様々な形の国際連携・協力-世界と手を携えて-

2021年 4月13日 開設

 地質調査総合センター(GSJ)は、海外の地質調査機関との協力を重点課題としています。産業技術総合研究所の中でも、最も活発に国際活動を行っているといえるでしょう。私たちが行っている国際活動には、海外の研究機関と1対1の連携を行う「二国間研究協力」と、国際的な組織・コンソーシアム等の下での「多国間研究協力」があります。
 二国間協力では、現在、海外の多くの地質調査関連研究機関と研究協力覚書を締結し、研究協力を進めています。そのうち、いわゆる先進国の地質調査所とは、主に、地震・津波、火山災害、地熱資源開発、二酸化炭素地中貯留などにおける先進的な調査技術・解析技術に関する研究協力を行っています。長年の研究者どうしの交流を通じて信頼関係を築き、時には互いに競争しながら新技術の開発を進めています。
 また、いわゆる新興国などとの二国間協力では、相手国における調査・研究のニーズを正しく把握するように努め、また、日本の地質調査機関として実施すべき研究課題を明確にします。そして、共同して地質調査などを行うことにより、相手国での資源開発や自然災害軽減などのための地質情報整備・人材育成のための協力を行っています。
 現在、世界は新型コロナウィルスの感染拡大に見舞われています。ウィズ・コロナの時代においては、新しい国際連携の在り方が求められています。人と人、機関と機関のつながりなどネットワークを大切にし、課題解決に取り組みたいと思います。

国際連携・協力

 私たちが進める国際活動の一つに、CCOP(東・東南アジア地球科学計画調整委員会)があります。CCOP は、東・東南アジア地域における経済発展と生活レベルの向上を目的として、地球科学分野のプロジェクトやワークショップなどを推進する政府間機関です。
 CCOP の設立は1966年です。当初、4カ国でスタートした組織は、約50年を経過して16ヶ国の参加にまで拡大しました。これほどまでに長い歴史をもつ地球科学系の国際研究機関は他に類を見ません。日本は設立以来、CCOPの活動を牽引してきました。現在、GSJはCCOPの日本代表を務めています。GSJが提案するプロジェクトとして、東南アジアの主な平野の水文環境図の作成、地質災害軽減のための国際研修などを行っています。また、GSJの提案によって2015年に活動を開始した「CCOP地質情報総合共有プロジェクト」では、CCOPが保有する地質図、地震・火山災害、地質環境、地下水、地球物理、地球化学、リモートセンシング、鉱物資源など各種地質情報の数値化を進め、国際標準形式で東・東南アジア地域の総合的なデータ共有を進める活動を行っています。
 また、世界118ケ国の地質調査機関が協力して進めているウェブによる世界地質図提供プロジェクト(OneGeology)の主要メンバーとして運営に貢献しています。さらに、1913年から世界地質図委員会(CGMW)に参加し、現在では自然災害部門の代表を務めています。地質調査総合センターは、こうした国際プロジェクトの中核を担っています。

海外での鉱物資源調査

 日本は金属鉱物資源のほとんどを輸入に頼っており、海外の新たな鉱床または既存の鉱床から安定的に鉱物資源を供給することが不可欠です。私たちは、新たな鉱床の発見や既存の鉱床から未利用資源を回収することを目的として、地質調査、探鉱、鉱石・精鉱や尾鉱の化学分析や選鉱試験を行っています。
 現在は、日本に地理的に近い東南アジアに集中して調査を行っています。この地域には多数の錫鉱床が存在し、その中には稼働中の鉱山だけでなく、既に採掘を終了した鉱山もあります。これらの中で十分に調査されていない地域を探鉱し、新たな鉱床を発見することができれば、鉱山として安定して錫精鉱やその他の鉱石鉱物を生産することができます。
 また、古い鉱山跡には、精鉱を作成した際に出てきた脈石鉱物からなる尾鉱が残されています。例えば錫鉱山では、錫精鉱やタングステン精鉱が生産されて、残りの鉱物は尾鉱として捨てられることが多いです。しかし、尾鉱の中には、チタン、タンタル、希土類元素といったレアメタルを含む鉱物が未回収のまま残されています。一般に金属鉱床を新たに開発する際には、大量の廃石や尾鉱が発生するとともに二酸化炭素も排出されるため、環境への負荷が大きいという問題があります。一方で、このような既存の鉱山に残された尾鉱から未回収の鉱石鉱物を回収することができれば、環境への負荷を抑えながら特定の鉱物資源の安定供給に貢献することができます。

ミャンマーにおける地球化学探査の様子

ミャンマーにおける地球化学探査の様子

タイの錫鉱床の尾鉱より回収された重鉱物(左)と残りの鉱物(右)

タイの錫鉱床の尾鉱より回収された重鉱物(左)と残りの鉱物(右)