火山全体の情報を集めていく-火山を知り、火山とともに生きる-
2021年 4月13日 開設
火山には「恩恵」と「災害」という二つの面があります。このうち、災害を軽減するためには、火山噴火推移の予測が必要です。地質調査総合センターは、過去の噴火履歴と火山噴火機構に基づいた研究を進めています。
私たちが行う噴火履歴の調査手法は、なめるように火山全体を歩き、観察していくことです。ピンポイントの調査ではなく、山全体の情報を集めることで、その火山の噴火の歴史を明らかにしていきます。また、噴火を起こすマグマの性質や上昇機構、マグマとガスの分離過程などを明らかにするために、マグマの岩石学的な解析や火山ガスの観測の研究も進めています。
火山の個性をよりわかりやすく
富士山は日本の最大の火山であり、首都圏にも近い事から防災上も重要な火山です。私たちは20 年以上にわたり富士山の調査を続けています。そして、富士山の多様な活動の歴史を理解するために、詳細な地表地質調査や掘削調査、年代測定を行い、「富士火山地質図」を作成しました。この地質図は、ハザートマップの作成や火山活動が活発化した際の活動推移評価の基礎として活用されることでしょう。
富士山と同様な調査研究を日本の主要な活火山について順次実施するとともに、その噴火の発生や推移を支配しているメカニズムの研究を進めています。そして、各火山の個性をまとめ、日本の火山の分布の情報を一覧できる「日本の火山」を作成し、それに基づいた「火山のデータベース」の整備を進めています。
阿蘇中岳火口の写真
南側から見た富士山の地質鳥瞰図
薩摩硫黄島火山で高温(800 °C)の火山ガスをサンプリングしている様子
走査型電子顕微鏡で火山噴出物の形状を観察している様子 (Photo by YASUTOMO Yasuhiro/GSJ)