地球化学図-元素で日本を見る-
2021年 4月13日 開設
地球上にある、さまざまな元素の移動や拡散といった「動き」を解明するためには、元素の分布の状態を正しく把握することが必要不可欠です。私たちは、日本全国の陸域から約3000個の河川堆積物試料を、沿岸域から約5000個の海底堆積物試料を採取し、分析しました。こうして2010年にできた、陸から海へとつながる「元素濃度マップ」(地球化学図)は、世界で初めてとなる大規模なものです。これにより、全国の陸から沿岸域における元素の分布と動きを明らかにしました。
完成した地球化学図と分析試料の採取地点や各元素の濃度値はデータベースとして一般にも公開しています。また、地球化学図を地形図上に投影した「3D地球化学図」も新たに整備しました。さらに、関東地方および中部地方を対象に、全国版の地球化学図に比べて10倍の空間分解能を持つ「精密地球化学図」を出版し、現在は関西地方において取り組みを進めています。
世界で役立つ「標準試料」を供給
地質調査総合センターは、50年以上にわたって地質関連試料の標準物質を作製してきました。この標準物質には、世界各国の研究機関との共同研究によって化学組成や同位体組成、年代値の信頼性の高いデータが定められています。
近年、標準物質は国際的な基準であるISOに対応することが必要とされるようになりました。地質調査総合センターが発行する岩石標準試料についても、ISOに対応した「標準物質生産者としての認定(ISO 17034 & ISO 17025)」を取得し、新規に作製する標準試料についてはISOの規定に則った認証標準物質として供給を行っています。
リンク:
地球化学図の例。クロム濃度の分布を示している
岩石標準試料 (Photo by YASUTOMO Yasuhiro/GSJ)