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地質調査研究報告 Vol.58 No.7/8 (2007)
表紙
阿武隈山地の斑れい岩からなる山頂群
阿武隈山地のほぼ中央に位置する黒石山 (標高 865 m) の山頂から北側の眺望。正面の山体は片曽根山 (標高 719 m)、右後方のピークは移ヶ岳 (標高 994 m)、正面やや左遠方の山体は麓山 (標高 897 m) で、いずれもその山頂から中腹にかけては斑れい岩からなる。斑れい岩体の外縁部が標高 700 〜 600 m に位置する場合は、その母岩である花崗閃緑岩中には多量の変成堆積岩が含まれることが多く、外縁部が標高 500 m 以下に位置する場合には細粒閃緑岩 (暗色包有物) との混成岩相が発達する事が多い。これは各斑れい岩体が阿武隈花崗岩の天井を構成する変成堆積岩類から下方に突出するルーフペンダントであることを示唆している。
(久保和也)
目次
タイトル | 著者 | |
---|---|---|
論文 | ||
Preliminary study for speciation geochemical mapping using a sequential extraction method | Atsuyuki Ohta, Noboru Imai, Shigeru Terashima and Yoshiko Tachibana (201-237) | 58_07_01.pdf [590 KB] |
物理定数から見た白亜紀 ‐古第三紀花崗岩類- その2. 東北地方南部 |
金谷 弘・大熊茂雄 (239-252) | 58_07_02.pdf [865 KB] |
概報 | ||
関東山地東縁、青梅市成木崩壊地の地形、堆積物の特徴と崩壊の発生時期の推定 | 植木岳雪 (253-259) | 58_07_03.pdf [2,693 KB] |
要旨集
Preliminary study for speciation geochemical mapping using a sequential extraction method
Atsuyuki Ohta, Noboru Imai, Shigeru Terashima and Yoshiko Tachibana
有害元素の潜在的危険性や堆積物中の金属元素の存在形態・移動性などを評価するにあたり、逐次溶解法は有効である。本研究では、The Community Bureau of Reference (BCR) によって開発された抽出手順 (手順 1 〜 4) を、主として全国地球化学図作成用に採取された日本の河川堆積物へ適用することを試みた。BCR 法を 30 河川堆積物中の 51 元素の抽出に適用したところ、良好な結果を得たので報告する。BCR 法は対象とした相 (物質) に含まれる元素を、酢酸 (手順 1)、塩酸ヒドロキシルアミン (手順 2)、過酸化水素・酢酸アンモニウム (手順 3)、フッ酸・過塩素酸・硝酸 (手順 4) を用いて抽出する事を目的としている。BCR 法を用いた繰り返し測定の再現性については、3 種類の地球化学標準物質 (JSd-1、-2、-3) を用いて検討を行った。その結果、各抽出段階における元素濃度の分析誤差はおおむね 10 〜 25 %以下で、回収量 (各手順で抽出された元素濃度の合計) は、ほとんどの場合 80 〜 130 % であった。各元素の逐次溶解法の結果は、河川堆積物の供給源である地質・岩相が様々に異なっていても違いはほとんど見られなかった。この結果は、地質の違いが河川堆積物中の元素存在形態に与える影響は少ないことを示している。これに対し、都市域で採取された河川堆積物は、堆積岩が背景地質として分布する地域で採取された試料であるが、他の試料とは明らかに異なる抽出結果を示した。都市域で採取された試料は、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウムが非常に高い割合で手順 1 において抽出され、クロム、銅、鉛が手順 3 で抽出されるなどの特徴を示し、金属元素汚染の結果を反映していると考えられる。鉱山の近くで採取された河川堆積物もまた、特徴的な抽出結果を示した。本研究の結果より、BCR 法を用いた逐次溶解法は、クロム、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、鉛汚染の見極めや、亜鉛、カドミウム、鉛を産出する鉱床探査に大変有効であることが明らかとなった。
物理定数から見た白亜紀 ‐古第三紀花崗岩類-
その2. 東北地方南部
金谷 弘・大熊茂雄
阿武隈山地花崗岩類は阿武隈山地を北北西‐南南東に走る畑川破砕帯によって境される。畑川破砕帯は先新第三系地質体を境とする構造線とされ以東に露出する古い花崗岩類と以西に露出する新しい同質岩は明確に区別されている。また畑川破砕帯東側の双葉破砕帯及び西側の棚倉破砕帯を基準として大まかに 3 つに分け、畑川破砕帯と棚倉破砕帯間の南部 (北緯 37 度 10 分以南) には変成岩が共存することから、最終的には 4 地域に分けて物理定数の結果を検討した。
結果は以下のようである。
阿武隈山地畑川破砕帯以東についてその密度をみるとその変化範囲は 2.62 〜 2.82 (g /cm3 = × 103 kg/m3)、平均 2.69 (g /cm3) で、それに対し以西は同 2.57 〜 3.16 (g /cm3)、 2.70 (g /cm3) そして南部は同 2.61 〜 2.97 (g /cm3)、2.74 (g /cm3) である。これは畑川破砕帯以西に密度の大きい斑れい岩類が多く含まれるが、南部地域は大きな密度の試料の割合が多いことを意味している。孔隙率は三地域いずれも大差なく平均値、最頻値とも 0.7 %台であり、南部地域は 0.6 %台である。
磁化率についてみると、阿武隈山地東部双葉破砕帯以東、太平洋までの間に見られる花崗岩類は、カリ長石の少ないいわゆるトーナル岩であって、密度の大きさの割には比較的磁化率の高い岩石で、双葉破砕帯 ‐ 畑川破砕帯間に見られる岩石とは異なる岩石として考えるのが妥当と思われる。双葉破砕帯と畑川破砕帯間 に露出する岩石は地域により、低い磁化率を示す岩石と、中程度の磁化率を示す岩石に分かれ、高い磁化率を示す岩石は見当たらない。次に畑川破砕帯以西も低い磁化率を示す岩石と中程度の磁化率を示す岩石とにわかれる。この地域にみられる斑れい岩類は原則として高い磁化率を示す。南部地域も畑川破砕帯以西に類似するが中程度の磁化率を示すものの割合は畑川破砕帯以西同様多くない。磁化率の強度から見た双葉破砕帯 ‐ 畑川破砕帯間の岩石は南部北上山地と比較して平均値で 0.25 程度しかなく、磁化率から見た畑川破砕帯は、地質学的に考えられている境界のような意味を持っていない。
Qn 比について阿武隈山地全域は 0.4 程度以下であり、これまでに公表されている他地域の花崗岩類と大差は無い。
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