過去の巨大地震・津波を探る!―津波の事前対応を可能とするために―
2021年 4月13日 開設
2011 年の東北地方太平洋沖地震は、歴史上の巨大地震である869 年の貞観地震と類似点の多い地震です。貞観地震の津波の痕跡は、「津波堆積物」と呼ばれる地層に記録されています。地質調査総合センターでは、貞観地震の津波の浸水域を広域でより正確に復元するため、2004 年から津波堆積物の地質調査を行ってきました。その結果、貞観地震の津波は、場所により当時の海岸線から内陸3 ~ 4km まで及んでいたことがわかりました。さらにそのデータに基づいた津波シミュレーションから、宮城県沖から福島県沖のプレート境界で発生した地震であることを解明しました。
仙台や石巻における東北地方太平洋沖地震の津波の浸水範囲は、私たちの推定した貞観地震の津波のそれとほぼ重なります。貞観地震の再来を想定していれば、東北地方太平洋沖地震の津波は、事前の対応が可能であったかもしれません。
「過去の事実」としての津波の影響を知る
東日本大震災を経た今、次の巨大地震の発生が危惧されているのが千島海溝、相模トラフ、南海トラフです。
国や各自治体では、最大クラスの地震や津波を想定することで、想定外を減らすことを目指しています。ただし、あくまでも「仮定の最大規模」であるため、実際にそのような地震が過去にあったのかはわかっていません。私たちは、地層に残された津波堆積物などを調査することで、「過去の事実」として信頼性のあるデータを広く一般に提供していきます。また、こうした調査・研究の手法を開発、確立し、行政や民間事業者へ役立てることも目指していきます。
岩手県広田湾で採取されたコア試料の岩相観察の様子(Photo by YASUTOMO Yasuhiro/GSJ)
西暦869年に東北地方で起きた貞観地震に伴う津波の数値シミュレーションの結果