充恒・久保田蘭・岡井貴司
我々は Community Bureau of Reference (BCR)によって確立された逐次溶解法を, 8 つの日本の地球化学標準物質へ適用す ることを試みた. この方法は, step 1 で交換態・炭酸塩態, step 2 で鉄水酸化物態・マンガン酸化物態, step 3 で金属硫化物態・有機物態をそれぞれ分解抽出する事を目的としている.本研究では,未処理の試料と各stepで抽出作業を行った後の残渣試料に対してX線回折(XRD)パターンを調べることで,抽出目的相が適切に分解されているかを確認することを目的とした. JSd-1 とJSd-3 に対してBCR法を適用した際, XRDパターンには有意な変化は認められなかった. この結果は,これらの物質に含まれる元素の多くがBCR法によってほとんど抽出されなかった事実と調和的である. これに対し, JSd-4, JMs-1, JMs-2 に含まれる方解石由来のピークは step1 適用後にXRDパターンから全て消滅した. この結果は, step 1の目的相が十分に分解されたことを示す. JLk-1 や JMs-2 では,高い濃度の鉄とマンガンが step 2 で抽出される. しかし, 鉄水酸化物態・マンガン酸化物は明瞭なピークをXRDパターンに示さないため,これらの物質が step 2 で十分に分解されたかどうかを明らかにすることは困難であった. 一方, JMs-1 中のパイライトのピークが step 3 抽出後に消滅した事から,硫化物がこの過程で適切に分解される事が明らかとなった. また, JSO-1 において, step 3 抽出後に石英や斜長石のピーク強度(X線回折強度)が大きく増加することが認められた. step 3 以前では有機物が鉱物表面を厚く覆っているために, 鉱物からのX線回折強度を下げていたためと推測された. 従って,間接的な証拠であるものの, step 3 抽出手順において有機物が適切に分解除去されたと言える. これらの結果より, BCR法によって地球化学標準物質から目的物質を適切に分離抽出することが可能であることが確認された.
筑波花崗岩と旧筑波町に残る石造物の帯磁率
長 秋雄
沖積層の基底にみられる起伏地形:その成因の予察的解釈
田辺 晋・石原武志・小松原 琢
多数のボーリング柱状図資料から読み取った沖積層基底深度の分布を内挿法によって描写することで,近年日本全国の平野地下の沖積層基底に起伏地形が存在することが明らかにされつつある.しかし,これらの起伏地形はボーリング柱状図資料の不完全な記載によるものとして従来は捨象されてきた.最近の沖積層基底礫層の年代と海水準変動曲線に基づくと,これらの起伏地形は複数の海洋酸素同位体ステージの開析谷と埋没段丘が重複した結果と解釈され,本来的に形成された可能性が高い.
フランス地質・鉱山研究所と地質調査総合センターのオープンデータ政策への対応の比較
岩男 弘毅・吉川 敏之
オープンデータ政策に対するフランス地質・鉱山研究所(BRGM)の取り組みと,産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)の取り組みを比較検討することで,今後GSJが社会に対して地質データを提供していくうえで取り組むべき技術的課題,整備すべき制度を考察することが本報告の目的である.今回着目したBRGMは縮尺100万分の1の世界地質図をインターネットで配信する国際プロジェクトOneGeologyの運用を技術支援しており,地質図のデジタル配信分野で先進的な機関の一つである. フランス政府が進めるオープンデータ,あるいは欧州議会が定めた欧州域内の地図・空間情報の統合・共有政策の潮流の中で,BRGMが進めている地質データ管理・提供の動向を検証し,今後GSJがデータ配信に関して取り組むべき技術的な課題について明らかにした.一方で,BRGMは組織設立の経緯から,官と民の両方の立場をとっており,配信ルール,あるいは著作権運用ルール等を含む制度の整備の面ではBRGMよりもGSJのほうが容易であることが分かった.
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