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地質調査研究報告 Vol.62 No.11/12 (2011)
表紙
北麓から見たハッサン火山
トルコ中部アナトリアには、大型成層火山、単成火山群、および大規模火砕流堆積物からなる台地などの火山地形がみられる。ハッサン火山 (3,268 m または3,253 m) はその中ほど西よりにある複合成層火山である。北麓の、洞窟教会が多数あることで知られるウフララ付近からは、溶岩流や砕屑堆積物地形がよく認められる。この右には側火山もある。トルコの地質調査所に相当する機関、鉱物資源調査局 (MTA) との地熱資源に関わる共同的な研究の一環として、噴出物について古地磁気測定を行った結果、地形的にも新しいと判断されるハッサン火山の岩石はブリュンヌ正磁極期に対応し、既存の放射年代測定値及び古地磁気年代尺度と整合的な結果が得られた。筆者調査時には訪れる人のないさびしい山であったが、近年登山者のための施設ができるなど観光客も訪れるようになったようである。
( 写真・文:須藤 茂)
目次
全ページ PDF : 62_11_full.pdf [23.1MB]
タイトル | 著者 | |
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論文 | ||
トルコ、中部アナトリアの地熱地域の火山岩の古地磁気調査概要 | 須藤 茂 | 62_11_01.pdf [4MB] |
富士火山東斜面における最新期火山噴出物の層序 | 山元孝広・中野 俊・高田 亮・小林 淳 | 62_11_02.pdf [12.3MB] |
Granitic Pegmatite of the Umanotani-Shiroyama Quartz-Feldspar Mine, Shimane Prefecture, Southwest Japan | Makoto Watanabe, Kenichi Hoshino, Kazuki Yamaguchi, Shoji Kihara, Osamu Matsubaya, Hirotsugu Nishido and Shunso Ishihara | 62_11_03.pdf [1.3MB] |
Middle and Late Permian radiolarians from the Nanjo Mountains, Fukui Prefecture, Southwest Japan | Satoshi Nakae | 62_11_04.pdf [4.4MB] |
1946 年南海地震前の井戸水の減少から推定される土地の隆起量 ―高知県黒潮町佐賀地区を例に― |
梅田康弘・板場智史 | 62_11_05.pdf [1.1MB] |
資料・解説 | ||
Trace and rare earth elements compositions of granitic rocks in Awaji Island, Southwest Japan Arc | Masaki Yuhara, Sakae Sano and YutakaTakahashi | 62_11_06.pdf [1MB] |
要旨集
トルコ、中部アナトリアの地熱地域の火山岩の古地磁気調査概要
須藤 茂
トルコ中部アナトリアには、大型成層火山、単成火山群、及び大規模火砕流堆積物からなる台地などの火山地形がみられる。それらは過去1 千万年程度の間に噴出し、東西約200 km、南北約150 km の範囲内に複雑に分布している。比較的新しい大型成層火山として、ハッサン火山とエルジエス火山があり、単成火山群は、溶岩円頂丘、溶岩流、火砕丘、マールからなる。トルコの地質調査所に相当する機関、鉱物資源調査局 (MTA) との地熱資源に関わる共同的な研究の一環として、それらの火山岩のうち比較的新しい噴出物について古地磁気測定を行った。その結果、地形的にも新しいと判断されるハッサン火山の岩石はブリュンヌ正磁極期に、より古い年代が得られているギョルダーの試料は松山逆磁極期に対応するなど、既存の放射年代測定値及び古地磁気年代尺度と整合的な結果が得られた。また、ハッサン火山の山腹に分布する未固結な火砕堆積物については、各岩塊の磁化方位がそろっていることから、現地調査において、堆積時にも高温であったと推定されることなどを確認した。
富士火山東斜面における最新期火山噴出物の層序
山元孝広・中野 俊・高田 亮・小林 淳
富士山の御殿場口-須走口登山道間の東斜面に分布する噴出物の層序を見直した結果、同域の噴出物の多くが、従来の見解とは異なり、過去2千年間に噴出したものであることが明らかになった。しかも、この中には明らかに東山腹から平安時代に噴出したものが少なくとも3つ含まれている。
島根県益田市の馬の谷−城山鉱山の花崗岩ペグマタイトについて
