南海トラフ巨大地震の中短期予測を目指して
2021年 4月13日 開設
四国南方沖の海底から駿河湾にかけて発達する南海トラフでは、100~200年の間隔で、マグニチュード(M)8クラスの巨大地震が繰り返し発生しています。最後の発生となる1944年東南海地震(M7.9)と1946年南海地震(M8.0)から既に70年以上が経過しています。日本政府は、今後30年間にM8~9クラスの巨大地震が70~80%の確率で発生すると評価し、169兆円を超える被害を推計しています。
南海トラフ巨大地震が想定される震源域の北側深さ30~40 kmのプレート境界では、深部ゆっくりすべりが年に数回発生しています。このゆっくりすべりは、巨大地震の前に、発生場所が地震発生域へ移動することや、発生頻度・大きさが変化する可能性が指摘されています。
私たちは、南海トラフ巨大地震の地殻活動モニタリングのために、2006年から地下水・ひずみ観測点を16カ所整備してきました。さらに、南海トラフ地域のゆっくりすべりの検出を目的として、気象庁および国立研究開発法人防災科学技術研究所とリアルタイムでデータ交換を実施しています。私たちは、ゆっくりすべりの解析手法を開発し、観測・提供されたデータを用いてゆっくりすべりの解析をしています。解析結果は、気象庁の南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会による南海トラフ巨大地震発生の可能性の評価や地震調査研究推進本部地震調査委員会によるゆっくりすべりの評価に貢献しています。また、開発したゆっくりすべりの解析手法は、気象庁等で解析に用いられています。これに加えて、産総研のひずみ計データは、2020年6月から気象庁による南海トラフ沿いのゆっくりすべりの常時監視に活用されています。
私たちは、気象庁など関係各機関とともに国の南海トラフ地域のモニタリングに貢献するために、ゆっくりすべりの解析技術を高度化する研究を引き続き実施します。
図1 新居浜観測点掘削時のやぐらの写真
図2 産総研の南海トラフモニタリングのための観測点。■:地下水・ひずみ等の観測点。●:地下水のみの観測点
図3 図2■で示した地下水・ひずみ等の観測点の井戸の概要と観測項目。