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地質調査研究報告 Vol.58 No.3/4 (2007)
表紙
新潟県飯士火山を給源とする中期更新世降下テフラを含む風成層 (福島県下郷町鶴ヶ池)
風成層は粘土化した褐色の淘汰の悪い火山性物質を多く含んだ砂質泥からなり、クラックが発達する。露頭の上部には 16 〜 17 万年前に噴出したオレンジ色の軽石粗粒火山礫からなる燧ヶ岳七入テフラがある。また、下部には白色の軽石細粒火山礫からなる飯士高杖テフラ (層厚 50 cm) がある。その噴火年代は 25 〜 28 万年前で、MIS8 の気候段丘の指標となる。
(山元孝広)
目次
タイトル | 著者 | |
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論文 | ||
関東地域の土壌、河川堆積物、東京湾堆積物の化学組成とバックグラウンド評価 | 寺島 滋・今井 登・立花好子・岡井貴司・御子柴 (氏家) 真澄・太田充恒・久保田 蘭 (69-91) | 58_03_01.pdf [5,417 KB] |
LA-ICP-MS による宝石ザクロ石の微量成分組成 : 微小領域分析用標準試料としての検討 | 福山繭子・小笠原正継・佐藤比奈子・石山大三 (93-103) | 58_03_02.pdf [435 KB] |
鹿児島県トカラ列島口之島火山の形成史と噴火活動履歴 | 下司信夫・中野 俊 (105-116) | 58_03_03.pdf [1,373 KB] |
テフラ層序からみた新潟県中期更新世飯士火山の形成史 : 関東北部での飯士真岡テフラと MIS7 海面変動の関係 | 山元孝広 (117-132) | 58_03_04.pdf [2,894 KB] |
要旨集
関東地域の土壌、河川堆積物、東京湾堆積物の化学組成とバックグラウンド評価
寺島 滋・今井 登・立花好子・岡井貴司・
御子柴 (氏家) 真澄・太田充恒・久保田 蘭
土壌及び堆積物中成分濃度に対する人為的附加を正しく評価してバックグラウンド (自然存在度) を明らかにするため、関東地域で採取された土壌 329 試料、河川堆積物 191 試料、東京湾堆積物 310 試料の主・微量成分の分析値を解析した。土壌や堆積物中の成分濃度を支配する要因としては、母岩や母材中の存在量、粒度組成、風化・続成作用に伴う移動と濃集、生物濃縮の影響等が重要である。市街地から離れた自然林の土壌中成分濃度に対する人為的附加は無視できた。畑地や水田土壌では、施肥に起因する P2O5, Cd, U の附加が認められ、公園や宅地土壌中 Pb, Zn, Sb, Sn, Hg 等の高濃度も人為的附加と考えられた。旧鉱山地域の河川堆積物では多くの成分濃度が高いが、人為的な鉱山開発が主原因であろう。超苦鉄質岩地域の堆積物は Mg, Cr, Ni 等に富むがこれは自然要因である。大都市周辺地域の河川堆積物中の Zn, Sn, Pb, P2O5, As, Hg, Cd, Bi, Cu, Sb 等濃度に人為的附加が認められた。東京湾の堆積物では、湾央‐湾奥部の柱状試料の上位層準では人為的附加により Pb, Zn, Sn, Cd, Bi, Sb, Cr 等が高濃度を示すが、湾口部の砂質堆積物ではこの影響は無視できる。 関東地域の土壌、河川堆積物、東京湾堆積物における成分濃度のバックグラウンド値を比較すると、地質試料の風化・変質過程で残留物中に保持されやすい成分 (Al2O3, TiO2, 重金属類等) は土壌中で、風化・変質に伴って移動・流失する成分 (アルカリ、アルカリ土類金属等) は東京湾堆積物中で最高濃度が得られた。
LA-ICP-MSによる宝石ザクロ石の微量成分組成 : 微小領域分析用標準試料としての検討
福山繭子・小笠原正継・佐藤比奈子・石山大三
光学的に均質な宝石として供給されているザクロ石 4 個 (GA1, GA2, GA3, GA4)、肉眼において光学的に均質だと思われるザクロ石 1 個 (GA5) の計 5 個について微量元素の微小領域分析用の標準試料としての可能性を検討した。GA5 は米国アディロンダックに産するスカルン中のザクロ石である。ザクロ石中の主要成分の均質性について EPMA を用いて検討した。GA4 と GA5 については主要成分における不均質性が認められ、標準試料として適していない。一方、LA-ICP-MS を用い、39 の微量元素の分析を行った。その結果、宝石ザクロ石のうち GA1 のみが標準試料として適切な結果を示した。
鹿児島県トカラ列島口之島火山の形成史と噴火活動履歴
下司信夫・中野 俊
口之島火山は琉球弧火山フロント上に成長した安山岩質の複成火山であり、0.3 Ma以降少なくとも 10 個の角閃石安山岩質溶岩ドームが輝石安山岩質の火山体の上に成長している。軽石流堆積物からなる大勝火砕流堆積物は約 4 万年前ごろにウエウラ火山から噴出した。大勝カルデラの形成後、横岳、南横岳、北横岳の少なくとも 3 つの溶岩ドームが形成された。複数の火砕流がこれらの溶岩ドームの形成に伴って発生し、そのうち南横岳から噴出した火砕流堆積物からは 1.9 万年前の年代が得られている。7,900 年前ごろの横岳・南横岳・北横岳の馬蹄形崩壊によって岩屋口岩屑なだれ堆積物が発生した。この崩壊地形の内部に前岳火山が成長した。落しの平、燃岳火山及びそのほかいくつかの小規模な溶岩ドームが前岳溶岩ドームの形成後に成長した。口之島火山の過去 4 万年間の噴出率はおよそ 8.5 × 104m3/yr と見積もられ、こられは琉球弧や東北日本弧火山フロントの代表的な火山に比べてかなり小さい。燃岳火山は口之島の中で最も新しい溶岩ドームである。燃岳溶岩ドームの山頂部には幾つかの爆発火口が開口しており、これらは前岳溶岩ドーム上で水蒸気爆発が繰り返し発生したことを示している。最新の水蒸気噴火は 18 世紀以降の可能性がある。
テフラ層序からみた新潟県中期更新世飯士火山の形成史 : 関東北部での飯士真岡テフラと MIS7 海面変動の関係
山元孝広
火山フロントから 60 kmの背弧域にある新潟県飯士火山の層序を見直し、海洋酸素同位体ステージ 7 (MIS7) に噴出した爆発的噴火産物を新たに見いだした。この堆積物はカミングトン閃石含有斜方輝石普通角閃石デイサイトを本質物に含む残留角礫相・塊状軽石流相・成層火砕サージ相からなり、越後湯沢火砕流堆積物と命名した。本堆積物のフィッション・トラック年代の測定結果は 0.21 ± 0.07 Ma であった。また、構成物の特徴と層序的位置から、この堆積物が関東北部で記載されていたプリニー式降下堆積物、真岡軽石の給源相と判断され、これを飯士真岡テフラと再定義した。飯士真岡テフラの上位の溶岩及び下位のテフラか らの既報放射年代値も考慮すると、飯士真岡テフラの噴火年代は 0.22 〜 0.23 Ma に絞り込める。更に、真岡軽石を含むとされた茨城県大洗の見和層中部の堆積相と構成物組成を検討した結果、見和層中部は従来考えられていたような MIS6 の低海面期の堆積物ではなく、MIS7.3 〜 7.1 の潮流口 ‐ 河川堆積物からなることを明らかにした。
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