渡辺 洵・星野健一・山口和樹・木原昌二・松葉谷 治・西戸裕嗣・石原舜三
馬の谷−城山鉱山のペグマタイト鉱床 (長石および石英) は、本邦最大の生産量を有し、約97 Ma のチタン鉄鉱系の真砂花崗岩中に胚胎する。鉱体は、母岩である黒雲母花崗岩から内側に向かってその距離に応じて、次のように分帯される:(1) 周縁帯、(2) 漸移帯、(3) 中央帯。肉眼での結晶粒径は、この順番で増大し、その結果、巨大に成長した石英の結晶は中央帯にのみみられる。馬の谷-城山鉱山の鉱石は、単純な鉱物組合わせで特徴づけられ、石英とカリ長石が卓越し、微量の白雲母と斜長石を伴う。以下に述べる一連の証拠から、本鉱床が典型的な花崗岩ペグマタイトであり、真砂花崗岩をもたらした花崗岩マグマの末期の結晶・分化作用の産物であると結論される:(1) 真砂花崗岩と鉱床との密接な時間的・空間的随伴関係 (約95 ~ 90 Ma)、(2) 鉱体内で、カリ長石と石英との“文象構造”の存在、(3)“鉱石石英”および“鉱石カリ長石”中にメルト・インクルージョンの存在、(4)“鉱石カリ長石”中にパーサイト (その組成から約500-300 ℃での離溶を示唆)の存在、(5)“鉱石石英”の酸素同位体組成が、周りの黒雲母花崗岩のそれを受け継いでいること。二種類のメルト・インクルージョン (一つはインクルージョンの全容量の約80 %以上をいくつかの娘鉱物が占めるもの (±気泡) と、もう一つはその全容量の30-50 % を占める大きな気泡をもつもの) が共存することは、低圧条件で、シリカに富むメルトと流体との間の混和を示すものかもしれない。石英の酸素同位体組成 (δ18O) は、関連する火成岩中であれ、“鉱石石英”であれ、ほとんど同じ (約+12 ‰) である。一方、火成岩中のカリ長石の酸素同位体組成は約+11 ‰であるのに対して、“鉱石カリ長石”は約+7-+8 ‰とかなり“同位体的に軽く”なっている。この事実は、石英とカリ長石の間の酸素の交換反応速度の違いによるものと考えられる。多量の気−液2相包有物が、“鉱石石英”、“鉱石カリ長石”および関連火成岩中に観察される。 この事実は、熱水流体-恐らくは真砂花崗岩マグマから放出されたマグマ流体と循環天水の混合物とみられる-が、主にペグマタイト形成の末期に、本マグマ−熱水系に間隙を通して侵入し、鉱体の中を循環したことを強く示唆する。“鉱石石英”中にトラップされた2 相包有物の均一化温度 (圧力補正はされていない) は、以下の通りである:(1) 250-400 ℃ (周縁帯)、(2) 230-370 ℃ (漸移帯)、(3) 240-340 ℃ (中央帯)。また、末期の熱水流体の循環は、本マグマ−熱水系内部では、石英のδ18O値に影響を与える程には、長期間継続はしなかったと、考えられる。
西南日本,福井県南条山地からの中期−後期ペルム紀放散虫
中江 訓
福井県内に位置する南条山地には、玄武岩・石灰岩・チャート・泥岩・砂岩などの様々な岩石からなる堆積岩複合体が主に分布する。最近30年間にわたり泥岩から産出した中生代放散虫化石が多数報告されてきたが、古生代放散虫化石の産出報告はわずかなため、古生代岩石の岩相-年代に関する情報は充分に得られているとは言い難い。本研究では、南条山地の凝灰質泥岩・珪質泥岩・チャートから産出した放散虫化石群集 (Albaillella, Pseudoalbaillella, Follicucullus, Latentifistula, Cauletella, Ishigaum, Raciditor, Pseudotormentus, Stigmosphaerostylus, Srakaeosphaera) を記載し、その多くが中期ペルム紀から後期ペルム紀を代表するものであることを示す。更に、これらの放散虫化石は、南条山地の堆積岩複合体に対し時代的制約を与えることができる点で重要である。
難読・重要地名等
Asuwa:足羽,Ikeda:池田,Ito-o:糸生,Minamiechizen:南越前,Mino:美濃,Nanjo:南条,Nishitani:西谷,Omodani:面谷,Shizuhara:志津原,Ultra-Tamba:超丹波,Waridani:割谷,Yaotome:八乙女
1946 年南海地震前の井戸水の減少から推定される土地の隆起量
―高知県黒潮町佐賀地区を例に―
梅田康弘・板場智史
1946 年南海地震 (M8.0) の前に井戸水が2-3 m 低下したという証言が、四国から紀伊半島の太平洋沿岸部で得られている。梅田ほか (2010) は、海水と淡水が重力バランスをとっている小さな三角洲などではわずかな土地の隆起でも大幅に地下水位が低下することを示した。このモデルと高知県黒潮町佐賀地区での地下水構造の調査結果を基に、土地の隆起量と地下水位の低下量との関係式を求めた。
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