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地質調査研究報告 Vol.54 No.9/10 (2003)
表紙
日本数値地質図データベース (シームレス地質図)「北海道」
本データベースは、全国を縮尺20万分の1の精度で統一した基準により編集した地質図情報からなり、将来的に統合される様々な地球科学情報 DB の基盤的かつ共用的な DB である。100 万分の 1 日本地質図第 3 版の凡例に基づいて作成された統一凡例で既刊の 20 万分の地質図を編集し直し、区画の境界における地質境界線のずれや属性の差異を調整し、連続性のある数値地質図を作成することを目指している。平成 15 年度は北海道地域を作成し、平成 16 年以降も順次地域ごとに作成し、Web 上で公開していく。詳細は www.aist.go.jp/RIODB/db084/ を御参照ください。
(脇田浩二)
目次
タイトル | 著者 | |
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論文 | ||
20万分の1シームレス日本地質図の変成岩統一凡例 (試案) | 宮崎一博 (295-302) | 54_09_01.pdf [2,022 KB] |
Grain-size distribution and chemical composition of water-insoluble components in aeolian dust collected in Japan in spring 2002 | Atsuyuki Ohta, Shigeru Terashima., Yutaka Kanai, Hikari Kamioka, Noboru Imai, Yukihiro Matsuhisa, Hiroshi Shimizu, Yoshio Takahashi, Kenji Kai, Masahiko Hayashi and Renjian Zhang (303-322) | 54_09_02.pdf [772 KB] |
東北日本、沼沢火山の形成史 : 噴出物層序、噴出年代及びマグマ噴出量の再検討 | 山元孝広 (323-340) | 54_09_03.pdf [1,194 KB] |
関東地方に分布する中期更新世指標テフラ TB-8 と Ky3 の対比の再検討 | 中澤 努・中里裕臣・小松原 琢・塚本 斉 (341-350) | 54_09_04.pdf [614 KB] |
要旨集
20万分の1シームレス日本地質図の変成岩統一凡例 (試案)
宮崎一博
シームレス20万分の1地質図幅のための変成岩統一凡例の作成を試みた。日本列島に分布する変成岩は島弧海溝系において、変成反応や変形作用のような複雑なプロセスを経て形成されている。結果としてその起源に対応した幅広い多様性を持つ。今回、以下の三つの単純な分類基準で変成岩を分類した。(1) 変成条件による区分、(2) 変成年代による区分、(3) 原岩岩相による区分。分類基準 (1) は変成岩形成場についての情報と構成鉱物・岩石組織についての情報を間接的に含んでいる。分類基準 (2) は離ればなれに分布する変成岩の形成時期の同時性を示唆する。分類基準 (3) は変成岩の化学組成を表し、かつ変成帯の大局的構造の表現するために必要である。上記の分類基準をマトリックス方式で表現した場合、必要な凡例数は 50 になった。将来、変成岩の原岩岩相を堆積岩・火成岩の岩相として表現し、その上に変成岩としての分類基準 (1) と (2) を重ね書きすると、さらに少数の基本的分類基準で変成岩の属性を表現できるようになる。
日本で2002年春に採取した風送ダストについて
その非水溶性成分の化学組成を粒径分布から見た特徴
太田充恒・寺島 滋・金井 豊・上岡 晃・今井 登・松久幸敬・
清水 洋・高橋嘉夫・甲斐憲次・林 政彦・張 仁健
2002年3月から5月にかけて、那覇、福岡、吊古屋、つくばの4地点で風送ダスト試料を採取し、その非水溶性成分中の化学組成を測定した。ほとんどの元素は、その粒径分布の特徴として 2.1〜7.0μm の粒径に一つのピークを示すことから、主に鉱物エアロゾルに含まれていると考えられる。しかし、Cd, Sn, Sb, Pb, Bi などの元素は 1μm よりも細かいダスト粒子に多く含まれ、人為起源の炭素エアロゾルに由来すると考えられた。
Al2O3 濃度で各元素濃度を規格化した値の粒径分布の特徴から、風送ダスト中の鉱物組成は 1μm を境に変化し、2μm より細かい粒子では人為起源物質の混入率が高くなることなどが明らかになった。次に、Al2O3 規格値の空間的及び時系列的な変化に着目すると、一部の元素に系統的な地域差、すなわち観測点周辺からの物質の混入が認められた。しかし、一度ダストイベントが発生すると、ほぼすべての元素の濃度比は試料採取地点に関係なくほぼ一定の値を示し、非常に大量の風送ダストが東アジア地域から日本へ運ばれていることが明らかになった。
東北日本、沼沢火山の形成史 : 噴出物層序、噴出年代及びマグマ噴出量の再検討
山元孝広
沼沢火山は福島県の西部、火山フロントの背後 50 km にある活火山である。本研究では噴出物層序と噴火年代を再検討し、噴出量の時間積算図を新たに作成した。本火山の噴出物層序は、約11万年前の尻吹峠火砕堆積物及び芝原降下堆積物、約7万年前の木冷沢溶岩、約4.5万年前の水沼火砕堆積物と約4万年前の惣山溶岩、約2万年前の沼御前火砕堆積物及び前山溶岩、紀元前3400年頃の沼沢湖火砕堆積物からなる。沼沢火山の総マグマ噴出量は約 5DRE km3 であるが、前半6万年間で約 1DREkm3 のマグマ噴出量であったものが、後半5万年間で残りの約 4DREkm3 のマグマが噴出している。沼沢火山のマグマ噴出率の上昇は、給源でのマグマ生産率の上昇と対応しているものとみられる。
関東地方に分布する中期更新世指標テフラ TB-8 と Ky3 の対比の再検討
中澤 努・中里裕臣・小松原 琢・塚本 斉
中期更新世指標テフラ TB-8 及び Ky3 の再記載を行った。これらのテフラはともに高屈折率の斜方輝石を含むことから同一テフラとして対比されてきたが、一方で屈折率のレンジが大きく異なるという指摘が以前からなされていた。また最近では両者は対比されないという意見もあらわれた。筆者らが両テフラを詳細に観察した結果、TB-8 は 6 層のユニットから構成され、それぞれのユニットで斜方輝石の屈折率特性が異なること、Ky3 の屈折率特性は TB-8 のいくつかのユニットの混合で説明できることが明かとなった。また TB-8 及び Ky3 のそれぞれの上位に挟在する TB-9 及び Ky3.5 も角閃石の屈折率特性など両者の特徴が一致することから、TB-8 と TB-9 の組み合わせが Ky3 と Ky3.5 の組み合わせに対比されることが確実となった。TB-8 (Ky3) は関東平野の南部から中部にかけて南北に幅をもって広く分布している。指標テフラの少ない首都圏において、このテフラは重要な鍵層となる。
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