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鹿児島県吾平町の斜面崩壊[地質の概要]

2023年2月6日 更新
2005年2月18日

地質情報研究部門 斎藤 眞・川辺禎久 / 地圏資源環境研究部門 阪口圭一


鹿児島県吾平町の2005年2月8日斜面崩壊現場の地質について

鹿児島県肝属郡吾平町で発生した斜面崩壊に関連して、崩壊地の地質学的背景の理解のために、当該地地域の地質の概要を紹介します。 ここに用いているのは20万分の1地質図幅「開聞岳」(川辺ほか、印刷中)の一部です.まもなく 販売されます。

houhu-map.jpg

20万分の1地質図幅「開聞岳」(部分)、崩壊発生個所を示す。
クリックすると大きく表示されます


地質の概要

 本地域周辺の基盤岩は、中期始新世-前期漸新世(およそ4500万年前-3000万年前)に、海洋プレート上にたまった堆積物が、海洋プレートの沈み込みによって大陸プレートのへりに くっついてできた砂岩(Hs)、泥岩(Hm)、砂岩泥岩互層(Ha)と、それらを貫いて固まった中期中新世(およそ1400万年前)の花崗岩(G1,G2)からできています。この堆積岩類は、日向層群と呼ばれ、同じような地層は現在日向灘でもできています。花崗岩は南大隅花崗岩とよばれ、石英分に富んだマグマだまりの跡で、周囲の日向層群は熱で焼かれて硬くなって います(赤点)。
 更新世(およそ140万年前)になると、鹿屋市の南では安山岩を噴出する火山活動が起きました(横尾岳安山岩, Ya)。
 その後、11万年ほど前に、鹿児島湾の南部から大規模火砕流が噴出し、大隅半島南部に、火山灰と軽石からなる広い台地を作りました。噴出時の熱で固まって、台地の縁では切り立った 崖を作っています(阿多(あた)火砕流堆積物, At)、また、2万6000-9000年前になると鹿児島湾の北部から噴出した入戸(いと)火砕流堆積物(シラス, It)が広い台地を作りました。入戸火砕流の噴火の 時には、火砕流に先立って大量の軽石が噴出されました、この降下軽石層は大隅降下軽石と呼ばれ、吾平町周辺では4~5mの厚さで一面を覆いました。

崩壊地周辺の地質

 崩壊地周辺の台地は阿多火砕流堆積物と入戸火砕流堆積物が作った火砕流台地です。愛宕山などの山地は日向層群の主に砂岩でできており、火砕流堆積物に埋め残されて、島のように台地面上に顔を出しています。崩壊地付近では日向層群の岩石の表面を、大隅降下軽石層などの軽石や火山灰が表面を覆っているものと考えられます。


更新履歴

2023.02.06:研究者ウェブサイトから移設